任期最後の一般質問でした。

もう最後という思いを込めて、4年間で学ばせていただき考えてきたことを詰め込みました。



 

質問項目は4つ。

1.デジタル社会における佐賀県の未来について
2.産業DXやスタートアップの取組について
3.不登校とオンライン授業の活用について
4.これからの学校について


動画はこちら💁‍♂️



 

 

佐賀県議会の一般質問は、総括質問という形式なので、質問に対する答弁がわかりにくいです。

一問一答形式は、問に対して答弁が一問ずつ行われます。

一方で、総括質問は、一気に質問を読み上げて、知事から関係部局長、教育庁、警察長という順番で答弁があります。

 

今回は一般質問ですので、答弁の順番を整理しました。ただ、総括質問は全体の繋がりを組み立てて質問しますので、多少文章が理解しづらい点があると思います。

 

全文掲載します。

下田:太字 

私の提案・質問:赤字

答弁:青字

↓↓↓以下、議事録です。

(前語り)

◎下田 寛君(拍手)登壇=県民ネットワークの下田寛でございます。本日最後の登壇者となりました。この場に立つと大変緊張します。
 今議会、今回の任期で私も最後の質問となるわけで、今回は総括的にいろいろ聞きたいという思いの中で、特に質問のすり合わせ、調整等する中でも、職員の方々と関係者の方々には多くの御尽力、御協力をいただきました。そういった皆様に感謝を申し上げて質問に入らせていただきたいと思います。
 早速入らせていただきたいと思うのですが、今回の質問の全体的なテーマは不易流行、まさに知事が提唱されている、人を大切に新たな時代を切り開くという視点から質問を行わせていただきたいと思います。
 まず、一問目に入りたいと思うのですが、その前提としてSociety5・0の時代になっていくということが言われていますが、このソサエティーとは何ぞやということを少し説明させていただきたいと思います。ちょっと長くなりますが、最後ですので御容赦をいただきたいと思います。
 まず、Society1・0、これは約三十万年前に起こったと言われ、これは狩猟採集民族時代、魚や木の実、野生動物を狩っていた時代、獲物を追って移動していました。
 次に、Society2・0が約三万年前、これは農耕民族の時代、畑を耕す能力を手に入れて、計画的に自分たちの食物を手に入れることができるようになり、定住し、財や富が生まれ、権利という概念が生まれ、国や法律が生まれてきました。
 次に、Society3・0が一七六〇年の産業革命による工業化、今までは全てを手でやっていたことが、機械が発明され蒸気機関車なども生まれ、地球上どこにでも移動ができるようになりました。今まで人間の手では生み出せなかったエネルギーを生み出せるようになった時代。
 そして、Society4・0が一九九〇年辺りのインターネットに台頭される情報社会、地球の裏側の人たちと無料で会話することができたり、情報を覚えていなくても常に一瞬で調べることができるようになったわけで、今までは何かを知っていることに価値がありましたが、すぐに調べることができるようになり、知識をどう活用し応用するかが問われる時代になりました。
 そして、これから来るSociety5・0が二〇三〇年頃と言われております。今から八年後。超スマート化時代であり、予測不可能な時代と言われています。要は第五バージョンの社会が来るというお話。これは、五つの社会変革によって根本的に生き方が変わっているわけで、Society5・0は、AI、ロボット、メタバースなど、仮想現実の世界が私たちの世界を一変させる、そんな時代が来るよというのがSociety5・0と言われています。
 そして、Society1・0からSociety2・0までの間が二十七万年、Society2・0からSociety3・0の間が三万一千七百六十年、Society3・0からSociety4・0の間が二百三十年、そして、Society4・0からSociety5・0の間が四十年という流れの中で、圧倒的なスピード感で人間の生き方を変えていくテクノロジーが、今どんどん生まれています。

 

