城郭名:余野本城(よのほんじょう)
住所 :大阪府豊能郡豊能町余野
城主 :余野頼幸・余野国綱
利用年:明応二年(1493)ー天正十二(1584)
駐車場:なし(豊能町役場Pを利用)
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最近は大阪北部の城を調べているのですが、この地域は摂丹の境目だったからか、クオリティの高い城がたくさんあります。
その中でも、個人的にNo.1と感じるのが、この余野本城です。
アクセス
城郭ブログで気になるのは、どこに車を止めるのか、どこから登るのか、現状は見学できる状況にあるのか、の3点だと思うので、先に情報を掲載します。
北摂全般に言えるのですが、普通の田舎と違って意外と人口が多く、
車を停めるところに非常に苦労します。
特に、この余野地区は狭く、駐車場に苦労します。
周辺を探しましたが、車を止められそうなのは、
①走落神社横のごみ捨て場
②能勢町役場
位です。
ただし、あくまで自分の目で見て停められそうと感じた場所です。
実際の見学の際は、状況によって自己判断をお願いします
(特に②については平日は避けた方がよいと思います)
駐車後は、北に向かって歩いていき、切畑口交差点に向かいます。
ここで東側に曲がります。
曲がった後は、余野本城の尾根に向かって歩きます。
写真右手の山が、余野本城のある尾根です。小屋のある付近に道があるのでここを右折します。
ここで、民家手前の脇道を上っていきます。
民家の手前に道があるので、住民にはひと声かけるようにしましょう。
ここから道に沿って上っていきますが、余野本城に至るには、どこかで直登する必要があります。
そこまで厳しい勾配ではないので、手ごろな場所を探しましょう。
尾根に沿ってしばらく登っていくと、余野本城に至ります。
歴史・地形
余野本城については、同時代資料がなく、詳細は不明です。
この城は多くの書籍でも紹介されていますが、そのほとんどが大正八年に書かれた、『大阪府豊能郡東能勢村誌』を参考にしています。
本書によると、この城は能勢氏の諸流の余野氏によって、15世紀末に築かれ、
天正年間に高山右近に攻められて廃城となったとのことです。
そのため文献史上は、謎の多い城となっています。
しかし、余野に関しては、フロイス日本史に興味深い記事があります。
この地は、有名なキリシタン大名の高山父子(高山飛騨守・高山右近)の出身地に近く、交流関係の一環として、当地にも布教が行われました。
ここで、余野の貴人として、クロダクロン殿という人が出てくるため、
この人を余野城主とする説もありますが、能勢町誌では否定されています。
このように、余野氏の本拠として利用された余野本城ですが、
立地としては、丹波亀山に至る摂丹街道が急激に狭まった部分に位置しています。
また、余野本城の周辺には、余野城・余野大平城・余野庄内城などの城郭も確認されており、同時期に複合的に機能していた可能性があります。
摂丹街道と余野城
さらに、当地の小字地形と突き合わせてみます。
『大阪府豊能郡東能勢村誌』によれば、余野氏は字本宅の部分に居館を構えていたようです。
城山=余野本城、弊ノ木=余野城です。
有事の際にこれらの城に籠っていたのかもしれません。
以上、立地を概観すると、余野城は街道を抑えるという意味で非常に効率的な城であるように思われます。
街道を通るうえで、この地点は必ず通らざるを得ず、巧妙な立地だと感じます。
構造
余野本城の見どころは、何といってもその巧妙な縄張りです。
※web等高線メーカーを基に作図
東側の畝状竪堀
この城の見どころの一つが、この畝状竪堀です。東側斜面に7本敷設されております。
こちらは、比較的緩い谷地形になっているため、進入を防ぐためにスペースを殺すという、地雷原的な使い方をしているように思われます。![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240318/21/shimoyamashiro/3b/77/p/o1414200015414675128.png?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240318/21/shimoyamashiro/d6/4f/p/o1414200015414677017.png?caw=800)
主郭からの長めです。
強引に上ろうとすると、行動が限定されてしまうため、狙い撃ちにされます。
東側虎口
この城で最もわくわくする部分の一つです。土橋城地形から侵入し、複雑なストロークを経て城内に入っていきます。
虎口の両端は地雷原のように畝状竪堀が敷設されているため、侵入者はこの虎口を使うしかありません。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240318/21/shimoyamashiro/50/cb/p/o1414200015414679092.png?caw=800)
