雀。

 

雨風が強くて、目が覚めた
ハッと、息をのんだ ここって... 


東大寺の鴟尾から参道を真下に見て
一羽の "雀" が 飛び立つ瞬間だった


若草山を左に見ながら、
その雀は飛火野を抜けようと試みる

もっと高く もっと高く
ここを越えないと行けないんだ

目指してる先はきっと

田畑広がるあの場所だとすぐに分かった。

 

あー、また来れたんだ 


けれど 視界が覚束ない

雨風だけじゃない

涙で景色が歪んで見えている

雨が更に激しく叩きつける

風にも流されて上手く飛べない

見上げた空には
幾重にも張り巡らされてる高圧線

なんとかしなければ
ここさえ抜けられれば...

 

思いきり広げた両翼の先には

なぜか5本の指

 

雀じゃないのか? 俺か?

だったら、感電するかもしれないな

 

でもな...

よし!抜けてやる!

強く強く羽ばたいて
流されないように間を抜けようとする

何度も何度も  抜けようとする
何度も何度も...


チッチッチチ... チッチッチチ... チッチッチチ
チッチッチチ... チッチッチチ...♪



スマホのアラームで目が覚めた。


厳しく困難な夢だったけど
辿り着くまでは覚めて欲しくなかった

やっとまた行けたのに
あの場所にまた行けるはずだったのに...

 

夢でもぜんぜん良かったのに

 

今日一日ずっと考えてた
あの雀のまま... で、いたかったなって。

 





チュン!

 

いや…、チェッ!

 

 

 

 


2018.06.01