今日は、第8回TwinCupの決勝戦が、
ニコニコ生放送、スリアロチャンネルにて13時から放映されます。
http://live.nicovideo.jp/gate/lv240023516
それを記念(?)して、第3回大会の決勝戦の観戦記を掲載します。
これは私が2009年に書いたもの。
しかし、掲載サイトが閉鎖されてしまったので、幻の観戦記となったのです。
準決勝の模様はこちら↓
第3回・TwinCup観戦記・1
第3回・TwinCup観戦記・2
なお、諸事情により、一部修正や加筆しております。
ご了承ください。
所属団体は、2009年当時のものとなっております。
決勝戦
決勝に進出した選手は、この4人。起家から順に紹介していこう。
佐藤崇(準決勝までトータル81.9)
最高位戦日本プロ麻雀協会所属。Aリーグにも定着した感がある、自他共に認める実力派。
2008年はとにかく大活躍の年だった。優駿杯(棋士会主催)で、念願の初タイトル獲得。
タイトル戦の決勝進出は実に3回(優駿杯、最高位戦クラシック、最高位決定戦)。
ちなみにツインカップは3年連続(!)で決勝に進出している。もはや「ツインカップの顔」と言ってもいいのではなかろうか。
今年こそは勝利の美酒を味わいたいことだろう。
田中巌(110.4)
最高位戦日本プロ麻雀協会所属。現在B2リーグで昇級争いの真っ只中である。
新人時代から実力には定評があり、1年目はC2、C1リーグをストレートで昇級。まだデビューして3年目ながら、中堅クラスの雰囲気を持ち合わせている本格派。
武中真(127.0)
最高位戦日本プロ麻雀協会所属。2008年はB2リーグで昇級したものの、仕事などの都合により、2009年のB1リーグ出場を断念。
2007年の王座戦で決勝進出。あと一歩で優勝を逃した。その時の優勝者は、今回の決勝進出者でもある山本篤史(棋士会)。
日頃は会社員ながら、日程の都合がつけば、あらゆる競技会に積極的に参加するなど、競技麻雀に対する思いは実に熱い。3年前にデビューした当時に比べると、実力が飛躍的に伸びたと評する人も少なくない。
ちなみに、ツインカップの「ツイン」の由来は、双子の武中兄弟からである。
山本篤史(149.4)
日本プロ麻雀棋士会所属。
第1回優駿杯、第32期王座戦で優勝。実力、実績とも申し分ない。
麻雀も日常も、いるのかいないのかわからないくらい、とにかく気配を感じさせない。日常はどうかわからないが、麻雀においてはそれが大きな武器になる。
とにかく自己主張をする鈴木たろう(プロ協会)とは、まさに対極。
東1局0本場 ドラ
西家の武中が、3巡目リーチ。準決勝に引き続き、牌運に恵まれている。
(牌姿)
「先手」「ドラ1以上」「手牌の変化が少ない」ことから、リーチという選択に違和感はなかった。
その一方で「ひとまずヤミテンにして、好形に変化しやすい牌を引いたらテンパイを崩す」という意見も後で聞いた。あと、「押し返されたら勝算が低い」というのも理由の一つだろう。
リーチひとつとっても、いろんな意見が出るのだから、麻雀は面白い。
決着は意外と早かった。8巡目に田中がツモ。
ツモ ドラ 裏ドラ
が武中の現物。念入りにヤミテンにして、700・1300とリーチ棒の収入。
東2局1本場 ドラ
東家の田中が気合いを入れてリーチ。6巡目である。
そして7巡目、気合いの入った声で「ツモ!」。
一発ツモ ドラ 裏ドラ
ちなみには、北家の佐藤が3巡目に切っているだけ。全員の捨て牌を見ても、山に3枚居そうなのだ。一発はともかく、いずれツモりそうである。
しかし、この一発ツモ。実は少しアヤがあるのだ。
田中のリーチを受けた時点で、北家の佐藤の手牌はこうなっていた。
高得点が期待できる。現物は1枚もない。
安全牌が劇的に増えない限り、ある程度までは押すはずだ。
そこに西家の山本が、田中のリーチ宣言牌でもあるを切ってきた。一発消しかつチーテンが取れる牌だ。
しかし佐藤はそれをスルー。これはどうなのだろう。
佐藤にとって最悪のシナリオは、自分以外が独走態勢になってしまうこと。
それを阻止するために、誰かがいち早くテンパイをとって、田中のリーチを交わしにいくのもありではなかろうか。