1デジタル社会における佐賀県の未来について
 そういった前提を踏まえて、問一のデジタル社会における佐賀県の未来についての質問をさせていただきます。
 私は、今回の県議会の任期の中で、これからの佐賀県の産業の在り方や稼げる産業の在り方について議論をさせていただきました。また、知事の任期も今議会で一区切りとなることからも、これまでの取組を総括し、どのような思いを持ってこれからの佐賀県の未来を見据えているのかをしっかりととどめておくことが必要と考え、特に大きな時代の流れでもあるデジタル社会への取組の今後について質問をさせていただきます。
 私が県議会議員として携わらせていただいたこの四年足らずの間でも時代が一気に動き出し、先ほど申し上げたSociety5・0時代と言われるこの流れに向けた、特にデジタル産業に特化した目まぐるしい動きが劇的に動き出しております。
 また、近年のデジタル技術の著しい進歩は、言うまでもなく人々の生活に大きな変化をもたらしています。これからはそのスピードはさらに加速化し、デジタルが人々の生活に欠かすことができない、また、私たちの生活がどのように変わるのか予測不可能と言われるほど一変させるであろう時代がすぐそばまで来ており、これからの社会にデジタルが変革を起こし、デジタル技術を積極的に活用していくことで佐賀県の未来が切り開かれ、ひいては世界の未来につながっていくものだと確信をしております。
 さて、山口知事は、デジタル社会に向け、構想力、創造力を持って未来を思い描く力、DX脳という言葉でその重要性を提唱されております。また、先端技術の活用など、様々な取組がなされており、AIの活用、DXの推進や宇宙産業への取組などが事業化されて、これら先端技術に関することが多くの議員からも議題として質問や提案がなされているところです。
 ここ数年の佐賀県の取組を総括的に振り返ってみると、知事は今議会の議案上程の際も、強いメッセージであった人への投資、人を大切にするということを今回も大々的に掲げられて、過去にあった幕末維新博や「さが総文祭」、さらには「SAGA2024」にもレガシーとして受け継がれているという議論がありましたが、佐賀は世界を見ていたという理念に代表されるとおり、世界を見据えた佐賀づくりや、世界を見据えた人材育成にかなり注力されて、郷土に誇りを持つことを前提に、世界で活躍する人材育成のため、デジタル分野だけにとどまらず、あらゆる分野で種まきをしていたと認識をしております。そして、この種まきも一定の成果は上がってきているものだと認識をしております。これからは、この芽出しをどのように次の段階に成長させていくかが課題になってくるわけで、出てきた芽をどのような方向に成長させ、佐賀県の未来や、世界に向けた佐賀県の産業の未来についてのかじ取りが問われる段階になってくると考えています。
 そのような中、本年八月二十七日には、インターネットの父と言われ、一九八〇年代にインターネットを日本に導入した張本人であり、我が国の生活様式を一変させたSociety4・0の立役者とも言える村井純先生と、起業家として我が国のデジタル社会を牽引し続けている藤原洋氏をお招きして、「佐賀県から始まる日本の未来」と題した知事も含めた三人での鼎談会が開催されております。
 佐賀の地から新しい社会システムをつくり出していくことが提起されております。この鼎談会は聞けば聞くほど新たな気づきをいただいて、大変示唆に富んだ、価値があふれる鼎談会だったと思います。また、佐賀から次の世代の息吹を起こすという知事からのメッセージのこもった事業であったとも認識をしております。
 この会では、佐賀県のデジタル社会に向けた今後の展開へのヒントを多くいただきました。具体的な政策提案としては、例えば、全ての子供の家庭にインターネットを引くこと。専門高校の商業高校、工業高校、農林水産高校を一つのプロジェクトで交流させる六次産業化。大学と放送局をコラボさせること。大学のコンテンツを誰でも見られるようにすることで生徒を地域に集めるなど、世界と地球をいつでも見られる環境を子供に提供しようというお話や、百年後の健康管理、健康DXに向けた取組、避難所でのインターネット環境、高校生の可能性やデジタルが進むからこそ家庭や地域の可能性など、また、デジタル田園都市国家構想に向けてもお話をいただいて、この前日に開催されたイベントの詳細についても説明があって、佐賀県の取組についてもコメントをいただいております。
 そして、今の時代を幕末になぞらえて、コロナ禍だからこそインターネットの価値が一気に広まったと、こういうことは歴史的にもない、全年代が同じ経験をしたということの意義や、かつての佐賀は歴史を踏まえて研究開発を行い、製品として人の役に立つ、その最後の段階が一番歯の食いしばりどころであって、そこまでを踏まえた研究開発をかつての佐賀は行っていたというお話をいただいて、単に大きな企業を誘致するという前に、ある製品の開発はここでできるという場所があれば、そこに研究開発拠点があり、世界の研究者や高校や大学、起業する人が集まるという鶴岡の先端生命科学研究所の具体的な事例もお示しをいただきました。
 また、半導体の可能性についても触れられております。日本は半導体装置は世界では負けていない。強いものを伸ばすという産業政策が必要ではないかということで、具体的にSUMCOさんの佐賀事業所の例を挙げられて、強みを生かす戦略や経済安全保障の考え方など、ただ、いいものが売れていないというのは国の経済政策の問題としつつも、地域にチャンスがあるのではないかというお話でした。
 また、人材は、人間力と技術力、地域を巻き込む力が必要である。そして、DXの根本的な意味に触れ、まさに知事も言われているDX脳で理想の形や構想を掲げ、みんなで現実化していくというこれからの社会の在り方にも言及がありました。
 しかし、御承知のとおり、デジタル技術を活用した取組は、国のデジタル田園都市国家構想の推進もあって、全国様々な地域で取り組まれている現状です。ここ近年の佐賀県でのデジタルの取組については、真新しいものではありますが、全国的に見ると、国の方針に沿ってどこの自治体でも取り組んでいる現状があります。これまで多くの投資をしておりますが、果たして佐賀らしさがどう芽吹いているのか、また、そのほか可能性を感じる佐賀の強みも交えて、次の段階へとそろそろ進むべき時期に来ていると感じております。
 そこで、山口知事にお尋ねをします。
 このような状況において、
佐賀が誇るべき歴史やふるさと、人々の温もりをしっかりと守り育みつつ、これからのSociety5・0時代において佐賀らしさを発揮し、佐賀にしかできないようなことを、どのような方向で、日本をリードする存在へこのデジタル社会に向けて導こうとしているのか、山口知事にこの一点をお尋ねいたします。

 

