四面楚歌
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突発的に。(2)

うーうー、と服を取り出しては睨み付け、そこいら中に並べていくお姉ちゃん。

・・・ちゃんと片づけてよ。まぁ元から散らかってたけどさ、私の部屋・・・。


「よしっ、このピンクのキャミと白いスカートで行く!」

「上はキャミだけ?寒いんじゃない?」

「うぅん、・・・じゃこのベージュの上着を羽織ることにしようかな。・・・ね、これで良いよね?!」


---私に同意求められても。


「お姉ちゃんが良いと思う服なら良いんじゃないの」


ちっがーう、私は私のセンスに自信がないから、君の意見を参考にしてるの!

と、やたらとテンション高く反論してきた。

何て言うか、お姉ちゃんは何か良いことか悪いことがあると、非常にテンションが高くなる。

今回はあれだ、きっと---。


「私はその服で良いと思うよ。・・・似合ってるし、可愛いし。燈兄ちゃんの誕生日だっけ、明日」

「んー? そうだよ、明日は燈君の20歳の誕生日!」


えへへー、と心底嬉しそうに笑うお姉ちゃん。やっぱり人間恋をすると違うのだろうか。彼氏ができると、世界がバラ色になるのだろうか。

世界がバラ色になるかどうかは、私には分からない。でも、人は恋をすると、甘いにおいがする。どんな恋をしているのかで、その「におい」も変わってくるけど、少なくとも、お姉ちゃんは、甘い、チョコレートみたいなにおいがした。


「---幸せそうなにおい・・・」

「え? ・・・あ、えーと。分かっちゃった? そんなに私、テンション高かったかな・・・」


これが私の「変わっている」ところだ。

人や人が思いを託した物の側によると、なんというか、においがするのだ。人や物に託された、感情の「におい」が。

普通のご飯のにおいや、花の香りなんかとはちょっと違って、こう・・・鼻でかぐような感じではない。説明しづらいが、あえて言うなら「においを感じる」と言ったところか。


「まぁ、胸が悪くなるほどじゃないし。大丈夫だよ」

「そ、そう? ならいいけど。ごめんね?」



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ここまで。

突発的に。(1)

私にはおねーちゃんがいる。

3つ離れた、お姉ちゃん。


私とはあんまり似てないと思うし、好みもバラバラ。(知らない人はそっくりだって言うけど、親しい人は全然似てないって言う。どっちなんだろうか)

お姉ちゃんの名前は透子っていって、なんていうか、少し変わっている。


この「変わっている」のは何もお姉ちゃんだけじゃなくて、多分、私もその「変わっている」の中に入っているんだと思う。私だけじゃなくて、・・・そう、私とお姉ちゃんと歳が近くて小さい時から親しい、従兄妹の3人も、きっとその中に入るはずだ。


「変わっている」っていうのは、性格とか、顔立ちとか、思考とか、そういうものじゃない。

・・・発達しすぎた、とでも言えばいいのか。

霊能力やら超能力やらとはちょっと違う気もするけど、感覚的にはそれに近いかもしれない。

ともかく、私とお姉ちゃんと従兄妹3人、合わせて5人は「変わっている」のだ。



「ねー、素子。これ貸して?」

「・・・あのさ、一つ聞くけど。もしかして今手に持ってる上着と合わせて着るの、そのキャミ。」

「? うん。・・・変、かな・・・?」

「いや変って言うか、・・・微妙?」

「・・・・・・・・・・・・・・」


むっつりと押し黙ってしまったお姉ちゃんを横目で見て、私は顔を前に戻した。


今良いところなのだ。この中ボスを倒せばダンジョン脱出の鍵が手に入る。そのためには集中しなくちゃ、この中ボスを倒すのは難しい。もっとレベルを上げておくべきだったか。それとも、薬草をどっさり買い込んでおくべきだったか。どっちにしろ攻略本無しでRPGをプレイするのはどきどきする。次に何が出てくるか、さっぱり分からないから。


「こ、この黒いスカートとじゃ合わないかな・・・?」

「・・・いや、合わないわけじゃないと思うけど。・・・微妙」


もー、素子は微妙微妙ばっかり! 最近の女子高生は言葉が微妙に乱れてるって本当だね!


なんか一人でぶつぶつ文句を言ってるみたいだけど、私は正直それどころじゃない。

やばい、パーティの1人が死んだ。復活呪文とHP回復をしなければ・・・!

こんな差し迫った状況でなきゃ「お姉ちゃんも微妙とか言ってるじゃん」と突っ込みを入れたのに。


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とりあえずここまで。



あ・つ・い・・・!

もうすぐ10月だってのにこの暑さは何だ・・・!

うぅ、朝からしんどいし・・・さいてーだ。


昨日はすずしかったのにぃぃい


たいふう。

・・・なんだか台風が近づいてきているみたいで。

私の住んでるところからは逸れそうみたいだけど・・・。


怖いなぁ。大きいし。


秘密の花園(現代版) はじまり?(2)

「道順を、覚えましたか?」


エレベーターの中でやっと手を離してくれて、ぼんやりと下から上へ流れていく景色を眺めていたらそんな言葉が上から降ってきた。

誰に? ・・・もちろん私に、だ。だってこのエレベーターには今、私と私の手を引いて入ってきた灰色の背広を着ている人しかいないから。


--道順を、覚えましたか?


その言葉をゆっくりと心の中で反芻して、深呼吸した。・・・そうでもしないと、私はすぐに声がひっくり返る。

なぜだか分からないし、分かりたくもないけれど、人と話そうとすると--それが例え、今はもういない両親とであっても--すぐに声がひっくり返ったり、酷い時は声さえ出なかったりする。

そんな私を見かねて、お母さんが教えてくれた方法。

「掛けられた言葉を自分の中で繰り返して、深呼吸を一回する」

そうするときっと落ち着くの、と言っていた。




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ここまで。短いなぁ(笑)