日常 | 理学療法士養成校教員 下井ゼミ研究ノート

日常

中国のトイレで考えたこと。


今でこそ中国(都市部)のトイレ(女性用、あるいは男性大用)は、日本と同様に完全個室ですが、ちょっと前、あるいは郊外のトイレは個室ではありません。

ドアがなかったり、隣の人との仕切りが高さ1mほどだったりというのが当たり前です。

今回の成都学会ツアーで一番ショッキングだったトイレがこれです。



新・下井ゼミ研究ノート-あるトイレ

汚い写真ですみません。しょぼん
成都の北、都江堰の近くの食堂のトイレです。


1つしか便器がないので隣との仕切りがなくて個室ですが、ドアはありません。しかも水洗ではないので、単純に四角い穴があいているだけです。しかも、日本の汲み取り式(通称:ボットン便所)では、便器の真下に暗い穴が開いていて、ものすごい量を溜めなければ排泄物は見えません。でも、このトイレでは斜めに溝が切ってあって、排泄物が重力で流れるようになっているのですが、ちょいちょい前の人の跡が目に入ってしまいます。



この時、まず考えることは、もしここで大きい方をする際には、どっちを向いてするかということです。えっ
ちなみに、下井は別のトイレでこのタイプを使いましたが、壁を背にしてこっちを向いて使いました。いくら下井でも、やはり知らない人への「バックショット」は最大の抵抗があります。しょぼん



そしてこうしたトイレを見て、理学療法士として考えることは、介護が必要となった時のオムツの導入です。
学部講義でもヘルパー2級講座の講義でも、何も考えずにおむつを導入することに否定的な意見を言います。なぜならば、我々日本人は、特殊な環境のトイレ以外の環境での排泄はほとんど経験がないからです。


日常使用しているトイレをイメージしてください。
適切な間取りで、完全に密閉された環境はトイレしかないと思います。同じ「公衆」でも「公衆浴場」は同じ空間を共有しますが、「公衆トイレ」は最終的に個室になるはずです。密閉感こそが「日常生活活動(ADL: activities of daily living)」になるというのは、他のADLにはない特徴ではないでしょうか。


このことを考えた時、ベッド上でのオムツの使用、あるいは寝室へのポータブル・トイレの設置は、正しい意味での「日常生活活動」ではないと考えます。ですので各講義では、オムツやポータブルトイレの導入は、やむをえない場合はありますが、基本的には「非日常」であって、リハビリテーションが本来目指している「日常」生活ではないということをお話しています。


だとしたら、この成都でみたトイレが「日常生活活動」な地元の人たちにとって、オムツやポータブル・トイレという排泄環境は、もしかしたら「非日常」ではないのかもしれません(ただし、中国に成人用おむつ、ポータブル・トイレがあることが前提)。かお

もし成都でオムツの講義しなきゃいけないときは、講義内容を変えなきゃいけないなぁ、といらない心配をしました。にひひ