そういえば、本作の作画について話したことがありませんが、作画については相対的に見て「標準レベル」だと思います。

作画の良し悪しはアニメの評価に直結する重要な要素ですし、もちろんいいに越したことはないのですが、コスト面の問題もあるし、「締めるところは締める」ができていれば、多少顔にばらつきがあるくらいのことは、特に問題にする必要はないと思っています。

一話の星粒の叶い雨、五話の神事シーンなど、思わず見とれてしまうような気合の入った場面も多々あるので、わりかし好意的な方です。

 

 

今回も前回の夕奈編同様「予知夢」のシーンから始まります。

しかしその内容は前回に輪をかけてカオスになり、夢を見ている上終自身も思わずツッコミを入れてしまいます。

しょせん夢の話ですし、前回の経験から「完全に夢のとおりに事が運ぶわけではない」ことはわかっていながらも、この予知夢シーンが「今回のあらすじダイジェスト」のように機能していて、とてもワクワクする演出になっていて、私は好きです。

この夢のどこまでが現実なのか、どのような経緯でそうなるのか、楽しみな気持ちにさせてもらえますね。

どこまでが事実かわからない(時として、一見ウソのような内容が、事実だったりする)みたいな雰囲気は「ディスガイア」シリーズの予告を思い出しますね。

 

そういや、夜重とお見合いした夜に上終が階段から転落しながら観たのも、走馬灯ではなくこの「予知夢」だったりしてね。

後で恥をかきたくないので、不確かなことはあんまり言わないようにします。どっちだろうと「未来のビジョン」ということで大差はないし。

 

 

先日の甘神神社例大祭の成功を受けて、参拝客が急増した一方、巫女である三姉妹達はその対応に忙殺されているようです。春休みの終わりも近付き、神社の仕事が滞ることを危惧する三姉妹。

確かに、巫女が三人とも学校に行ってしまったら、甘神神社には一人も巫女がいない状態になってしまいますね。彼女ら以外に甘神神社に巫女はいないようですし。

いくつかの作業は宮司の千鳥さんができるでしょうが、境内の掃除等の肉体労働はどうやら無理そうです。

またこれまで(例大祭など)の描写からして、甘神神社の巫女達は単なる神社運営スタッフではなく、神事を執り行ったり、参拝客をもてなす存在でもあるので、いるといないの差は大きいです。それでも今までは参拝客がまばらだったので、なんとかなっていたようですが。

 

あと本編では言及されていませんが、SNSで甘神神社(に美人の巫女三姉妹がいること)の宣伝を大々的に行っていますので、当然巫女目当ての参拝客も多分にいるでしょう。彼女達が巫女でいる時間が短くなるほど、巫女目当ての浅ましい参拝客は「なんだ、巫女さんいねぇじゃん」となって、一度掴んだ参拝客を手放してしまうことになるかも知れません。

風俗みたいに各巫女の出勤日を公開したらどうかな

 

 

悩んだ末に、夕奈は「月神神社(つきがみじんじゃ)」に相談することを決めます。

月神神社は嵐山にある大きな神社で、そこには三姉妹に巫女の作法を手ほどきした師匠がいるそうです。彼女に会い、知恵を授かりたいのだとか。

 

うーん、まずは宮司である千鳥さんに相談すべきだと思うんですが、見えないところで話はしてあるんでしょうか。

千鳥さんと話して、「巫女はいてもらわないと困るけど、他の巫女は増やせないし、もちろん学業も疎かにできない」となってようやく「自分達だけで答えが出せないので、お師匠様に知恵を借りに行く」という案にたどり着くのがまともな流れです。

まぁいくらお師匠様でも「巫女が足りないです、どうしたらいいですか」とか聞かれても何も言えないと思うけどね。

 

 

このシーンを観てて思ったのですが、初期の頃に比べると、各キャストのお芝居がかなり自然になっているように感じます。

特に朝姫役の若山さん。これまではなんでもないシーンでもアッフンウッフンと必要以上に色気を出す感じが内心鼻についていましたが、今回冒頭のシーンでは、適度に色気は残しつつ、年相応の子どもらしい優しい振る舞いを演じられていた気がします。

