映画「犬神家の一族」(市川 昆監督 1976年)が、好きだ。
特に何が好きかというと、冒頭から登場する「犬神御殿」。
このお屋敷を観るために、度々、この古い映画を観るといっても過言ではない。
CGで作られた、湖畔に建つ屋敷は、入母屋造りの和館とハーフティンバーの洋館から成る和洋折衷の近代木造建築。
黒光りのする長い廊下でつながった複雑な間取りに魅了される。
うす暗い屋敷内を彷徨いたい気持ちになる。
・・・・病んでいるのか?
さて、スケールは違うが、そんな地方実力者のお屋敷が、県内にも存在する。
「旧 吉松家住宅」である。
(撮影・記事掲載の許可あり)
950坪の屋敷は、石畳の仲町通に面して、ファサードを開いている。
表玄関から次の間を経て、応接室に入る。
20部屋ある屋敷の中で、ただ一つの洋間。
上下窓がいい感じだ。
黒光りする長い廊下、襖とガラス戸の調和。 まさに「犬神御殿!!」
唐津の「高取邸」もこんな感じでしたねー。
あちらは九州の石炭王。こちらは郷土の山林王というところでしょうか?
大正時代のガラス窓が、鈍い光を放つ。
安易にサッシ窓とかに替えられなくて、本当に良かった。
この四隅の暗さ!光と影が交錯している!
ああ!「陰翳礼讃」!
なんてことないガラス窓も なんてことなくない凝りよう!美しい!
襖の模様。異国情緒的な雰囲気が漂うね。
2階建ての内蔵まであります。
横溝正史ドラマのロケに使えそうだ!
2階に上がる階段。手摺の微妙なカーブは1本の木から。
2階から見た中庭。
左棟は接客空間 右棟は生活空間。
使用人は、多い時で、住み込み3人・通い10人計13人が働いていたらしい。
今回の見学は、ガイドがついて40分 みっちり説明を聞いた。
ガイドのTさんご愛用のレーザーポインター付き虫眼鏡
これをかざしながら、細部まで説明をしてくださる。
もと美術教師のTさんは、独特な語り口でガイドをされる。
「私が思うにですね?・・・・」と、独自の推論を展開。論文書けるんじゃあないですか???
建築探偵はここにもいたか!
今回は、知人のOさんの用事にのっかり、片道2時間の遠出だったが、「旧 吉松家住宅」の見学で、充分すぎるほど満足。
帰宅後、久しぶりに「犬神家の一族」を観た。
学んだことを活かし、静止画像にして鑑賞するのは、もちろんお屋敷内部のしつらえである 笑。