ストーカーを抑え込むために弁護士がすべきこと | 金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

石川県金沢市在住・ごくごく普通のマチ弁(街の弁護士)が,日々の仕事の中で離婚,女と男と子どもにまつわるいろんなことを書き綴っていきます。お役立ちの法律情報はもちろんのこと,私自身の趣味に思いっきり入り込んだ記事もつらつらと書いていきます。

1.
お久しぶりっす。
金沢は,今日はとっても熱くて,ムンムン,モラモラして汗もネトネトして,なんかウヨウヨ変なのが湧いてきそうな今日この頃,皆さん,いかがお過ごしですか。

2.
 でクルリンパ。
 そのうちストーカーのテーマでも記事を書こうと思っていて,まあ,伸び伸びになっておりました。
3.
 高校生を殺害した三鷹ストーカーの裁判員裁判のニュースが頻繁に流れております。
 池永チャールストーマス・・・・って,うーん,ストーカーですねぇ。
4.
 ストーカー事件について記事を書くとき,私は,桶川ストーカー事件を思います。
 猪野詩織さんと猪野京子さんを思います。
 ずっと以前に,猪野京子さんからお話をお伺いしたことがありました。
 桶川ストーカー事件は,警察違法不作為として有名な事件です。
 猪野一家は孤立して,詩織さんは殺害されました。
 猪野詩織さんがストーカーによって殺害される前,猪野さんたちは,弁護士にも法律相談をしていました。
 猪野京子さんからお伺いしたお話では,短時間の法律相談で,男女の仲だと片付けられて終わったというものということでした(もしかしたら,私の記憶が不正確かもしれません)。
 警察違法不作為であまりにも有名な事件ですが,私は,弁護士集団の当時の責任もあると思っています。
 時代的なものはあるかもしれません。
 今ほどにストーカーという言葉は知られていませんでした。
 当時は,犯罪被害者を支援する活動は,まだまだ遅れており,特に弁護士集団は,被疑者被告人の刑事弁護を中心とする考えがとっても強くて,弁護士が被害者の側に立って活動することについて,何かしら弁護士集団の中で,これを斜めに見るような雰囲気も強かったんじゃないかなと私は思います。
 そのころ,私は,そういう雰囲気を感じておりました。
 そういう中で,猪野一家は,詩織さんが存命中に,弁護士に法律相談をし,的確な助言を得られず,孤立させられました。
 弁護士集団は,警察違法不作為の問題は指摘すべきですが,特に,弁護士集団がそれを指摘するときは,私は,桶川ストーカー事件やその他もろもろの警察違法不作為において弁護士はどう関わってきたのかを自省して,自身の反省とともに指摘すべきだと考えます。
 私は,ストーカー事件に関わるとき,ずっと,桶川ストーカー事件を私自身の心に置いてきました。
5.
 私は,ストーカー事件の依頼が来ると,必ず被害者と一緒に警察に行きます。
 警察に行く前に,ほとんど徹夜状態になっても,事前準備をします。
 緊急案件ですと,被害者の予定と調整し,事情聴取,さまざまな説明,方針検討を一気に進めるため,初回法律相談が数時間~10時間近くに及び,終了時刻が午前様とか,当たり前になります。
 あるケースでは,丁度三連休だったのですが,三連休を全て打合わせに使ったこともあります。
 私に相談に来た方が,私の対応の遅れのために,殺害されたり,重大な危害を受けたりすることを想像すると,私は,上記のように対応することを当たり前のようにやります。
6.
 弁護士は,警察から適正かつ早期の介入を引き出す方法も,ノウハウとして身につけて実践できないといけません。
 警察の組織の特性,組織としての動き方,警察介入の枠組,警察官一般が弁護士一般に持つ拭いがたい警戒感,そして個々の警察官の正義感や熱意・・・そういうものを全て頭に入れて,警察の適正かつ迅速介入への筋道をきちんと作っていくことが,ストーカー事件に関わる弁護士の大きな役割だと思っています。
 ところが,この発想は,どうも弁護士集団一般には,まだまだできていないように私には思えます。
 被害者と一緒に警察に行き,そして,もしそれまでの相談の中で被害者と警察との関係がこじれている部分があれば,そのこじれを解消し,警察は警察の組織として対応できる最大限のことをやってもらう,被害者の委任を受けた弁護士は,その警察の動きと対応しつつ弁護士ができる抑え込み方法を駆使する,被害者自身もさまざまな自衛措置を用意する。
 それらを連携させる。
 方針も,今後の抑止に力点を置くのか,それとも一気に逮捕まで持って行き,刑事手続に乗せることによる抑止を狙うかを事案の特性を踏まえて,しっかり検討する必要があります。
 たとえば,三鷹ストーカーでも,犯人は,被害者の画像を所持して公開したことが報道されています。
 もし,ストーカー事件で加害者が被害者に壊滅的な打撃を与える画像とか動画とかを所持しているなら,警察が強制捜査できないかを第一に考えます。
 警察には,捜索差押によってそれらの物を加害者から取り上げてもらう必要があるからです。
 ストーカー被害に関わる弁護士は,その事案に応じて,ストーカーを抑え込むための総合的なプランニングができないといけません。
 そして,緊急時に,しかも,被害者の安全が脅かされている状況で,全ての選択を被害者の自己決定に基づいて行うという困難な課題もなんとかやっていく必要があります。
 自己決定の前提は,取り得る対応策(複数選択肢)についての正確な情報提供と,ある選択をした場合のメリット,リスクの分析,今後の展開予想を本人に伝えることです。
 被害者も,情報の洪水になります。しかし,被害者自身が,問題状況を把握して,複数対応策を知り,そのメリット,リスクを知り,被害者自身の選択を積み重ねて行くことがとても大切なのです。
 これを積み重ねて行くことで,被害者の自尊感情や自身の現実対処能力への自信が回復してくからです。

 桶川ストーカー事件の後も,ストーカー殺害事件は連綿と続いています。
 その都度,警察の対応に問題がなかったかどうかがマスコミで取り上げられます。
 問題のあるケースもあるのでしょう。
 ただ,私は,そういうニュースに接したときに,その被害者が居住していた地域の弁護士集団は,そのニュースに何を思うかに思いを馳せます。
 もし警察の対応に遅れがあったとしたら,その遅れの責任の一端は,その地域の弁護士集団も背負うべきだと私は考えます。
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