サッカー部で頑張る息子だが、
未だに、練習試合や公式戦で
ゴールを決めた事がなかった。

ポジションはサイドだから
チャンスはあるけれど、結果に繋がらず…
どこか心が置いてきぼりのようだった。


段々とC君が
レギュラーとベンチを行ったり来たりして
ギリギリのところにいると感じて来た。
もちろん、本人が一番苦しいはずだ。


何とかしたい!
そう思った私はC君を練習に誘った。
「サッカー、やりに行かない?」
「ママ、サッカーできるの?」
「出来ないけど、気になるところを
 練習してみようよ!」
「ありがとう。やるよ!」

そう言って、私達は廃校になった小学校の
グラウンドで練習した。

「ゴール前で諦めないで。
 こぼれ球があるから、ボール見て!」
そんな感じで、
こぼれ球の押し込みゴールや
ドリブルの練習したり、
C君は暗くなるまでシュート練習していた。

「来週もまた練習試合だね!」
「うん、ありがとう、頑張れそうだよ!」

息子は、モヤっとした気持ちが
スッキリしたのか、元気に答えていた。





いよいよ、週末の練習試合。
私とMさんは朝から応援に行ってみた。
Mさんも仕事がなければ観に行くのだ。


ヨシヨシ、スタメンにいる!
そんな事を確認しながら
一眼レフのカメラで写真を撮っていた。

第一試合も第二試合も引き分け。
練習試合なので30分ハーフの1本勝負。

そして運命の第三試合。
C君がボールを奪うと、そのままドリブル。
「行けー!行けー!」
私は思わず声を上げて叫んだ。

C君は私の声が届いたのか、
そのまま1人、2人、3人と抜いて
ゴール前まで来た。

ザー。
砂の上を滑る靴の音。
そして、
シュートを奏でる音が聞こえて来た。

ドクン、ドクン、ドクンと心臓が高鳴る。

ボールがネットに吸い込まれて行った。

「イェーイ!!」
C君が満面の笑顔でポジションへ戻った。

「やった!やった!やった!」
Mさんが叫んでいる。

私は込み上げる思いが高まり、
何も言えなかった。
その代わり涙が溢れてきたのだ。

「おめでとう!」
そう言いながら
ママ友が私の周りに集まってきた。

私は汗と涙でぐしゃぐしゃになった。
「写真撮った!?」
「動画は!?」
ママ友が笑顔で聞いて来た。
「…あ、夢中で忘れた…」
「アハハ」
みんなもらい泣きしていた。


C君に大きく手を振ると
小さく胸の辺りで親指を立てて、
『いいね👍』サインを私に送ってくれた。


繋がってる。
反抗期で子供との距離を感じていたけど
今、この瞬間『繋がっている』と感じた。
乗り越えてる。
一つずつ、一つずつ、

ゆっくりだけど、越えて、確実に成長している。


試合が終わると、真っ先に私へ挨拶に来た。
「ありがとう。やったよ!」
「おめでとう。」
私と息子はハイタッチした。
隣りにいたMさんも手を出したが、
軽くスルーするC君。
そこは繋がってないらしい(笑)


たかが練習試合。
華やかな大会でも、オリンピックでもない。
それでも、このゴールは金メダル。
私にとって、最高のプレゼントだ。


写真は撮れなかったけど、
シュートを奏でる音と、
誇らし気に送った
小さな『いいね👍』の合図を
私は一生忘れないだろう。


記録より、記憶に残る一日だった。