◎山口知事 登壇=下田寛議員の御質問にお答えします。
 デジタル社会における佐賀県の未来ということについてお答えします。
 デジタル社会とは、あらゆる人、物が常にデジタルでつながることで、新たな価値を生み出し、人々の生活を豊かにする社会であります。
 まず、これから部長答弁や教育長答弁があると思いますけれども、佐賀県といたしまして、スタートアップの事業であったり、スマート人材を育成したり、そして、子供たちにIT教育をなしたり、こういったルーチンというものはやっていこうと思っています。これは佐賀県の強みだと思います。確かに他県もそういった傾向にありますけれども、我々のほうが進んでいるといったところで、我々は自負していると。
 その次に、下田議員もDX脳を言っていただきましたけれども、私が考えているのは、先ほどのソサエティーの話もそうですけれども、恐らく狩猟をやっていた人たちは、その次に農耕の時代が来ると分かっていなかったと思います。農耕をやっていた人たちは、その後に、蒸気だ、産業革命だと全くイメージしていなかった。その人たちはまたネット社会、それは何だということだと思います。だということであれば、Society5・0というのは、僕らの全く違う、今想定していない別のものかもしれない。何となく今やっていることの接続、その先にあるような気がしてならないんだけれども、実は今我々の誰も全く分かって
いないことなのかもしれないという意識の下で、となると、そこの異次元の扉を開くというのは、今までとは全く違うような構想力を持っている人、もしくはその集合体だというふうに思うわけです。
 ですので、そのDX脳というテクノロジーということではなくて、どんな未来を描くのかという柔軟な発想や着想、構想力が必要ですし、そのためには人材が交じり合うような人材交差点というかDX畑というか、我々は実証フィールドとも言いますが、そういうものが佐賀県にあれば、その異次元への扉を開くのは、もしかしたら佐賀県からかもしれないと、これは長大な夢ですけれども、いや、あながちできなくもないかなと、これまで佐賀県というのはいろんな新しい扉を切り開いてきた県でありますから、ということを考えております。
 今、佐賀県が取り組んでいる施策というものも、これはある部分ほかにもある取組でもありますけれども、スマート農業の推進ですとか、自動運転モビリティの導入と、これは吉野ヶ里のほうで、もうそろそろ始まると思います、もう実証はしておりますので。ということですとか、JAXAと連携して衛星データの活用ということで、これもせんだってフィンランドに行ってきましたけれども、おおむね我々も割と最先端のことをやっているなという自負を持ちましたし、ドローンの活用についても、これは鹿児島なども島と行ったり来たりとやっているようでありますけれども、我々もせんだって多久に行きましたら、老若男女みんなで、「空の道」で薬を送ろう、新聞を送ろう、今度はおすしを送ろうとか、いろいろ楽しそうにやっておりましたので、ああやって住民の中でそういう使い方を考えられるというのは、これも佐賀らしい取組かなということで、非常に感心した次第であります。
 八月二十六日ですが、デジ田応援団という国の構想を支えているメンバーが佐賀に集結しまして、これはそれこそ先ほど言った村井さんとか藤原さんが呼びかけてくれたからではあるんですけれども、その中で五つのセッションがあって、スポーツ、コスメ、農業、それから新産業、地域資源という五分野でセッションが開かれました。
 いろいろ意見が闘わされたそうですけれども、香りが人に与える効果といったものを数値化したらいけるんじゃないかなんて議論もコスメ分野では行われていました。これまで考えられないような様々な地域課題解決のためのセッションが行われたと思います。
 そして、翌日の二十七日には、御紹介いただきましたように、インターネットの父と呼ばれる慶応の村井純先生、この先生が佐賀に関係がある、北波多の炭鉱のところから出てきたというのはもうびっくりしましたけれども、それに有田がルーツの藤原洋先生、この先生もまさに起業家としてネットを推進していった第一人者で、やっぱりこういうような人材というのは佐賀がルーツなんだなというのを非常に誇らしく感じましたし、佐賀が呼ぶということだから、行く行くということで、お二人とも二つ返事で来ていただきました。
 それで三者で鼎談を行った中で、御案内いただいたように、実証フィールドをつくって、新しい社会システムを佐賀からつくっていこうじゃないかということで意気投合したということでありますから、我々もその実証フィールドができやすいように、様々な障壁を取り除いていくということも大事だろうというふうに思っています。最先端を走る企業、人材を呼び込んで、佐賀の人材との連携によりましても、ぜひ新しい試みにチャレンジしていきたいと思います。
 そのためには、全てのフィールドを実証フィールドにしていこうということですから、例えば、SAGAサンライズパークも「成長していく施設」と位置づけて、今考えている中では、AIを活用した映像の編集、撮影、そして、5G等の高速通信によりまして、臨場感のある映像の撮影と配信をやっていきたい。そして、トイレ、駐車場の混雑状況というのは、アプリで住民の皆さん方、御来場の皆さん方が常に分かるようにしていく、自動運転、ロボットを活用した来場者の御案内などなど、開発、実証に取り組んでいきたいというふうに思います。

 DX脳を持つ、または技術を持つ多様な人材が佐賀県に集結し、佐賀県全体が実証フィールドとなり、様々なチャレンジが生まれると、そうした環境を整備していきたいと考えております。
 トライアルやアップデートを繰り返しながら、デジタルで地方創生を起こし、人の持つ本質的な価値を大切にしながら、次の世界につながるローカルハブを目指していきたいと考えています。

 

 

(再質問)下田:今やっている取組は、それこそ様々な部とも連動しながら、私も数年前、スタートアップで見ていたものが、今まさに使われようと、活用されようとしている。そういったものも今事例の中に知事から挙げていただきましたが、プラスアルファ、もっと県民を巻き込んで、さらにわくわくするような仕掛けというのが私は答弁としていただきたい。
 なぜならば、やはり今、知事も私たちと同様、任期のはざまであって、政策論争をやっぱりするべきだと思っています。当然、知事は毎回のごとく私たちも話は聞いていますが、今回の状況において、やっぱり知事は多くの信任を得ているからこそ今の状況にあるというふうにも思っていますが、政策論争をもっともっとしていくことが今の時期だからこそ大切だと思っています。
 そこで、村井先生からいただいたようなお話を含めて、今後さらに県民に向けてこういう政策をやっていくんだというものが、今以上により具体的にスケールを持って活動できるような提案をいただいていたというふうに私は認識していますので、知事の中でこれはできそうだとか、こんなことをもっとやりたいんだとか、そういった具体的な事例についてどのようにお考えなのかという点について、一点お尋ねをさせていただきたいと思います。

 

36◎山口知事 登壇=下田議員の再質問にお答えします。
 村井さんから大分示唆もいただきました。各種あったんですけれども、私が一番刺さったところというのは、やはり教育の部分です。これまでのような画一的な教育をやって、小・中・高という形で一定の水準をマスターしていくということでは新しい時代に太刀打ちできないということで、理系と文系がもっとお互い融合しなければいけない。特に佐賀県の場合は農業高校、工業高校、商業高校がすばらしいので、そこがもうちょっと実業という意味で横の連携がなされてもいいんではないのかという話もありました。
 そんな話を受けながら、フィンランドに行ったら、先ほど政策部長が話したとおりです。ああ、そうかと。小学生がふだんから大学のキャンパスに行って大学の研究者と一緒に議論しているんだなというところが結構びっくりで、そういうふうに全く違う考え方で教育というものを考えたならば、やはりこれまでの延長線上にはないのかなというふうに思いましたので、これから私も県民の審判を仰ぎに行くわけですけれども、一つの柱として、何度か答弁させていただきましたけれども、大学、それから高専とか、そういった機能をこの佐賀県にどう持たせて、それを小・中・高とどのようなプログラムで一体化していくのかということに関しては、もちろん今、国のルールもありますけれども、我々が率先してできる、まさに実証フィールドをしていく中で、この分野においては村井先生の話も承りながら前へ進めていけるところかなというふうに思ったので、ちょっと今ここで全てつまびらかにするわけにはいきませんけれども、そういったところで大きな施策を打ち出していきたいと意欲に満ちております。

 

 

