○「8のリメイク」という立ち位置の意味
今作の8要素って「年単位でシナリオがある」「月ごとのターン制の武将プレイ」「戦闘システムの下敷き」くらいか?
名声ゴリゴリ削る連中とか、戦闘の退屈さとか、リメイク前の悪いところをきちんと直しているのは好印象なんだけどね。
変わったところが多すぎることは、良かった面も悪かった面もある。三国志8自体があまり評判のいい作品ではなかったけど、「本作からしか摂れない栄養素がある」と支持し続けるコアなファンもいる。
ぶっちゃけ、最近のリアルタイム制に限界を感じてターン制に戻すことに、体のいい理由を付けただけに過ぎない感じもある。
まあリアルタイムはリアルタイムで、わんこそば現象とか、強い方に有利になりやすい傾向とか、色々問題はあるからね。
○武将プレイの楽しみ方の変化
武将プレイの作品には色んな楽しみ方があると思うが、大きく分けて「強い武将で世界を変えていく」と「そこそこ~弱小な武将で乱世を生き残る」の2つに分かれると思う。
多くの武将プレイ作品は、後者に親切なシステムとなっていた印象がある。弱い武将でも鍛えれば強くなり、絆の力で強い武将を打ち負かすカタルシスがある。立志を望んでいなくても、いち武将として裏方に徹することもできる。
一方で三国志8リメイクは、前者の遊び方を強く推奨するデザインになっている。武将に様々な個性を付与する奇才はたったの30人にしか付いておらず、そのほぼすべてが一級品の能力を持つ。他武将と交流するにも、能力が高い方が有利に進められる。
ここのところ「ゴミ武将に優しい作品」が続いていたが、この調整は意外だった。
三国志8リメイクは、例えば「劉禅で統一を目指す」とか「馬良で後方拠点を内政し続けて君主を支える」といった、武将プレイ作品ならではのプレイには向かない。
強い武将を使って、弱い勢力の屋台骨になったり、歴史的に敗北した勢力を盛り返すプレイが向いているし、これは本当に楽しい。「何でもできる自由さ」と「できないことはできない不自由さ」の狭間で、自分の仕事を果たしていくことになる。
○君主の楽しさ
武将プレイ作品でわざわざ君主プレイする人はそういないだろうが、今作の君主プレイは一味違う。
家臣達が絶妙な塩梅で仕事を進めてくれるので、何もかもを自分が見ないと進まない面倒くささがほとんどない。
武将の配置だけは頭を使うし手もかかるが、勝手に武将をあっちゃこっちゃされるよりはマシ。魯粛がいれば無制限に移動できるようになるし。
攻めたい時に攻めたい場所を攻められるし、その準備となる評定でも豊富な戦略Pが与えられる。
とりあえず言いたいのは、今作の君主プレイは最高に自由で快適だぞ!君主プレイ作品が煩わしく思う人も、是非やってみてほしい。
○一騎討ちと舌戦のルールの一本化について
本作では、一騎討ちと舌戦のルールがまったく同じになっている。
参照する能力はもちろん違うけど、覚えることが少なくて済むとも言えるし、「武官でも文官でもやることが変わらなくなった」とも言える。
なお肝心のルールだが、引きに左右される部分が大きく、能力差20くらいのジャイアントキリングは当たり前に起こる。
交流の時ならまだしも、大事な場面で負けると目も当てられないので、面倒くさがらず普段から練習しておこう。
○本作の親密度システムはまじでノーベル賞レベル
他武将と会話したり贈り物をして親密度を高めていくのはこれまで同様だけど、今回はここに一騎討ちと舌戦が加わった。
勝つと名声や能力経験が高まるが、負けても親密度アップは据え置き。弱い武将でも、気軽に挑める。
(欲を言えば、明らかに格上の武将に挑む場合は、相手が手加減してくれる展開が欲しかった…)
引き受けてくれない人もいるが、荀彧みたいな文官でも普通に一騎討ちに応えてくれる。
親密度がMAXになると、「友情の証」という特殊なアイテムを渡すことで、「親密」の関係になることができる。
そしてここからがすごいのだが、親密になった武将からは、特技を覚えるためのポイントをいただけるのだが、親密度のゲージを再び最大にすることで、これを何度でも貰うことができるのだ。
これまでは「親密度が最大になったら、それ以上交流する意味は薄い」という感じだったが、本作は意味があるどころか、むしろ親密にしてからが本格的な交流の始まり。
このシステムを考えた人に焼肉をおごりたい。それくらい素晴らしいシステムだ。
○戦闘について
まず、わんこそばが起こらないのは好感触。リアルタイム制を撤廃したおかげと言えよう。
また「いくら増援がいようが、元の戦力が全滅したら勝敗が決まる」仕様は、利にも害にもなるが、新たな戦略を生み出す要素となる。
しかしまぁ地味なこと…さんざん推していた戦法も、蓋を開ければそれぞれ一度しか使えず、一部を除いてそれほど効果も高くない。
というか使用者の能力に左右されすぎる。ここでもゴミ武将に厳しい要素が…
編成でも「ゴミでも何でも入れるほど強くなる」というわけではないので、どうしようもない奴は本当にどうしようもない。
看破した罠の場所はずっと表示しててほしいし、櫓はもうちょっと破壊しやすくしてほしいけどね。、あとAIが一点突破を狙いすぎ。兵を分けて進軍するメリットがない。
こちらが攻める場合は、敵が城から離れなさすぎ。自拠点の防衛なんて必要ない。
ちなみに、呂布の車懸は一見の価値あり。誇張抜きで数万の敵兵が一撃で溶けるぞ。
○仲間のAI
仲間との絆を束ねて強敵に挑むのが本作の特徴だが、仲間同士で交流している様子はない。
義兄弟同士で特技を教え合うイベントはあるが、主人公が介入しないと起こらない。
ついでにAIは見聞もしないので、民心が上がらない。
(民心が最大になると友情の証が貰える仕様との兼ね合い?それとも単に「民心とは主人公と民の仲の良さ」を表すから、主人公にしか上げられないってこと?)
13もそうだったが、仕事を頼んでないからって遊んでんじゃねーぞ。
○値段
たけぇよ!こんなの5000円、せめてフルプライスで売る内容だよ。
高い価格と賛否両論な内容がディスシナジーして、大量の様子見勢を生み出してる気がする。
コストは嵩むが、せめて体験版を準備してもらえたらよかったと思う。
○総合的にどうか
自分は好きだが、他の人が好きになるかはわからないねぇ。嫌いだと言う人を責められないレベル。
個人的には、13や14に並べて「出来のいい三国志ゲー」として飾ってやってもいい出来だとは思っている。
ただ人を選ぶ感じは殊更強いし、値段も高いので、万人に勧める気はしないかな。
「面白そうだ」と考える人の期待には応えるが、「つまらなそう」と考える人の不安も的中する、そんなゲーム。
今後のアプデに期待したいが、根本的なゲーム性は変わらないだろうから、なんだかなあ…
パワーアップキットは出るんだろうか。正直出なくていいです。それより三国志15の開発にリソース注いでください。