深夜にこんばん優☆ & こんばんポノック♪
李良枝と書いてイ・ヤンジと読みます。
李良枝は日本で韓国人の両親の下に生まれ、92年に37歳で急逝した女流作家。
授業でたまたま李良枝を扱うことになり、経歴などを調べていくうちに興味を持ち始めました。
学生に紹介するために図書館で『李良枝全集』を借りてきて、せっかく借りたんだからと
芥川賞を受賞した『由熙』(ユヒ)を読み始めたらグイグイと引き込まれてしまいました。
ストーリーは、日本で生まれ育った韓国人の女性が韓国の大学に留学するも、韓国で
の生活に馴染めず、結局は日本へ帰ってしまう…と、簡単に説明するとこんな感じ。
このストーリーを、下宿先の女性の目を通した回想形式で綴っていきます。
主人公の由熙にも、ストーリーテラーの“わたし”にも、李良枝自身の姿が投影されているのは明らか。
李良枝自身も韓国人としての自分と、日本で生まれ育った日本人(両親が
日本に帰化したため国籍は日本)としての自分の間で葛藤したそうです。
きっと『由熙』を書くことによってそんな自分を客観的に見つめ、答を出したかったのでしょう。
一文一文、一語一語に、
『書きたい』
というより
『書かなければ』
という強い意志がギリギリと刻み込まれています。
読み終わった後、というか読んでいる最中ですら、いつまでも消えない余韻を残してくれる作品。
読み終わった後は、なんかもう感激してしまって、これ
(『李良枝全集』)買うしかないかなと思ったら、既に絶版。
『由熙』自体は文庫本でも入手可なんですが、どこの本屋に行ってもない。
しょうがないので昨日、神保町の某古書店でハードカバー版を買いました。
帯付き初版本で当時の定価1300円のところ、なんと特価1575円!
って…定価より高いやないかー!!
いやー、さすがは違いの分かる中野書店(←全然“某”じゃねー)。
でも久しぶりに『この人の作品は全部、読むだけじゃなくて本と
しても所有したい』と思える作家に出会えたような気がします。