2産業DXやスタートアップの取組について
 続いて、産業DXやスタートアップの取組についてお尋ねをします。
 産業労働部にDX・スタートアップ推進室ができて二年半がたちました。産業DXの推進やスタートアップの発掘、育成についてどう取り組んでいくかなど、私も質疑を通して何度となく議論をさせていただきました。
 先日出席した会合の冒頭挨拶で、主催団体の会長から、佐賀のDXは全国的にも進んでいるという声を東京で耳にしたというようなことを言われておりまして、大変誇らしく感じたことがありました。また、スタートアップ関係では、十月の下旬に静岡県の県議会議員が訪問されたり、青森県の弘前大学からの依頼で講演を行ったとも聞いております。さらには先々週の水曜日には佐賀大学の経済学部学生約二十名が産業スマート化センターを訪問し、県の取組の紹介や意見交換を行ったとのこと。また、四月からは佐賀新聞で毎月一回、起業家の連載が始まるなど、DXやスタートアップについてメディアでもしばしば目にする機会が増えているとも感じております。
 全国的に取り組んでいる時流の政策であるとはいえ、ほんの数年前までは県民はおろか、庁内ですらこういったことへの認知や理解がほとんどされていなかった状況から、一気に全国的にも認知度が高まったという時代の流れを見ていると、世の中の変化の速さを実感しているところです。
 ただ、このDXやスタートアップが、佐賀の産業経済を牽引する力強く特徴的なものとなっているかと問われれば、まだまだであるとも感じます。
 一方、国では新しい資本主義や経済財政運営と改革の基本方針などにおいて、このDX、スタートアップ、それぞれを政策の基本的な柱として度々掲げており、今後も重点的な推進を図っていくということです。そうであれば、佐賀県でもなお一層力を入れていく必要がありますし、さきにも述べたように、佐賀県の政策が県内のみではなく、県外からも注目されるという声を聞くからこそ一層の注力が必要であると考えます。
 そこで、次の点についてお尋ねをいたします。
 まず、
産業DXの成果と課題についてであります。
 
産業DXの推進に当たっては、県では平成三十年に全国でも初めて佐賀県産業スマート化センターを開設し、セミナーの開催やショールームでの体験を通した普及啓発、県内企業とIT企業のマッチングによる導入支援などに取り組まれてきました。
 その後、DXを担う人材育成のため、「SAGA Smart Samurai」及び「SAGA Smart Ninja」という二つの講座が設けられています。
 さらには、今年からはDXコミュニケータ及びDXアクセラレータを通じて、専門家や県職員が企業の現場に出向き、DXの裾野の拡大にチャレンジをされております。これらの取組について、その成果と課題についてお尋ねをいたします。

 次に、スタートアップの成果と課題についてお尋ねをいたします。
 スタートアップの発掘、育成については、令和元年度から第一線の起業家や投資家、コンサルタントが、例えば、ビジネス創出や資金調達、ビジネスマッチングなどのようなテーマで、県内の起業家を直接、そして個別に指導するプログラムを順次拡充されております。
 また、ふるさと納税やクラウドファンディングなども活用して、起業家自身が先々、民間からの資金調達ができるようになることを意識した資金調達支援も展開がされております。
 さらに、このような取組には、例えば、福祉分野で事業を営む方なども参加されており、今まで考えられなかった違う分野の方々が垣根を越えて挑戦されていることを見ると、佐賀県から分野を超えた新しい広がりが感じられ、その将来にさらなる発展の可能性があると期待もしております。
 
佐賀県という企業や起業家の数が決して多くはない地域だからこそできる佐賀型のスタートアップ支援、その成果と課題についてお尋ねをいたします。
 最後に、今後の方向性についてお尋ねをします。
 産業DX、スタートアップ、このいずれにしても、成果とともに一定の課題もあると思いますが、国でもこれが重要な政策課題となる中、さらに一層の高みを目指して挑戦をしていかなければならないと考えております。
 そうしたことを通して、この二つのテーマがいずれは佐賀の産業経済を力強く特徴づけるものとなって、昨年度は聖地という言葉を冠した予算案が上程されましたが、まさにこのスローガンだけではなくて、デジタルや起業にチャレンジするのであれば佐賀と言われるようにならなければならないと思っております。
 様々な資料を見ていると、やはり大都市である福岡の圧倒的強さを感じる場面があります。しかし、佐賀ならではの個性を発揮して、佐賀を選んでいただける、そのためのこれからの事業構想が必要になってくると思っております。
 事業に関して成果は出ていると思いますが、
佐賀県が次世代を牽引する聖地となり得るためには、現状、手を挙げてくださっている方々にとどまらず、さらなる参入者を見いだすとともに、様々な業種や投資家の方々をも組織化して、次の一手をさらに展開していかなければなりません。このような点について、産業労働部長の所見をお伺いいたします。

 

33◎寺島産業労働部長 登壇=私からは、産業DXやスタートアップの取組について三点お答えをいたします。
 まず、産業DXの成果と課題についてでございます。
 産業DXにつきましては、先ほど議員から御紹介ございましたように、平成三十年の産業スマート化センターの開設を皮切りに、普及啓発と導入支援、そして、県内企業による事例の創出、さらには、担い手となるDX人材の育成などに取り組んでいるところでございます。
 そして、これらの取組につきましては、まず、産業スマート化センターの利用者数でございますが、通年運営となりました令和元年度が延べ約千五百名でございましたが、昨年度は延べ三千百名と倍増をしております。また、このセンターでのマッチングなどを通じた県内企業のデジタル技術の導入件数は、令和元年度の四十一件から昨年度は八十六件へと、こちらも倍増をしております。
 また、議員から御紹介いただきました「Smart Samurai」や「Smart Ninja」への応募につきましても引き続き堅調でございまして、今年度は、合わせて二百名の定員に対し、約九百七十名の応募があったところでございます。このように、各事業においても一定の成果が見られているところでございます。
 また、こうした取り組みの結果、様々な業種、業態でDXの取組例が出てきております
 三つ御紹介をさせていただきたいと思います。

 まず一つは、従業員十名ほどの建設会社のお話でございますが、紙の帳票を全てデジタル化したことによりまして、以前は毎日八時間かかっていた事務作業が一日三十分、しかも、在宅ワークでこなせるようになった例。
 二つ目は、従業員五十名ほどの製造業の企業でございますが、画像認識を用いて製品検査を自動化したり、IoTで生産工程のデータを自動で取得、そして、従業員みんなで共有し、改善に取り組む仕組みをつくり上げた例。
 そして三つ目は、この議会の農林水産商工常任委員会でも御視察をいただきましたけれども、従業員百七十名ほどの物流企業が、倉庫作業などにボイスピッキングやハンディターミナルなどのデジタルデバイスを導入し、作業の省力化や人件費の節減を実現した例などがございます。
 しかしながら、現時点では、こうした機運や取組といったものは、まだ一部の意欲や関心の高い企業に限られております。そのため、今年度から、御紹介いただきましたけれども、専門家や県職員が企業に出向いて啓発や支援を行う取組に着手しておりまして、引き続きその充実強化を図り、DXの裾野拡大に取り組むことが必要であるというふうに考えております。
 次に、スタートアップの成果と課題でございます。
 佐賀だからできるスタートアップ支援といたしまして、個別指導プログラムによるビジネスの創出と磨き上げ、民間資金の調達を意識した資金調達支援などに取り組んでおります。

