新橋トルコ研究所を設立後初めて、というかほぼ10年ぶりにイスタンブールにやって参りました。

泊まっているホテルがボーアズチ大学近くの、割と中心から離れた場所だったので、地下鉄を乗り継いで旧市街に向かっていると、電車が地上に出た瞬間、信じられない光景が!

なんとなんと、夕日に照らされた金角湾が目の前に現れ、全身の毛穴が開く。

 

夢見心地の筆者

 

とりあえずボスポラス海峡の真ん中あたりの駅で降りて、旧市街側に橋を歩いて渡る。

もう、幸福感でふわふわ飛んでいる気分。ここは、天国か??

一言で言って、イスタンブールは何にも変わっていなかった。

いい意味で全然。勝手に、

「イスタンブールも変わっちゃったんだろうな~。昔はよかったよ~」

と想像していたが、目の前に広がるガラタ橋周りの超混雑状態は、昔のまま。若者もおじさんもおばさんも、みんな25年前の学生時代にうろうろしていた、お人好しで少しだけ都会擦れしたイスタンブールっ子と、カモの(自分も含めて)田舎ものであることに全く変化なし。

嬉しくなって、同行者のO関さん(非研究員)と、まずはガラタ橋を逆戻りして新市街へ向かった。

 

昔から変わらない、イスタンブールの光景

向こうに見えるのが、ガラタ塔

 

新市街の重厚な石造りの坂を上っていくと、目の前を通ったおじさんがたわしを落とした。

すかさずO関さんが拾ってあげると、おじさんは喜んで、靴を磨かせてくれと言う。

靴磨きを生業にしているようだ。

O関さんはスニーカーだったので断ったが、どうしても磨かせろという。

よほどお礼がしたいのかと思い、同じくスニーカーの当方が磨いてもらった。

スニーカーに水を付けて、ごしごし洗うおじさん。

と、おもむろに横にいた同じく靴磨きのおじさんが、

「おれはアンカラから来たんだが、子供が病気で大変なんだよ~」

と、不幸な身の上話を始める。

なまじトルコ語を少しだけ解する小生。

それは大変ですね~、と相槌を打つと、おじさんは言った。

「同情するなら20ドル払え」

 

・・・ひどい!こいつらぼったくり靴磨きか!

と気づいた時には時すでに遅し。

10ドルを払い、それでも文句を言われながらほうほうの体で逃げたのであった。

その間我関せずで、安全な場所に身を置いていたO関さんに恨みをぶつけることは、忘れなかったが。

 

悪徳靴磨きが出没する、危険な路地裏

 

靴磨きおじさんと似た人相のパンダ

 

 

 

さて、そんなこんなで新市街の目抜き通りへ。

きらびやかながら重厚感のあるこの通りも、先ほどの靴磨き詐欺のおじさん同様、まったく25年前の学生時代、そしてアブダビ赴任中に憩いを求めて家族と来た、10年前と変わらない。

優しく自分の帰りを歓迎してくれているように感じてしまう(勝手にですが)。

 

学生の路上バンドのトルコ音楽が幸福感を否が応でも高めてくれ、そのあとO関さんとレストランでトルコワイン(赤)を飲みつつ、久々のイスタンブールを祝ったのだった。

 

手前のおじさんの笛の音色が秀逸

 

 

 

店のオヤッサンと乾杯

 

 

ぼったくり靴磨きも回避し、ご機嫌なO関氏

 

ほろ酔いで裏通りをうろうろしていると、いい感じの古本屋さんが。

入口の猫に誘われるように中に入ると、面白そうな歴史の本がずらり。

物色していると、奥から人のよさそうな髭面の店主が出てきたので、しばし雑談。

今、オスマン帝国時代の有名なトルコ海賊のハイレッティン・バルバロッサの小説を読んでいるというと、喜んで、同じくスレイマン時代の歴史本を推薦してくれた。分厚くて読み応えありそう。値段を聞くと、なんと15リラ(300円くらい)。安い・・!

さきほどの靴磨きとのギャップにふらふらしつつ、よろこんで購入したのだった。

 

 

 

 

 

店主と記念写真

 

地下鉄に乗るため、タクシム広場に行くと、そこでもギリシャ系かジプシー系のバンドが演奏中だった。飛び入りの小さな少年が、素晴らしいステップを踏み、周りが盛り立て、世界の中心、イスタンブールの面目躍如!と言ったところ。



少年のステップが秀逸。この後、人垣から若い娘さんも参戦し、少年を援護。

 

隣で聞いていた当方と同じくほろ酔いおじさんが、

「これはトルコ語じゃないけど、俺たちとハートが同じだから、心に響くよな~?」

と、いいことを言うので、

「Dogru!(同意!)」と答えると、喜んでいた。

ちなみにこのおじさん、調子に乗って隣の若い女子たちにも声をかけ、冷たい反応をされて意気消沈していた。。。

 

タクシム駅のタイル画。素晴らしい!

 

 

帰りの電車の中で、浮浪者と思しきおじさんが何やら叫び始めたので、おかしな人かな~?とみていると、

座っていた若者が手を上げ、おじさんからガムのようなものを買った。

それからわらわらと、ほかの乗客も買い始める。

どうやら、おじさんの救済策も兼ねた、個人社内販売だったようだ。

 

イスタンブールは、まだまだ人情あふれる、いい街だった。

 

トルコの研究は、続く!