土橋を渡り切った付近からの撮影です。右側に土塁囲みの郭があります。
同じ場所でコラ画像を作成してみました。
入るにはU字状の通路を通る必要があります。
城内側からの光景です。
黒い帯の通り、道が通じています。
また、場外の土橋のすぐ横には、井戸跡と思われる石組があります。
虎口に見とれていると、足を取られるので注意してください(1敗)
横堀余野城は横堀がほぼ全周している、戦国後期の特徴のある城です。特に、北側については残存状況がとても良いです。![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240318/21/shimoyamashiro/f4/43/p/o1414200015414683151.png?caw=800)
本丸側を見上げます。かなり高いです。5m以上あるように思います
所々に竪堀が組み合わされており、侵入者の横移動を阻害します。
実際歩いてみると分かるのですが、竪堀があるだけで斜面がめちゃくちゃ歩きにくくなります。
上から見下ろすとこんな感じです。
これは実際に見た方が何倍も迫力があると思います。
北摂の城は高低差+障壁+堀を組み合わせたつくりがうまいように思います。
近くにある丸山城と、防御思想が似ているように思います。
西側に回り込んでいきます。
こちらはだいぶ横堀感が薄いです。土砂が流出してしまったのでしょうか?
西側虎口
こちらにも虎口があります。
後述しますが、こちらも非常に秀逸な防御線によって守られています。
ここは最終の入り口で、坂虎口を上ると主郭に至ります。
城内からの光景です。
郭が少し湾曲しているので、坂虎口を上ってきた相手を様々な角度から狙うことができます。
ここを進むと、南西尾根の堀切に至ります。
西側虎口は、この堀切及び、手前にある土塁囲みの小空間によって構築されています。
それがこの光景です。
尾根から侵入する場合、堀切を横断して虎口に侵入する必要があるのですが、
この際に土塁囲みの小郭が強力な火点として機能します。
分かりにくいのでコラ画像です。
こんな感じで、堀切を渡る過程で、上下二段の郭から狙い撃ちされます。
改めてコラ画像に射線を追加します。
この堀切を渡る部分が一番危険です。
南側の郭と堀切
南側の堀切ですが、本城で最も幅の広い堀切となっています。
元々地形上くびれとなっていたようで、西側はほぼ麓近くまで堀が落ちています。
堀切の外側は自然地形となっており、緩い斜面となります。
更に南西にはもう一本堀切があります。
北側はほぼ消えかかっています。南側はくっきりです。
真南部分です。こちらにも竪堀がありますが、これはもともとの地形を流用しているようで、2mくらいの細長い堀切が谷底まで落ちています。
主郭
東側についても坂虎口で登っていきます。
城内側です。
登り詰めると、少しくぼみのような地形になっています。
この地形については、枡形とするか、堀切とするかで議論が分かれます。
個人的には枡形のように思います。
登り詰めた瞬間、鑓で串刺しにされてしまいそうです。
主郭北側です。微妙に段差はありますが、内部は広く削平されており、建物も立てられそうです。
土塁は北側に向かうにつれて、幅が広くなります。
南側の曲輪との間には、土橋城の地形があり、ここにも転石がみられます。
南側の郭には特徴的な小山があります。
また、南西端には、土塁囲みのくぼんだ部分があります。
防御拠点なのか、天水井戸なのかわかりません。
小山からの光景です。郭にこんな形で小山を残す構造はあまり見たことがありません。天然の櫓台として使っているのでしょうか。
以上です。
参考文献・資料
1. 森純一 編『大阪府豊能郡東能勢村誌』,東能勢村,大正8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/953224 (参照 2024-03-18)
2. 豊能町史編纂委員会 編『豊能町史』本文編,豊能町,1987.11. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9576420 (参照 2024-03-18)
3. 豊能町史編纂委員会 編『豊能町史』史料編,豊能町,1984.8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9575586 (参照 2024-03-18)
4. 平井聖 [ほか]編修『日本城郭大系』第12巻,新人物往来社,1981.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12208284 (参照 2024-02-25),p55-56
5. 中西裕樹「余野本城」『大阪府中世城館辞典』,戎光祥出版, 2015/8, p56-59
6. 松岡進「余野本城」『図説近畿の城郭Ⅱ』戎光祥出版, 2015/4, p318-320
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