 その結果、例えば、取組を始めた当初は、佐賀でスタートアップと言ってもなかなか反応が思わしくございませんでしたが、今では毎年夏のキックオフイベントですとか、冬の成果発表会には百名以上の方の参加がございます。そのようになってまいりました。
 また、個別指導プログラムにつきましても、毎回採択枠を超える応募がございまして、最近では県外からも起業家の応募があっているところでございます。
 そして、地元紙におきまして起業家の連載が始まったり、また、県外からの視察や講演の依頼も寄せられているなど、県内での機運醸成、また、県外での認知度向上といったものが見られるようになってきております。
 このような中から、最近では例えば、中小企業とNPOとをSDGsをテーマに橋渡しするサービスを考案された起業家が、九州各県主催のコンテストで優秀賞を受賞されたり、離島の地域資源をオーガニックのコスメ原料として加工・供給する起業家の方が、全国の女性起業家のコンテストで大賞を受賞されたりといったような例が出てきておりまして、県外で評価される起業家も出てきているところでございます。
 このように、有望な起業家が輩出されるようになってきはしたものの、より大きなビジネスとして花咲かせるまでにはまだ至っておりません。そのため、今後は、資金調達のさらなる円滑化、そして事業拡大に向けた組織づくり、全国や世界へ向けたさらなる認知度向上など、一層の取組強化が必要であるというふうに考えております。
 最後に、今後の方向性についてでございます。
 これまで部内にDX・スタートアップ推進室を創設いたしますとともに、産業DXの分野ではデジタルを佐賀のビジネスの常識に、そして、スタートアップの分野では世界を目指せる聖地にといった高い目標を掲げチャレンジをしてきているところでございます。
 そうした中、例えば、このDX・スタートアップ推進室の取組ですとか、あるいはその室が支援した企業や起業家がメディアに取り上げられた件数といったものは増えておりまして、令和二年度は約三十件ございましたが、令和三年度は約六十件、そして、今年度は既に現時点で七十件を超えているといったように、毎年倍増の勢いでございまして、急速な注目度、また、機運の高まりが見られるところでございます。
 二年半以上にわたる新型コロナの感染拡大やウクライナ危機による国際情勢の緊迫化などを背景に、県内の企業、産業は極めて厳しい状況に置かれております。
 このため県として、県民の雇用や所得の基盤をまずは維持保全するという観点から、止血剤的な支援策というのを講じてきておりますけれども、一方でそういったものと並行して県内経済を将来にわたって成長発展させていくには、様々な環境変化をチャンスと捉え、イノベーションに挑む企業や起業家を見いだし、後押ししていくことも必要でございます。
 その際、大切なのは、国が言うからですとか、あるいは他県がやっているからということではなく、それぞれの職員が企業や起業家の下を訪問し、いろいろな意見交換をする中から、その実情、あるいは課題といったものを見いだし、かつ将来どのような方向にしていくべきなのかといったことについても想像を巡らせながら、自分の頭で考えて政策にしていくということが非常に大切でございます。
 そうした考えから、人と人、そして、企業と企業とのつながりなど、佐賀の強みを生かし、企業や起業家それぞれにフォーカスした、佐賀だからこそ可能な方法論といったものを大切にして、産業DXやスタートアップをはじめ、県内産業の振興や企業の成長支援に取り組んできているところでございます。

 こうしたことを通じて、例えば、県内企業がデジタル技術を当たり前に使いこなし、わくわくするような革新的なビジネスが次々と生み出されるでありますとか、佐賀を拠点に全国や世界で活躍する起業家が次々と輩出され、それを呼び水に起業を志す者の層が広がっていく、こういった未来の姿の実現に一歩でも近づけるように、一歩ずつ近づいていけるようにということで、イノベーションにチャレンジするのであれば佐賀といった県内外の評価の確立へとつながりますよう、これからもしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 私からは以上でございます。

 

 

 

