国立公文書館のWebサイトから江戸時代の絵図をダウンロードできるので、
これを元に現地を歩いてみました。
膳所城の概要
慶長6年（1601）に、藤堂高虎の設計で構築された、天下普請第一号の城
膳所城は、滋賀県大津市に位置し、京都とは山を挟んで接しています。
そのため、古くから交通の要衝として、重視されてきた土地でした。
膳所城築城以前にも、この付近には坂本城（元亀二：1571～天正十三：1585）→大津城（天正十三：1585～慶長六：1601）と、継続して拠点となる城郭が築かれていました。
その後継として造られたのが、膳所城です。
なぜ大津城から移転した？
膳所城築城以前、当地には大津城がありました。
それなのに、なぜ新たに膳所城を築城する必要があったのでしょうか。
その原因は、慶長五年（1600）に、関ヶ原の戦いと関連して発生した大津城の戦いです。
東軍に属していた大津城は、西軍に攻められ籠城を選択します。
しかし、この時長等山（ながらやま）からの大筒の猛砲撃をうけ、これに耐えきれず、篭城12日で開城してしまいます。
戦後、この防御力の弱さが課題として指摘され、新たに膳所城築城が決定されました。
大津城攻撃時のイメージ
膳所城築城
大津城に代わる新城建設の候補地としては、勢多臨江庵・大江打窪江・膳所大明神の三地点が選ばれました。
しかし、本多忠勝の指示により、膳所大明神に築城が決定されたとされます。
縄張りは、築城の名手藤堂高虎が担当し、慶長6年（1601）6月1日より築城が開始されました。
膳所城の候補地
膳所城の城主
膳所城築城時の城主は戸田一西（かずあき）でした。
その後戸田氏は子の氏鉄（うじかね）の代に尼崎の地に移封しましたが、
京の入口を押さえるという非常に重要な立地のため、代々徳川氏と関係の深い大名が居城しました。
歴代城主は、戸田氏→本多氏→菅沼氏→石川氏→本多氏と交代し、明治維新を迎えました。
正保国絵図
非常に精密な「正保国絵図」
膳所城については、沢山の絵図が残っていますが、その中でも精密かつ、閲覧しやすいのが「正保国絵図」です。
「正保国絵図」は、正保元年（1644）に幕府が諸藩に命じて作成された図であり、
幕府の命令であるため、当時の城郭及び城下町が、非常に詳細に描かれています。
また、国立公文書館のデジタルアーカイブより、細部まで閲覧することが可能です。
絵図作成当時の膳所城城主は石川氏であり、移封までの正保元年（1644）～慶安四年（1651）までの姿が描かれているとされています。
正保国絵図
次回より、実際に歩いていきます。
参考文献
1. 助野健太郎, 小和田哲男 著『近江の城下町』,桜楓社,1971. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9569439 (参照 2023-07-09)
2. 「近世城跡から移築された城郭建築遺構の保存・活用について」内田和伸『移築された遺跡由来の遺構および石造物の現状と課題 令和３年度 遺跡整備・活用研究集会報告書』2021 p5-p24（https://sitereports.nabunken.go.jp/ja/131497）
3. 膳所市民ニュース（第33号）1992/7/10 p2
（https://zeze.otsu.jp/pdf/news033.pdf）
4. 文: 徳永真一郎 ほか『城下町膳所』,石鹿フォトクラブ,1972. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9569195 (参照 2023-07-09)
5. 『〔日本古城絵図〕 東山道之部（1）』117 膳所城絵図,写,〔江戸中期－末期〕. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1286382 (参照 2023-07-09)
6. 滋賀県教育委員会他 2013 『膳所城遺跡』滋賀県教育委員会事務局文化財保護課
7. 滋賀県教育委員会事務局文化財保護課他 2005 『滋賀県立膳所高等学校校舎等改築工事に伴う発掘調査報告書：膳所城下町遺跡』滋賀県教育委員会事務局文化財保護課他
8. 重要文化財 膳所神社表門修理工事報告書 1983 滋賀県教育委員会編
9. 重要文化財 篠津神社表門修理工事報告 1957 滋賀県教委
10. 滋賀県文化財保護協会発掘調査報告アーカイブhttps://www.shiga-bunkazai.jp/wp-content/uploads/site-archives/download-pdf-131110_zeze.pdf