松井今朝子 「道絶えずば、また」
4年に1度のこの日に、この作品をご紹介できるのがとても嬉しいです![]()
花伝書シリーズ3作目。 遂に最後です![]()
思いあまってかなりネタバレしてますので、内容を知りたくない方はご注意を![]()
名女形荻野沢之丞が死んだ。
一世一代の舞台納め披露の初日、舞台上での事故という亡くなり方に、舞台関係者達は自殺や他殺の
可能性も噂し大混乱となる![]()
大道具方の頭甚兵衛は、事故の原因となった不手際について責められ首をくくってしまう![]()
ところが甚兵衛の遺体を確認した太夫元の勘三郎が、他殺である証拠を発見する![]()
5年前と同じように、仲間内に人殺しがいる・・![]()
仲間を疑う後ろめたさと苦しさを抱えた勘三郎から犯人捜しを託された臨時廻り同心の笹岡平左衛門は、
かつての相棒で今では娘婿の薗部理市郎に調べを頼む。
薗部がまず頼ったのは沢之丞の弟子でごりごりの女形沢蔵。
彼もまた師匠の死に納得できずにいた。
生前の師匠の様子について思いだすものの、大きな手がかりになるだろうある言葉の意味がわからず
頭を抱える沢蔵。
中村座では、沢之丞が跡目を決めないままだったので、おっとりした長男市之介と野心家の次男宇源次の
争いが再燃![]()
力量から宇源次が本命と噂され、生前沢之丞もそう言ったことがあったが、心の弱い宇源次は
父の死に打ちひしがれ、酒におぼれ素行も乱れていた![]()
一方の市之介は黙々と芸を磨き、父に生き写しとまで言われるようになっており、今ではこちらの方が
有力とも見られていた。
自分を見失った宇源次は、芸の道に戻ることができるのか![]()
沢之丞、甚兵衛の事件の真相は![]()
沢之丞の名跡はどちらが継ぐのか
というお話。
1作目から5年後のお話です。
冒頭から衝撃の展開でした
あの沢之丞が死ぬなんて![]()
その死は謎めいていて、悲しいけれど、最後の最後まで役者だなと思いました。
本作のテーマは、風姿花伝の一節「道絶えずば、また、天下の時に会うことあるべし」
たとえ人から見捨てられても、諦めずひたすらに一つの道に邁進すれば、また認められる時が
来るだろう、というような意味です。
技量があり御贔屓さんも沢山ついている宇源次ですが、精神面がとても弱く、
父の死に打ちひしがれて酒におぼれてしまいます![]()
素行も悪くなったので、次第に誰も相手にしなくなり、役者を続けられるのかというところまで
追い詰められてしまい・・![]()
そんな宇源次に向けての言葉です。
あくまで芸に関しての言葉ですが、これは人の生き方にも通じますよね。
2作目でも思いましたが、現代にも通用するテーマだと思いました。
物語の最後で、兄と弟が2人きりで話し合う場面がありますが、そこにとても感動しました![]()
この3部作のそれぞれのテーマが、すべて兄市之介の言葉にまとめられているのです。
今までぼんやりで貪欲さもなかった市之介が、何を考え何と戦ってきたのか・・。
宇源次ばかり注目されてきましたが、彼もまた大きな父を背負って芸の道で葛藤する一人なんですよね。
市之介が一人で静かに積み上げてきたものの重さを感じました。
シリーズ最終作ということもあり、1作目2作目のその後が分かる部分もあり楽しめます。
笹岡平左衛門は定廻りから臨時廻りに、薗部理市郎は見習い同心から本勤めへと役替えになっています。
これだけでも時間の経過を感じますが、なんと薗部は笹岡の娘と結婚しているのです![]()
1作目で何となくそんな気配はあったのですが、1人娘だし無理だな、と思ってたんですけどね。
薗部が相当頑張ったのか縁が結ばれ、密な家族付き合いがなされている様はほっこりと和みました![]()
どこか不思議だった笹岡家の事情についても明らかになっています。
それから、2作目の主人公で平左衛門の姉、瑞江のその後についても知ることができます。
波乱万丈な人生を送っているのですね・・![]()
瑞江は本作で大きな役割を担い、重大な決断をするのですが、それも瑞江らしいな、と感じました。
物語が終わってしまうのはとても寂しいですが、たっぷりした読みごたえと感動的なラストに大満足でした![]()