夕奈役の本渡さんも、まぁ夕奈自身の心境の変化もあるのでしょうが、ずいぶんと角が丸い話し方になっていました。それでいて勝ち気な感じはきちんと残っていて、これがスタッフの描きたい本来の夕奈像なのかなと感じさせられました。

キャストのみなさんも日々研鑽して、より魅力的なキャラクターの構築に努めていらっしゃるんですね。

 

 

上終も月神神社への同行を誘われますが、行き先が嵐山と聞いた上終は、それを断固拒否します。

なぜなら予知夢で最初に見た光景が、他でもない嵐山の駅だったからです。

 

上終が「予知夢のとおりに事が進むこと」を恐れているのは、予知夢の内容が嫌なのではなく、自分の未来が夢の内容で定められてしまうことに対し、反抗しようとしているためです。

前述の「未来の走馬灯」も予知夢だったなら、予知夢を辿り続ければ、とりあえず医者になる夢は叶うはずですが、「たとえそうだとしても、未来は己の力で切り拓きたい」という、上終のアツい人となりを感じさせますね。

それに走馬灯のとおりだと、三姉妹全員と結婚するという地獄が待ってるしね

 

 

邪念を払うように勉強に没頭する上終のもとに、千鳥さんが訪ねてきます。

千鳥さんは上終に「月神神社に届けてくれ」と、荷物を託します。

よかった、月神神社の件はちゃんと千鳥さんには相談してたんだね。たぶん

幸か不幸か、上終は結局嵐山に行くことになってしまいました。

 

 

描かれた月神神社の規模は、確かに甘神神社とは比べ物にならないほど巨大なものでした。

甘神神社がそのへんの神社なら、月神神社は伊勢神宮レベルの大社に見えます。

この時のモブ巫女さんのセリフやイントネーションが、京言葉と標準語のハイブリッドみたいになって心底気持ち悪いですが、内容が万人にわかるようにするための苦心の跡でしょうな。

 

千鳥さんから授かった荷物を片手に、そこに駆けつける上終。既に三姉妹が月神神社の者を訪ねているところでした。

やけに大慌ての上終ですが、それもそのはず、「今すぐ月神神社の者に渡してくれ」と言われて預かったその荷物は、何枚ものお札が貼られた木箱という、見るからにヤバいブツだったからです。

 

 

しかし三姉妹の話し相手の女性は、いたって冷静です。

彼女こそが三姉妹のお師匠様、月神 宵深子(つきがみ よみこ)。ほっちゃーん! ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!!

月神神社の禰宜(ねぎ)を務めている方ですが、禰宜というのは神職の位を表すもので、会社でいう役職みたいなもんです。

トップは宮司なので、千鳥さんは「町工場の社長さん」、月神さんは「一流企業の総務部長」といったところでしょうか。三姉妹は作業員

 

月神さんは「私におまかせください」とその箱を受け取り、おもむろに開けてしまいます。

中身はなんと八ツ橋。禍々しい入れ物にしたのは、千鳥さんのいたずら心だったんですね。

「この箱を見たら上終は慌てるはず」という、上終の信仰心を前提とした、高度ないたずらです。瓜生くん、神とか信じないんじゃなかったっけ。まぁ無宗教の人でも「お墓を蹴ってはいけない」くらいの規範はあるでしょうから、そういうもんなんでしょう。

 

このシーン、中身がお菓子だと知っている月神さんが「私におまかせください」はヘンなので、入れ物がアヤシイのを見て、月神さんも悪ノリしたということですね。

千鳥さんや市丸ギン北白川と同様に、やけにひょうきんな人ですね。神社関係の偉い人ってこうじゃないと務まらないのかな。

 

 

八ツ橋をほおばる上終と三姉妹の前で、月神さんの口から、月神神社に関する紹介が行われます。

月神神社のことなど三姉妹はとうに知っている内容なので、上終(と我々視聴者)に対する説明だと解釈してよいですね。

 