後日、佐藤本人に聞いてみた。
「大きいリターンが見込めそうなので、メンゼンで押して、ぶつけることしか考えなかった」
「喰うとしたら、出ていくが現物で、なおかつ待ちになるが現物の時くらいやね」
なるほど、「至高のメンゼン派」と名高い佐藤らしい思考である。日頃のスタイルがそうさせたのならば、それはそれでいいと思う。
「悔いを残さない選択」が何よりも最優先なのだから。
何はともあれ、トータルポイントはこうなった。
田中159.4 山本157.7 武中90.2 佐藤65.5
僅かながら、田中が山本を逆転した。ここからはマッチレースになるのだろうか。
東2局2本場 ドラ
南家の武中が7巡目にリーチ。
東1局と同様、このリーチに異論を唱える人がいた。
最大の理由は「逆襲の恐怖」だろう。
しかし、これをヤミテンにしたとしても、嬉しい変化は少ない。
4巡目にを切っているので、好形変化で嬉しいのはツモだけ。
あと、ドラが2枚持っているので、少しではあるが東1局のリーチよりは反撃される可能性が低い。
ところが、今回は3人ともなかなか退いてくれない。
まずは西家の山本が、一発目に無スジの、次巡にこれまた無スジのをこっそりと置く。
続いて北家の佐藤は、8巡目に、9巡目にと無スジを2連発で飛ばす。
そして田中が、11巡目にを強打。
危なかったのは山本。が入ると、が押し出される可能性が高い。
しかし、幸か不幸か11巡目のツモは。
テンパイ打牌になるが中スジになっているので、とりあえずテンパイを取っておくという手もあるのだが、山本の選択はのメンツ中抜き。ようやく1人脱落。
佐藤はとことん粘る。
12巡目、武中に合わせた山本のにチー。
チー
片アガリではあるが、はまだ1枚生きている。これがアガれれば、まだ望みはある。14巡目に引いたも勝負。
しかし15巡目のツモは。ここで仕方なくを落としにかかる。
16巡目、山本が切ったをチーして、形式テンパイにとる。
田中、17巡目にノーチャンスだが生牌のを叩きつける。
これを「勝負牌」と見るか、「安全牌が無くなった拝み打ち」と見るか。
同巡の佐藤、武中の中スジでもあるをツモ切ると、田中から「ロン」の声がかかった。
ロン
対局後の佐藤曰く、「(田中)巌ちゃんを甘く見すぎた」とのこと。
しかし、武中のリーチに対する間合いは絶妙だった。Aリーガーの実力の片鱗を魅せてくれた1局だった。
東2局4本場 ドラ
田中64600 武中21200 山本23200 佐藤10000
山本が7巡目にリーチ。佐藤が12巡目に追いかけた。
果たして、長く続いている田中の親を流すことができるか。
山本
佐藤
今局は、捨て身の佐藤に軍配が上がった。
ロン ドラ 裏ドラ
山本としては、2600は3800で済んだのが救いか。この局までの田中と山本のトータルはこうなった。
田中175.0 山本127.8
一見大差に見えるが、山本は現在2着目の武中を抜けば、あとは田中との素点を19.0P以内に詰めればいい。
とは言ったものの、現状は素点で46.2P差。チャンス手が入れば追うのも楽になるのだが…。
東3局0本場 ドラ
8巡目、イーシャンテンの東家の武中。1枚切れのを何気なく河に置いた。
すると、南家の山本が控えめな声で「…ロン」。武中、少し驚いた様子。
山本の捨て牌は比較的平凡にも見える。
そして、山本の手牌が開かれた。
ロン ドラ
「…12000」と、実際の点数とは対称的に、普段どおりの控えめな声での申告。
これには放銃した武中だけでなく、観戦者までも驚いた。とてもこんな高い手をテンパイしているとは誰もが思っていなかったのだから。
まさに「ステルス篤史」の真骨頂である。
さぁ、ここから反撃だと言わんばかりに山本は親番を迎えるが、手にならずノーテン親流れ。田中との距離は、まだ遠い。
長くなったので、続きは次の記事で。
余談ですが、第3回の決勝戦で山本篤史選手の採譜を担当していたのが、
今回の決勝戦に進出した、プロ協会の二見大輔選手。
二見選手は、これまた決勝戦に進出している、現・雀王の鈴木たろう選手と同期なのです。
私ともデビュー時期が近く、20年近い付き合いとなりました。
個人的には、二見選手とたろう選手を応援しています♪