徳仙の滝、下関市豊田町 | 日本の歴史と日本人のルーツ

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徳仙の滝

下関近辺には渓谷が少ないので滝が珍しいが、それでも市内には長府石槌神社と勝山の大王寺に小さいのが見られ、市外では菊川町の中山渓に、また豊田町では徳仙の滝、石柱渓の滝が有名であり、北九州市小倉には菅生の滝がある。

そして中山渓の滝、徳仙の滝、石柱渓の滝はみな木屋川の上流である。

さて滝を訪れるのは、新縁の濃い夏もよいが、やはり紅葉の秋が最高である。

山電バスで豊田町の石町に下車し、川沿いの舗装された道を山手に向かうと、途中で道が二つにわかれ、右は神上寺へ通じ、左をたどると二十分くらいで華山(げさん)のふもとの徳仙の滝へ到着する。

この徳仙の滝は、神上寺を開いたといわれる徳仙上人が修行された場所であり、上人の名をつけたもので、滝の手前右側の畑の中に、徳仙上人の古い墓が忘れられたように建っている。

滝は飛瀑十二メートルといわれ、夏には地元の婦人会によりそうめん流しが行われ、涼を求めて集まる人びとでにぎわい、夜はキャンプ場として若者たちに喜ばれている。

またこの清流一帯は、可憐な美声の持主河鹿(蛙)の名所にもなっていて、風流人を楽しませてくれる。

うっそうと茂るほの暗い木立の中から、とうとうと流れ落ちる飛瀑は真白なすだれをかかげて、苔むした奇厳に飛散し、青い深みには、もみじが一枚二枚ゆらゆらと漂い、澄んだ淵の底には、どんぐりの実がたくさん沈んでいるのが見える。

そして滝の上からの木洩れ日が、青葉や紅葉を逆光に照らし、純白の滝がまぶしく光って、えもいわれぬ美しさであった。

夏のにぎわいをよそに、今は不思議と誰一人訪れる者はなく、この秋色にいろどられたみごとな滝の景観を一人占めにするのが、心苦しくもったいないような思いであった。

(下関とその周辺 ふるさとの道より)(彦島のけしきより)

下関市豊田町大字江良 徳仙の滝