御祭神はツクヨミノミコト。甘神神社の御祭神であるスサノオノミコトとは兄弟にあたります。

遊戯王では一時期規制されたこともある強力なカードなので、名前だけは知ってる人も少なくないだろう

また月神神社には夢を叶えるご利益があり、「月夜にかかる虹の上を歩けば夢が叶う」という伝説も残っているのだとか。

瓜生くんこっちに来たほうがよかったかもね

 

 

八ツ橋を口に入れたまま、甘神神社の件を相談する夕奈。ほんと失礼な女だな

甘神神社の部外者にとっては結構厄介な相談だと思いますが、甘神さんはこれをふたつ返事で引き受けます。

 

まず夕奈に「師匠ではなく『宵深子』と呼んでくれ」と注意。

その後朝姫を「大きくなったねぇ」とゴロゴロ愛で、夜重に至ってはその豊満なバストをとことん揉みしだきます。いいなぁ

 

その様子を見て、心の中で「相談する相手はこの人で合ってるのか…?」とツッコミを入れる上終ですが、合ってますよ。

これまでの感想記事にて何度も言及しているとおり、この世界の住人はおしなべて思いやりに欠けるので、「他人を慈しむ心がある」というだけで、この世界の人間の中では相当優秀な部類に入ります。そりゃ禰宜にもなれますわ。

三姉妹の心中には、高名(でおそらく多忙)なお師匠様に迷惑をかけることに対する遠慮があるはずなので、その遠慮を取り払う配慮として、呼び方を改めさせたり、ちょっと過度なスキンシップを仕掛けるのは、一般的な対応として適切かはともかく、この場面ではバッチグーです。

 

 

しかも月神さんは、4人のために温泉宿まで手配しているという徹底ぶり。

三姉妹はすっかり乗り気ですが、上終は予知夢を回避するため、勉強を建前に少しでも早く嵐山を去ろうとします。

残念ながら私は上終の「予知夢のとおりに事を運びたくない」という考え方にあまり共感できないので、「予知夢の回避は明日からにして、今日は月神さんの厚意に甘えればいいんじゃない?」とか楽観的に考えてしまいました。

そもそも現実が予知夢のとおりになったこと、まだ一度もないじゃん。一日でいいから身を任せて、本当にその通りになるか、試してから考えてもいいんじゃないでしょうか。

 

そんな中、大勢の巫女が社に祈る様子を上終が見つけます。

月神さんによると、これは巫女達の日課であり、こうして普段の感謝を神様に伝えているのだそう。

パッと見、巫女達がすすんでそうしているというよりは、「毎日、感謝の祈りを捧げる」ということを修行にしている感じです。

先ほど私は月神神社の規模を形容するのに伊勢神宮の名を出しましたが、「仕えることが修行になっている」という側面を見ると、どちらかいうと高野山に近い感じですね。あっちはお寺だけど

 

それを見た夕奈「これだけの巫女を滞りなく指導し、大勢の参拝客に丁寧な対応ができるのは、宵深子さんの手腕があってのことなんだ…!」

 

何いってだこいつ。今そんな話してないだろ。

「月神さんが、これだけの巫女を滞りなく指導している」描写もなければ「大勢の参拝客に巫女が丁寧な対応をしている」描写もありません。

巫女達が感謝の気持ちを社に祈る姿を「宵深子さんすげぇ!」という話に直結するのは、いくらなんでも強引すぎますよ。

 

夜重も夜重で「甘神神社もこんな風になれるかな」なんて抜かしますが、それは大勢の巫女を雇えず、三姉妹のボランティアに依存している千鳥さんの悪口ですか?