3不登校とオンライン授業の活用について
 続きまして、不登校とオンライン授業の活用についてお尋ねをいたします。
 この不登校に関しては、私で四人目の質問となります。今回、いじめ、不登校の人数が過去最高になったという公表があったことからも、関心の高い社会問題となっております。
 令和三年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」が公表されて、全国の不登校とされた小中学生はこれまでで最多の二十四万人、佐賀県においても全国同様、過去最多の不登校児童生徒数という結果が出ておりました。これは、非常に苦しい時間を送っている子供たち、またその御家族が年々増え続けているということであり、恐らく学校の先生方ももどかしくつらい思いをしていらっしゃるのではないかと推察をしております。
 増え続ける不登校の主たる原因は、無気力・不安が約五〇%とのことですが、私は学校制度そのものが現在の社会に合わなくなってきており、その弊害が不登校という形で現れているのではないかとも感じています。
 先日、ある高校三年生の不登校生徒の保護者から相談があり、この保護者とともに学校に対応をお願いしたところ、この高校では初めてのケースとして校内の教室以外の別室でオンライン授業を受けられることとなりました。ただ、この生徒さんは起立性障害と診断されており、学校に行きたくても行けないというつらさを抱えながらも、卒業するために投薬しながらでも行かざるを得ない状況であって、生徒本人も行かなきゃと思うけど、行けない。みんなと同じように教室に入って授業を受けたほうがいいと思うけれども、それが、体調が悪くて難しいと言っておりました。親としては、何とか高校は卒業させたいという思いもあって、この生徒はそのようなはざまの中で、ぎりぎりの選択をして別室に通っているわけです。
 生徒の状況に合った支援が大前提ですが、周囲からはドロップアウトしたと思われないかとの保護者の心配や不安はもっともであって、現に今の社会では高卒の認定がなければ就職も不利な状況になる現状があって、このようなことも含めて、不登校に対するネガティブなイメージがこうした状況を生んでいると考えております。
 一方、高校でのオンライン授業は、小中学校と違い、教室と生徒のその部屋双方に教員の配置が必要という制度になっています。私は今日の社会はコロナ禍を経てリモートが当たり前となっており、技術的には容易なのに、制度上それができず、別室に教員がいないとオンラインでの受講は授業の出席時数として認められないということは、私は全く理解ができません。国が定めている制度ですので仕方がないことですが、何とか一歩でも学校に来てほしいという行政側の思いも一定理解はしますが、今の状況は生徒たちの苦しみをいたずらに増やしているようにさえ感じます。
 さらに言うと、ある精神科のドクターからは、このドクターの病院に同じ高校から患者が二十人通っているということで、高校生の心の状態を非常に危惧しておりました。
 増え続ける不登校の原因の大半は無気力や不安が五〇%、突き詰めると分からないというような認識です。しかし、一つ言えるのは、先ほどのSociety5・0の時代に向かう中、学校の制度そのものが疲弊しており、現状に合っていないからこそ、声なき声が不登校という形の叫びとして現れているという一面があると感じています。また、無気力や不安のために学校に行かないということだけではなくて、学校へ行く価値が見いだせない児童生徒がいることも視野に入れて取り組むべきではないかと考えます。
 明らかに子供たちのほうが、圧倒的に変化する社会のスピードに敏感なのは間違いがありません。しかし、学校そのものが劇的に変化している社会に追いついていない現実もあると感じています。私が対応した生徒は、学校に行きたくない、行けないと言っているのに、卒業するために苦しみながら学校に行く。また、今議会の答弁にもありましたが、行政としては、例えば、不登校特例校やフリースクールなどの居場所づくりをはじめ、学校内に様々な福祉的資源を拡充して、私自身も過去にスクールソーシャルワーカーの拡充について質問をさせていただきましたが、あらゆる手段を用いて子供たちの成長に寄り添う支援を徹底的に行っています。
 さらに重ねて言わせていただくと、あえて端的に申し上げますが、これだけ支援を拡充しているにもかかわらず、たとえコロナ禍といえども、少子化が進む中で不登校の人数が増え続けているわけです。このことを社会として、県として、これを課題と捉えているのであれば、この不登校への対策はもはや政策として間違っているわけで、根本的に不登校の捉え方を見直し、学校の制度の在り方そのものを見直さなければ、そのうち子供たちのほうから学校を見限っていく、そういう状況にもなるのではないかとさえ感じています。
 つまり、学校に行かない、行けない、行きたくないと言っているのに、このことまで否定されて学校に行かざるを得ないという状況は、もはや不幸しか生まない、そんな循環に陥りつつあるのではないかとさえ感じてしまいます。これらのことは、制度をつかさどる国の動向によることが大きいことは理解をしておりますが、佐賀県としてどのように考えているのか二点お尋ねをいたします。
 まず、
不登校についてであります。
 不登校は、問題行動と定義されるわけです。学校現場では、以前に比べるとかなり柔軟な対応がなされていると認識はしておりますが、
この不登校というネガティブな言葉から児童生徒や保護者が悪い印象を持ったり、罪悪感を持ったりしないか危惧をしております。こういう負のイメージや罪悪感を持たずに、例えば、言い方を変えるなど、家庭内学習支援とか、学校外学習生徒とか、これがふさわしいのか分かりませんが、そのようなイメージを払拭するような取組を含めて、全ての児童生徒が自分らしく生き生きと活動することが大切と考えますが、この点について教育長の考えをお伺いいたします。
 続いて、高等学校におけるオンライン授業についてであります。
 
義務教育の小中学校とは異なって、高等学校は、オンライン授業を実施しても、受信する生徒側に教員を配置していないと授業の出席日数、出席時数に認定されないという制度になっています。不登校においては、一人一人の状況にも当然よりますが、高校生は自分の家で、オンライン上で顔出しをすることで授業を受けることはできるはずです。
 これから個別最適化された教育に向かう中、教員を配置せずとも出席時数として認めるように、国に制度改正を要望するべきではないでしょうか。現状の制度について、国及び県はどのように考えているのかをお尋ねいたします。

 

◎落合教育長 登壇=私には大きく二問、問いをいただきました。
 まず、不登校とオンライン授業の活用についてお答えをいたします。
 不登校について、議員のほうからは、言葉自体にネガティブなイメージがあるのではないかという御指摘もありました。
 不登校は法令用語であり、一般的にも使用されておりますので、その言葉自体、特別な意味を持って我々は使っているわけではありませんけども、議員からありましたように、児童生徒が負のイメージや罪悪感を持たずに、自分らしく、生き生きと活動してほしいということについては私も全く同意見であります。
 不登校については、学校に行かない時期が休養や自分を見詰め直すなどの積極的な意味を持つこともあります。一方で学業の遅れや進路選択の不安、そういったことがあることも事実だろうと思います。
 そういった認識の下、県教育委員会では、児童生徒の学校復帰だけを目標とするのではなく、社会的な自立を目指して一人一人の状況に応じた支援を行っているところであります。
 議員のほうからは、様々な支援策を打つ中で不登校の数がこれだけ増えるのは政策的効果が上がっていないのではないかという御指摘もありました。
 我々、何年か前までは、不登校児童生徒数を減らすこと自体を目標に、成果指標にもしておりました。ただ、やはり様々な事情で学校に来ない、来ることがつらい児童生徒がいる中で、学校に登校することを目標に取り組むのではなくて、そういった子供たちの将来的な社会的な自立を目指して、それぞれの児童生徒の状況に応じた支援をしていく必要があるのではないかというふうに考えまして、令和二年度からは、学校内外の機関等において相談指導等を受けた児童生徒数の割合を成果指標として取り組んできたところであります。
 令和三年度の成果としては、佐賀県においてはその割合というのは八割を超え、全国の約六割に比べると大きく上回っておりまして、佐賀県においては一定の成果を上げていると私は思っております。
 次に、高等学校におけるオンライン授業についてお尋ねがありました。
 学校教育法施行規則第八十八条の三において、高等学校では多様なメディアを高度に利用して、教室以外の場所で授業を受講させることができるとされています。ただ、御指摘があったように、その中でオンライン授業を行う上での留意事項として、受信者側には原則教員を配置するべきとされております。こういった規定の中では、自宅においてオンライン授業を受講するというのは、授業としてカウントする形ではなかなか難しいというのが現状です。
 県教育委員会としましては、不登校児童生徒へのオンライン授業につきましては、学習意欲はありながら登校できない生徒が、中途退学や留年、転校することなく、円滑な学校復帰や社会的な自立を目指す有効な手だての一つだと考えております。
 これらを踏まえまして、県立学校においても、不登校で教室で授業が受けられない児童生徒に対して、校内の別室ではありますけども、オンライン授業を実施しております。現在、国のほうでは特例として、病気療養中の生徒に対しては、教員の配置は必ずしも必要としないとされています。私としてはこういう特例的な対応ではなくて、感染症や災害はもとより、その他様々な事情で登校できない生徒についても、学ぶ意欲があれば教員の配置がなくても柔軟に出席時数として認めるべきではないかと考えております。
 県教育委員会としては、不登校や様々な事情で登校できない児童生徒の個々の状況を踏まえ、円滑な学校への復帰や社会的な自立を目指す手だての一つとして、引き続きオンライン授業などを実施していくとともに、国に対しても柔軟な対応を求めていきたいと考えております。

