疲れがピークに達していた、
ある金曜日の夜の事。

急に発熱した深夜に、体温を測ってみると
40℃を超えていた。

この夜は、熱だけでなく、
吐き気もあり、トイレの独占するほど…

その例えを『マーライオン』と言ってみると、
Mさんはスマホで
マーライオンの画像検索をしていた。
そして一言、
「マーライオンって、
 結構勢いよく出てるよね〜(笑)」

私の例えた『マーライオン』に
反応し過ぎるMさん。


しばらくして、私が呟いた。
「つわりかも…」

「………え?」
Mさんは戸惑っている。

「つわりかな……」
私は、もう一度そう言うと
ゴロンとソファへ横になった。
高熱で、早く横になりたい気持ちと
Mさんを困らせたい気持ちが交差した。


「……?誰の?」
Mさんが聞いてきた。
「………誰の…」
オウム返しの私。


私達にその結果にたどり着くプロセスはない。
つまり、妊娠しようがない。
Mさんの子なら…


「誰の?」
水枕を作りながら、もう一度Mさんが聞いた。
「誰だろう。」
「そんなにいるの??」
「そんなに言い寄られたら良いけどね(笑)」
私は軽く笑いながら、また目を閉じた。






翌朝、少し熱は引いたようだが、
吐き気はまだあった。

「大丈夫?」
Mさんが私の部屋へ来た。
「うーん、まだ気持ち悪い。」
「昨夜、マーライオンだったよ。
 妊娠したかもって騒いでた。」
Mさんが昨夜の話をして来た。

私は身体を起こして、ベッドに寄りかかった。
「妊娠はもうできないよ、私は。」
私は少し淋しげに答えた。

年齢的に無理だけど、
何度も流産した経験があるから
そんな事を思い出していた。


淋しげに話した私にMさんが話して来た。
「無理なのは分かってるけど、
 誰の?って聞いたら、誰だろうって、
 白目になりながら言ってたよ(笑)」
「白目(笑)?高熱だからでしょ!」
Mさんの表現に2人して笑った。

「妊娠ね…」
私はポツリと呟いた。
「うん?」
「いや、若かったら、健康だったら、
 まだまだ産みたかった。
 もう産めないけど…。
 妊娠さんの好きな所があってね、
 お腹大きくなって
 ヨイショ、ヨイショ、って歩いたり
 妊娠さんって、大変だけど、
 愛おしくお腹さする姿が好き。」

Mさんが何故かニコニコして聞いていた。
そして一言。
「Aちゃんも言ってるよ。
 ヨイショって、どっこいしょ!かな?
 椅子から立ち上がる時に言ってる(笑)
 ヨイショ、ヨイショって歩いてるよ。
 それに、お腹いっぱい食べた後、
 愛おしくお腹さすってる(笑)
 妊婦さんと同じ、変わらないよ(笑)」

てめ〜。
ブッコロス。( ̄^ ̄)


結局、私は急性胃腸炎と分かり、
病院で点滴を受けて、
3日間寝たきり、その後快方に向かいました。