「自分達は誰のおかげで巫女ができているのか」とか考えたこと、一度でもあるんでしょうか。

 

三姉妹のやりとりを「三姉妹がただの巫女としてだけでなく、甘神神社の一員として、神社の将来を考えられるほどに成長した」と見て、月神さんは三姉妹をとことん甘やかします。元々どんだけひどかったんだ

 

その様子を見て「なんだかまるで…」と独り言を思う上終。

続くセリフは「お母さんみたいだな」ということなのでしょうが、あえて言わずに止めるのが本当にニクい演出ですね。

上終も三姉妹も、幼くして母を喪っています。他人に対して「お母さんみたいな人」なんて、そう簡単に考えられないでしょう。それでも、そう思わせてくれるあたたかな雰囲気が、短いシーンでうまく表現されていますね。

 

 

その後上終+三姉妹は、月神さんとのしばしの別れを迎えます。

「えっいいの!?巫女の問題なんも解決してなくない!?」と思いましたが、上終はそこをちゃんと指摘。想定された脚本だったようです。

そこで月神さんは、先ほどとは打って変わって「相談の件は受けられない」と、きっぱり断ります。

話が違うじゃないか…とは思いますが、そもそも「巫女が足りない」の根本的な解決方法って「巫女を増やす」以外にないので、新たに巫女を雇えない状態の甘神神社は「(普通のやり方では)根本的な解決はできない」状態に陥っています。

 

どういうことだと問い詰める三姉妹に、月神さんは「荷が重い」と言い放つ。

詳しく聞くと、「だって巫女と学業の両立なんてできないでしょ」とのこと。

 

あの~月神さん?彼女らは「巫女と学業の両立ができないから、あなたに相談しに来てる」んですよ?それを「両立できないから」で追い払うんですか?

サラ金にお金を借りに来た人を「こんなところで借金しなきゃいけないような経済状況の人が、返済なんてできるはずがない」と追い返してたら、誰にもお金貸せませんよ。

 

 

さらに月神さんは三姉妹に「神職にこだわらず、自分の夢を掴む」方向性を勧めますが…

今の三姉妹の夢(「将来どんな仕事をするか」という、狭義の夢のことです)が「神社を盛り上げること」であることは、先ほど話した通りです。彼女達の中で神職と夢がリンクしている今、「神職か夢か」なんて話はナンセンスです。

さっきその話をした時に「そこまで神社の将来を考えられるようになったなんてエライ!」と三姉妹をベタ褒めした月神さんは、今ここにいる月神さんとは別人なのでしょうか。GFか!?またGFなのか!?

 

んっと、別の話で例えましょう。

ある会社の若社長が「事業が軌道に乗りつつあるが、人手が足りない」という悩みを抱えています。

その事業は親から継いだ大切なものであり、何としても成功させたいと願って、ここまで頑張ってきました。

しかしその事業に携わるには専門知識が必要で、そのへんのアルバイトで賄えるものではありません。

その社長は、かつてお世話になった大企業の先輩に相談します。

先輩は「事業にとらわれず、あなたのやりたいことをやりなさい」と助言します。

こんなやりとりに、意味ありますか?

 

まぁ夜重は芸大に通ってますから、「将来も神職を続けるとは限らない」つもりであることは、薄々想像がつきます。

朝姫も有望な陸上部員ですので、「陸上選手の道に進む」パターンも示唆されていますね。部活動の描写が一切ないのはまた別の話

ですが「彼女達には、巫女以外にやりたいことがある」ことを示した描写は、今まで一切ありませんでした。それなのに突然「自分達がやりたいこと」なんて話をされても、とても付いていけません。


 

「やりたいことをやれ」という言葉については、いつぞやの舞昼さんも、上終に対してそう助言したことがありました。

ですがそれは(少なくとも舞昼さんの中では)上終のやりたいことは「医者になること」である一方で、今の上終が「三姉妹の世話に忙殺されていて、さらにその生活を『悪くないもの』だと捉えている」状況に対して、上終の目を覚まさせるべく警鐘を鳴らした言葉です。

上終は医者になることをモチベーションに今までやってきましたし、その夢を応援するために舞昼さんは必死に里親を探し、上終を送り出したのですから、その上終の夢が「特別する必要のない、三姉妹のお世話」のせいで潰えるとあらば、舞昼さんだって厳しいことのひとつやふたつ言いたくなります。今回の状況とはわけが違いますよ。

 