 

4これからの学校について

 

 続いて最後の質問、これからの学校についてお尋ねをいたします。
 ここで少し学校バージョンということ、この考え方について説明をさせていただきます。
 これは広く認知されている言葉ではないようですが、文部科学省が定義している言葉です。先ほどソサエティーの話をしましたが、日本のSociety3・0の産業革命期に当たる明治維新からが学校ver・1・0、日本で義務教育が始まったのは明治四年からで、西洋に追いつけという形、Society3・0の工業化に対応するために義務教育が始まったとも言えます。江戸時代には佐賀藩のような先進的な学校は一部ありましたが、藩校はあっても義務教育はありませんでした。明治時代は、一般的には工場など近代的な産業に従事できる子供を育てようという考えで、これが我が国の学校制度の始まり。また、当時学校が求めた人材は知識重視、一斉授業、忍耐強さなど、これがもともと学校が求めた最初の教育でした。その後、戦争も乗り越えて、一九六〇年代に受験戦争時代、校内暴力が表面化して問題化し、今議論になっているような厳しい校則や生徒指導が波及したという流れになります。
 そして、その反動もあって、子供たちにゆとりを取り戻そうとして、一九九〇年代にゆとり教育が始まりました。このタイミングがSociety4・0の始まりであって、学校ver・2・0の始まりです。先ほども御紹介させていただいた村井先生が先頭に立って、世界にインターネットが普及した時代で、情報にどんどん価値がなくなっていった。つまり、学校ver・1・0での一斉授業や知識重視というものがどんどん意味をなさなくなっている時代の流れ、その中でゆとり教育が重視された学校ver・2・0の学習の時代、能力重視のカリキュラムや受動的ではない、主体的な学びに取り組んでいけるアクティブラーニングということが言われるようになりました。入試も知識重視から考える入試になってきました。協働や対話を通して納得感を見いだすということで、学習指導要領も変化してきているのが一九九〇年代から二〇〇〇年代。
 そして、Society5・0時代に向けてまとめられているのが今の学校ver・3・0。個々人に応じた学びの実現を支援する個別最適化された学び、価値を見つけ、生み出す感性と力、好奇心、探究心などを育てることで予測不可能な時代に立ち向かっていくことができる人材育成に取り組むこととして、二〇二〇年度より新たな学習指導要領が小学校から段階的に実施され、GIGAスクール構想に代表されるような取組で新たな社会を牽引する人材育成が行われております。
 しかしながら、学校現場に目を向けると、これだけICTが発達した社会にあっても学校に行くことが大前提で、黒板に向かった授業スタイルが当たり前で、学校や先生によってはICT活用能力についても差があるなど、ICT活用だけではないですが、今のままで子供たちにSociety5・0時代を生き抜く力を身につけさせることができるのか、ここはしっかりと議論すべき点だというふうに考えております。
 
人口減少社会の中で不登校の児童生徒数が増え続けているのは、今の学校制度が時代に合わなくなり、疲弊している表れではないだろうかと、さきも述べたとおりに感じているところです。
 不易と流行という言葉になぞらえると、不易はどんなに時代が変わっても決してその価値が変わらないもので、人の根っことなるところ、つまり、豊かな人間性などを育むことなどは決して変えてはならないことであり、このことは、教育では勉学の以前に最重要視されているところで、知事も言われている人を大切にという言葉とも通じる部分であるとも考えます。また、流行は社会変化に対応していくことです。圧倒的な流行の時代だからこそ、その対にある不易をより強く保つことが必要になります。
 私は、佐賀県がこの流行をどう捉え、不易となる学校や教育の在り方をどう考えているのか、今回はこの点をお尋ねしたいと思っています。
 ただ、決して批判的な話ではなくて、佐賀県の学校現場は特に近年、目まぐるしく改革を行っていることは認識をしており、子供たちの未来に向けた取組が熱心に取り組まれていることは十分に理解をしております。現に今回の質問に当たって資料をいろいろ見ておりましたが、一つの指標として、佐賀県の統計分析課が今年三月三十一日に発表した佐賀県の全国ベストテン二〇二二年版の教育、労働分野を見てみますと、人口十万人当たりの高等学校数は九州一位で全国八位、高等学校定時制課程、専修学校在学者一人当たり及び一学級当たりの経費は全国一位、コンピューターの設置状況及びインターネットの接続状況も義務教育、高等学校もほぼ全てで全国一位、また、高等学校のデジタル教科書の整備率も全国一位、遠隔教育実施率は九州一位で全国で八位、これらの項目は特別支援学校でも全ての項目で九州一位で、全国でもトップクラスです。また、教員のICT活用指導力の状況もかなりの項目が全国五位以内にあるとともに、社会教育や生涯学習における費用支出においても、佐賀県は全国ベストテンに入っております。
 これらのデータからも、目まぐるしいスピードで社会が変化していくSociety5・0時代に向けて、全国的に見ても佐賀県教育委員会はまさに全力で子供たちのための教育環境の推進を行っているということは、自信を持って言ってよいと思います。しかし、現場には変革していかなければならない課題があるとも感じています。
 例えば、個別最適化というのであれば、黒板に向かって一斉授業を受けたい生徒、ICTを活用したオンライン授業を受けたい生徒、塾で講義を受けたい生徒、自習で勉強したい生徒など、それぞれの対応ができるだけの環境が佐賀県には既にそろっていると認識しておりますが、まだそれを実施するまでには至っていません。また、勉強すればすぐに偏差値が上がるような子もいれば、特定の分野で大学院生とも対等に議論ができるほどの知識と探究心を自ら身につけているような子もいます。また、勉強なんかできなくても人から愛される才能を持った子もいます。このような多彩な子供たちが、個別最適化の中で単にタブレットを支給されて先生の一括指導にとどまるだけではなくて、自分の成長とともに自ら教育を選べる、その選択肢を提供できることがこれからは重要になってくると思います。
 また、大学の入試においても、国公立大学を含め、年々合格者割合が多くなってきているのが総合型選抜入試、かつてのAO入試であって、社会から求められている人材も今までの偏差値重視から大きく変化しています。
 現状を見ると、加速度的に変化している社会に対応するには、今以上のスピードで取り組まなければ学校が時代に取り残されるのではないかと危惧しております。いわゆる普通科というコースがありますが、こういうのが当たり前に存在する高校のコースも、普通の定義をしっかりと明確にしないと、もはや、個性重視と言われる時代の中では誤解を招くこともあると感じます。また、そもそも校舎も必要なのか、そんな時代も来るかもしれません。
 そして、飛び抜けた個性ある一人から何かの事業が起こったとしても、一人で進めることはなかなか厳しいものがあるでしょう。だからこそ、学校という学びの場はとても重要であって、人間としての成長を通して自分の原点を確立し、仲間たちや先生方、そして、地域の方々などとの関わりを通して、共感や信頼のマネジメントを学んで、予測不可能な時代を生き抜く力を身につけ、社会に巣立っていくという、今まで以上に学校の存在価値が求められてくると考えています。
 そこで、学校や先生方には、今のままの教育のやり方についてのさらなる意識改革がやはり必要であるし、国に対しては、これからの教育制度の在り方について、積極的に政策提言を行うなどしていく必要があると思っています。Society5・0を生き抜く力を身につけさせなければ、困るのは子供たちであって、今の教育システムを進化させなければならないと考えています。
 以上の考えを基に、
これからの学校についての教育長の思いをお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)

