<国の除染・広域処理の対処方針と自治体のこれまでの対応>
宮城県は昨年10月がれき置き場のサンプル調査で放射性セシウムの濃度を調べ、11月に公表した。石巻市工業港地区では重さ1キロあたり116ベクレル。可燃がれきに限ると101ベクレルだった(※「ベクレル」とは水や食べ物に含まれる放射性物質の量を表す単位)。測定された県内11市町では下から4番目だった。焼却すれば濃度は最大33.3倍になるが、環境省が定めた基準の8千ベクレルは大きく下回る計算だ。それでも、広域処理の受け入れ先からは強い反発が起きた。三浦(石巻市災害廃棄物対策課長)は「うちの災害廃棄物でも放射能が問題になるのか」と驚いた。(以上、朝日新聞『プロメテウスの罠』「がれきの行方」19)
「震災廃棄物対策指針」という文書がある。1998年、阪神大震災の3年後に厚生省がつくったがれき処理マニュアルだ。そこには「国は広域処理の仕組みづくりを指導する」という趣旨の言葉が書かれている。環境省はそのマニュアル通りに動いた。加えて震災直後、大臣の松本龍から広域処理の指示があった。その結果、広域処理の方針ががっちり固められた。現実はそれどころではなかった。津波でがれきはごちゃ混ぜになったし、放射性物質の拡散もあった。マニュアルで対応できない要素だらけだったのだったのだが、環境省は広域処理の路線を突き進んだ。(以上、『プロメテウスの罠』「がれきの行方」22)
【以下は、『がれき処理・除染はこれでよいのか』p18~19,p68から抜粋】
原発から排出される放射性廃棄物は、原子炉等規制法に基づき、青森県六ヶ所村にある六ヶ所放射性廃棄物埋設センターに運ばれてきた。廃棄物処理法の「廃棄物」か、それとも原子炉等規正法の「低レベル放射性廃棄物」かを区別する基準は、セシウムでは100ベクレル/㎏(IAEA安全指針値)であった。ところが、国は、震災がれきについて、放射性物質汚染対処特別措置法(2011年8月)22条により廃棄物処理法(1970年)の「放射性物質及びこれによって汚染されたもの」に含めないとすることで、廃棄物処理法の「廃棄物」に含めるとともに、その基準を8000ベクレル/㎏に緩和した。原発から排出するものについては、依然として100ベクレル/㎏が基準であるにもかかわらず、震災がれきについては、区別の基準を実に80倍に緩めたのである。そして、震災がれきを「放射性廃棄物」とは呼ばず、「放射性物質に汚染されたおそれのある廃棄物」と呼んでいる。
では、何のためにがれきの処理基準値がIAEA安全指針値を緩めて定められたのか。いうまでもなく、がれき処理基準値8000ベクレル/㎏は、本来、放射性廃棄物として処理しなければならない震災がれきを廃棄物処理法上の「通常の廃棄物」として処理するために行なわれたといえる。
主催:熊本一規さん講演会実行委員会、
連絡先:Eメールkusakaikuo@yahoo.co.jp