うーん、なんかそう考えると、三姉妹にとって巫女としての仕事はしょせん「課外活動」とか「お遊び」の感覚なのかもしれませんね。「やれる間はやるけど、やれなくなったら別にやめてもいい」みたいな。

例大祭の時は衣食住が懸かってましたから、それなりに奮闘しましたが、それ以外の場面で、神社の経営を気にする様子は(自分達に火の粉が降りかかるまで)ありませんでしたし。

 

不気味な児童養護施設の子を引き取ってまで神社の跡取りを準備しようとした千鳥さんがこのことを知ったら、はたしてどう思うんでしょうね。

「神社の存在が、上終や三姉妹の足枷となっている」という構図がダメとは言いませんが、それをやるには積み重ねが足りなさすぎますよ。

 

ちなみに私ならどうするかというと、「上終にさっさと夜重を選ばせて、夜重を中退させ、ちゃんとした神道系の大学に通わせた上で、『上終は医者として働き、夜重は神社で働く』形で神社を継がせる」ですかね。夕奈と朝姫は実家に残ってもいいですし、それぞれの夢のために頑張ってもらっても構いません。

そこで夜重が「上終に嫁ぎたくない」とか「巫女になんかなりたくない」とか言うんだとしたら、もうこの物語は終わりでいいよ。上終と三姉妹(の誰か)をくっつけるのはやめて、神社は潰して、三姉妹にはそれぞれ「自分達が本当にやりたいこと」をやって生きてもらいましょう。それが全員にとって幸せな選択です。

 

 

ともかく、遠回しに「弱音吐くんなら神社なんか畳めよ」と言い捨てて去ろうとする月神さんを、夕奈が止めます。

「何があっても神様に尽くす覚悟はできている」。まぁそりゃあなたはそうでしょうね。

朝姫も「うちらは立派な巫女ですから、大丈夫です!」と援護射撃しますが、月神さんに「あ、大丈夫なの?じゃあ私の助けもいらないってこと?」と揚げ足を取られてしまいます。小学生同士のケンカかよ。

このシーンの違和感は、月神神社からの「助け」の内容が具体化されていないのが原因です。まぁ月神さんがこうまでして協力を拒むのですから、少なくとも「神社の運営についてアドバイスする」程度のものではないことは読めますがね。

 

さらに月神さんは、とどめと言わんばかりに夜重にも意見を求めますが、夜重は何も言えません。

ここで何も言わないということは、夜重には「何があっても神様に尽くす覚悟」とか「私達は立派な巫女なのだから、きっとやり遂げてみせるという気概」とかは特にないみたいですね。

やっぱり夜重さん、巫女にはなりたくないんじゃあ…?

 

 

しかし、(三姉妹の無茶な相談を断るのは仕方ないとして)三姉妹の尊厳まで打ち砕いてそのまま去ろうとする月神さんを、この男が黙って行かせるわけはありません。

上終は「こいつら(三姉妹)の甘神神社に対する想いの大きさは、あなたもわかっているはず。それなのに、なぜ手を差し伸べてくれないのか」と突っかかりますが、上終が言う通り三姉妹が神社を案じていることくらい、月神さんにはわかりきったこと。だから遠路はるばる月神さんに相談しにきたわけですし。

 

それに対して月神さんは、上終が婿養子候補である話を持ち出し、「あなたも無関係じゃないはず」と上終を責め立てます。

いや、そりゃそうですよ。無関係じゃないから、こうして上終からも月神さんにお願いしているわけですから。

 

 

うーん、このへんのやりとり、何度観ても意味がわかりません。月神さんを「正論を冷たく突きつける、頭の切れる女」として描こうとしているのでしょうが、月神さんの言うことは、抽象的だったり、幼稚だったり、的外れだったりして、まるで反論になっていません。

 

そもそも「甘神神社に対して月神神社ができること」がうやむやの状態で「協力するか、しないか」を決める流れそのものが違和感ありまくりです。

甘神神社の三姉妹は、月神さんに何をしてほしいのでしょうか?カンパを求めているのでしょうか?お安く働いてくれる巫女を手配してほしいのでしょうか?「巫女が三姉妹だけの状態で、今の参拝客をさばく方法」を教えてほしいのでしょうか?