 


 次に二問目です。これからの学校についてという非常に大きな問いをいただきました。
 議員の質問を、演説を聞いておりまして様々思いが巡りまして考えがまとまりませんけれども、自分なりにお答えしたいと思います。
 私は教育長になって、今、丸三年たった状態ですけれども、この間、佐賀県の教育や学校のアップデート、さらにはバージョンアップというのを目指してチャレンジをしてきたつもりであります。
 令和四年度でいけば、これまでの方向性を大きく変える、ハンドルを切る取組、あるいはアクセルを踏んで加速するような取組を特出しして、重点プロジェクトとして、「唯一無二の誇り高き学校づくりプロジェクト」、「プロジェクトE」、「部活動改革プロジェクト」、「さがすたいるスクールプロジェクト」、そして「人材確保プロジェクト」と、五つの重点的なプロジェクトに取り組んでいます。
 これら以外にも、目に見えている動き、あるいは成果が見えているもの、見えていないもの、様々な取組を行っておりますけれども、こういったチャレンジは来年度以降もさらに強化しながらやっていきたいと考えています。

 

議員のほうからは、Society5・0、超スマート社会と言われる社会の中で学校をどうしていくのかという問いかけがありました。大きくリアルな学校としてどうなのかということと、ICTを利活用してバーチャル、あるいはオンラインとか遠隔においても、誰でもいつでもどこでも教育を受けられる、そういう大きな方向性があるのかなと考えます。
 社会の在り方が大きく変わるSociety5・0と呼ばれる新しい時代になったとしても、子供を認めて褒めて伸ばす教育を推進し、佐賀の子供たちが自ら課題を発見して考え判断する、そして、どんな困難にも立ち向かっていくことができる骨太でたくましい子供を、学校だけではなくて地域とともに育てていくという、こういう教育の根幹というのは変わらないだろうと私は思っています。
 子供たちが登校して授業を受ける。友達や先生と会って、話し、学び、あるいは部活動で頑張る。言わば、こういうリアルな学校活動というのは、学校教育の一面での本質的なものであり、その役割は重要で、これからも継承していくべきものと考えております。
 一方、誰もがいつでもどこでも自分らしく学ぶ、先ほど教育のバージョン3・0とおっしゃいましたけれども、それは学びの時代と言われています。ちなみに、バージョン1・0は勉強の時代、2・0は学習の時代と言われていまして、バージョン3・0は学びの時代と言われていますけれども、そういった時代を実現するためには、それぞれの子供に応じた指導や個別最適な学びを推進することが重要でありまして、その手段としてICTをフル活用するということは不可欠なんだろうと思います。
 その点では、佐賀県ではいち早く県立学校で一人一台パソコンを実現し、ICT活用教育のトップランナーとして様々な取組を先進的に進めてきたと自負をしております。その成果については先ほど議員からも御紹介をいただきました。ありがとうございます。
 子供たちがICTツールを活用しながら、自分自身がやる気を持って果敢にそれぞれの課題を解決していくような学びを実現したいと考えています。
 これからの新しい時代にあっては、子供たちが佐賀県への誇りを胸に、未来の佐賀県や世界でたくましく活躍できるよう、佐賀県で学んでよかったと思われる学校づくりに取り組み、子供たちを全力で応援してまいります。
 私からは以上です。

 

37◎下田 寛君 登壇=最後の一般質問なので、ちょっと何とかさせていただきたいと思いました。
 今、知事から高校、大学等との連携というお話をいただきました。
 そこで、教育長にお伺いしたいんですけれども、こういったお話、部局をまたいで当然されることになると思うんですけれども、やっぱり部局が違うとどうしても議員という立場で組織の縦割りというところ、佐賀県はかなりハードル低くやっていただいているのは認識しておりますが、ぜひとも知事部局と教育部局、しっかりと連携を取って、これはやっぱり県民にとって、子供たちだけじゃなくてみんなにとっていいことですので、一緒に議論していただきたいと思いますが、いかがでしょうかと最後にお尋ねをして、質問を終わりたいと思います。

38◎落合教育長 登壇=下田議員の再々質問にお答えいたします。
 日頃、教育につきましては、知事とは公式な場では総合教育会議という場で議論させていただいていますし、それ以外にも様々な場で佐賀県の教育について御意見を伺ったり、私のほうから述べたりしているところでございます。
 今後のそういった大きな動きについても、しっかり意見交換させていただきながら進めさせていただきたいと考えております。
 以上です。