それが明確に示されないので「なぜ月神さんは、三姉妹の相談に乗らないのか」もハッキリさせようがなく、「神職より自分の夢を優先したらどうだ」とか、何の解決にもならない処方に逃げるしかなくなってしまっています。

他意はないですが「作中の人物の頭脳は、作者自身を超えられない」ということわざを思い出しました。

 

あと余談ですが、「甘神神社に婿養子候補が来て、嫁選びをしている真っ最中である」という話、嵐山にまで知れ渡ってるんですね。そういう情報が共有されるコミュニティでもあるのでしょうか。

 


上終が食い下がったことが功を奏したのでしょうか、月神さんは協力の拒否をひとまず撤回し、「今後神職とどう向き合っていくのか、もう一度見つめ直して、答えを聞かせてくれ」という宿題を残します。その答え次第で、甘神神社への手助けをするかどうかを決めるのでしょう。

それならさっきの夕奈の「何があっても神様に尽くす覚悟がある」という言葉で十分な気がしますが、月神さんにはそれが出まかせであり、本気で考えて決めた結論という風には思えなかったようです。

 

 

月神神社の正門付近で打ちひしがれる4人。

みんな「月神さんの協力を得られなかったこと」よりも「自分達が本当にやりたいこと」について、思案を巡らせているようです。「神社のアニメなのに、神職が二の次になる」というおもしろ展開危機に直面しています。

 

上終は「自分は医者になる、だから神社は継がない」と、自分の気持ちをはっきりと示します。

この世界で「医者と神職は掛け持てない」と考えてるのは上終だけです。千鳥さんは彼が医者志望だと知りつつ「孫娘を娶らせて神社を継がせるため」に里親になりましたし、三姉妹も「神社を継ぐんだから、医者の勉強はしなくていいじゃん」とは言わないので、少なくとも千鳥さん&三姉妹は「神社を継ぎつつ、医者の仕事をすることはできる」と考えているわけです。

あともし舞昼先生が「千鳥さんは神社を継がせるために上終の里親に名乗り出た」ことを知っていたとしたら、それを了承した舞昼先生も「医者と神職は掛け持ちOK」と考えていることになりますね。医者にも神社にも失礼だな。

 

勉強があるからと上終が帰ろうとした時、夕奈が突然崩れ落ちます。

抱き抱えた上終が見たのは、予知夢に出てきた「アホみたいな顔(上終談)」でした。

このシーンを見て思い出しましたが、上終が帰りたがってたのって、予知夢を回避するためでしたね。

 

 

その後、月神神社の一室で、何者かに電話をする月神さんの姿が。

電話の内容から、相手はどうやら千鳥さんのようです。

 

月神さん「見極めようと思います。夜重さん、夕奈さん、朝姫さん…一体誰が、未来の甘神神社を担うのか」

 

えっ!?!?!?月神さんは三姉妹を競争させるつもりであんなこと言ったの!?!?!?

ジュラル星人並に回りくどいな!それならそうで「まずは誰が嫁になるか、あなた方で話し合ってハッキリ決めなさい。後継ぎのことが正式に決まったら、それを『上終とその妻が、今後も神社を背負っていく覚悟を決めた』と受け止めて、協力しましょう」でいいじゃん!

月神さんが余計なことを言うせいで、上終は甘神家と一蓮托生の身として嫁選びのことを本気で考えるどころか「医者になるのに障るから、神社は継がない」ことを宣言してしまいました。

月神さんが余計なことを言うせいで、夕奈の覚悟は揺らぎ、夜重や朝姫は「神社を継ぐ以外の道」について考えさせられてしまいました。

この記事の中で私は月神さんのことを「他人を慈しめる人」と表現しましたが、どうやら買い被りだったようですね。ほんとこの世界ロクな奴いねーな。

 

「見極める」という言葉も変ですね。上終の妻も、甘神神社の後継ぎも、月神さんが承認して決めるものではないので。

 

そもそもの話、お互いの幸せのためにする恋愛に「月神神社からの支援」という物的な報酬を与えるの、展開として感心しませんね。「神社存続のために仕方なくくっつく」というのは、最初の導線としては許されますが、最後には「神社のためじゃなく、真心でくっつくんだ」と覆すべき理由じゃないんですか。

 

 

場面は戻り、夕奈が朝姫いわく「落ち込みモード」になっている様子が描かれます。

朝姫によると「夕奈は真面目すぎて、ちょっとの失態でもかなり落ち込んでしまう」そうですが、

今の夕奈が落ち込みモードになっているのは「『あの人ならなんとかしてくれるはず』とわずかな望みに懸けてかつてのお師匠様に相談しに行くが、『覚悟が足りない』だの『お前ら本気で巫女やりたいわけじゃねぇんだろ』だのとボロクソに言われて追い返され、神社の運営がままならぬ危機に瀕している」のが「ちょっとの失態」じゃないからだと思いますよ。

 

ここは夜重に励ましてもらいたいところですが、夜重も夜重で朝姫いわく「失踪モード」になってしまっており、その場にはいませんでした。

朝姫も「マラソンモード」になり、夜重を探すという名目でしばらく一人になります。私も「視聴終了モード」になりましょうかね

 

せっかく帰るところだったのに、「落ち込みモード」の夕奈を託されてしまった上終。

夕奈は上終が買ってきたコーヒーを「飲めない」と断る通常運行を見せる一方、代わりのおしるこを取り落としてしまったり、かなりの重症です。

励ます上終に対し、夕奈は「自分達が巫女の仕事をするのは当然のことで、そこに自分達の意思など介在しない」という心境を吐露します。

これ要するに「みんな本当は巫女なんてやりたくない」という意味に聞こえますが、合ってます?前回までは楽しそうにやってたのに、一体どうしちゃったの?

まぁよくよく考えたら、月神さんに「あんたらには本気で神職をやりきる覚悟がない」と言われてそれを即否定できないのって、月神さんの言葉が図星だからってことですもんね。

 

 

夕奈が落としてしまったおしるこを再び買いに行った上終は、物陰から夕奈を見守るウソッキー月神さんを目にします。

上記のウソッキーというのは「両手に枝を持って植物に擬態している」様子を言い表したものですが、これまでの経緯でわかるとおり、月神さんは大がつくほどのウソツキなので、そのダブルミーニングでもあります

 

以前の投稿で私が「水をぶっかけた相手にクリーニング代を払う人を見て『あの人、優しいね』となる人なんかいない」と書きましたが、同じことを何度も言わせないでください。

いくら月神さんが夕奈を案じたような態度をとっても、その夕奈を落ち込ませたのは他でもない月神さんなので、「月神さんは本当は優しい人だ」という描写にはなっていませんよ。

「月神さんは本当は夕奈(たち三姉妹)のことを心から想っているが、本人達のためにあえて厳しいことを言った」というシーンでもなかったでしょ、あれ。


月神さんが本当に「三姉妹に対して言いすぎてしまったことを申し訳なく思っている」のだとしたら、そんなところでウソッキーしてないで、夕奈の隣に腰かけて「私はただ、あなた達に『本当にやりたいこと』を見つけてほしいだけなのよ」とか言って励ませばいいんじゃないですか。


 

上終に発見された月神さんは、目にも止まらぬ速さで切り返し、その場を取り繕って立ち去ってしまいました。

すると今度はなんと夕奈がいなくなっているではありませんか。

 

上終「おいおい…!こういうのは長女だけにしてくれぇ!」

長女もダメですよ。甘やかさないでください。

 

 

あたりを彷徨った上終は、滝壺の付近で立ち尽くす夕奈を見つけます。

水に入ろうとする夕奈を見て「滝行するつもりだ」と察しためちゃくちゃ鋭い上終が、慌てて夕奈を呼び止めます。

いくら呼び止めても止まらない夕奈を、上終は強引に引き戻そうとします。

 

その時、思わず夕奈の胸をわしづかんでしまう上終。そういやこれ、そういうアニメだったね

驚いた夕奈が我に返ったのは幸いでした。今後夕奈が「ナントカモード」に入るたびに、優しく乳を揉んであげたらどうでしょうか。

 

 

変な空気のまま歩く上終と夕奈が、ちょっとした言い争いになります。

 

夕奈「『医者になる、婿入りする気はない』と言いながら、私達に構って、勉強も疎かにして!そういうの全部、余計なお世話だ!」

 

これは以前舞昼先生が上終にした忠告と似ていますが、自分に対して手を焼いている相手に言うのは、デリカシーがないですよね。

「俺が誰のためにここまでしてると思ってるんだ」と言いたいところをグッと堪えた上終は、かなりのオトコです。

 

この時に夕奈は「勘違いするな」とも言っていますが、勘違いしているのは夕奈のほうです。

上終が三姉妹の世話を焼くのは、三姉妹のためではなく「そうしないと、もっと厄介なことになるから」です。

・自分がなるべく家事をやらないと、三姉妹に家事を任せると、ろくなことにならない

・例大祭の準備や成功のために奔走しないと、神社や家を召し上げられてしまう

・嵐山に行かないと、千鳥さんから預かったヤバそうな箱を処理できない

・月神さんに反論しないと、自身に関係のある「甘神神社の巫女問題」が解決しない

上終が自分達を気に掛けることをやめてほしいのであれば、自分達が上終の手を借りずに生きられるようになればいいだけの話なんじゃないでしょうか?

 

しかもこの場面、夕奈が上終を「ガリ勉」と呼んでなじる部分が含まれていますが、それって夕奈は「不必要に勉強ばかりすることは、よくないことだ」と考えているってことですよね。さっき夕奈が言ったことと矛盾していませんか。

ほんとこの女、何が言いたいのかさっぱりわかんねーよ。

「ナルシスト」というのもわかりません。そんなシーンありましたっけ。

 

 

その後はギャグテイストというかお似合いカップル感を出しつつも、

上終は「全部自分がやりたいからやってんだ!」と自分の想いをぶちまけます。

夕奈はそれを「アホみたい」と言いつつも「そんな考え方もあるんだな」と納得。

 

なるほど、今まで夕奈は何事も「しなきゃいけないからやっていた」んですね。

巫女の仕事はもちろん、姉妹との交流も、猫カフェでトロントロンになったのも、朝姫の誕生日に手作りのお守りを準備したのも、上終に日ごろの感謝を伝えたのも、全部「しなきゃいけないからやっていた」ことだったんですね。

だんだんこの女がわからなくなってきました。元からよくわからんかったけど

 

うーん…今までも上終と夕奈が二人きりで心を通わせようとする場面は何度かありましたが、「結局何が変わったのかわからない」で終わることが多いですね。

 

 

そういうわけで今回はここまでのようです。

この記事の文字数を見てもらえばわかる通り、非常に濃く、非常にツッコミどころの多いエピソードでした。

冒頭に提示された巫女足りない問題にはなんの進展もなく、上終と三姉妹の関係性も深まったとは言えないので、縦軸も横軸もほとんど変化がない、不思議な30分でした。

月神さんというジュラル星人が登場人物一覧に追加されただけです。

 

この後もしばらくは月神さん関連のエピソードが続くようですが、その中で甘神神社の運営に関する問題は果たして解決するのでしょうか。

月神さんの協力を得るには、上終と三姉妹(の誰か一人)が「神職を貫く覚悟」を示す必要があります。それは具体的に言うと「上終が神社を継ぐ意志を固めること」と「三姉妹が『上終に選ばれれば嫁ぐ』ことを受け入れること」を含みます。

ともかく彼らは、ここまでうやむやにしてきた後継ぎ問題に対してハッキリとした結論を出し、ルビコンの川を渡る必要があるということですね。

 

 

はぁ、疲れた。次回の感想記事まで、少し休ませてもらうかも知れません。