警察署での報告を済ませて帰宅すると
C君が心配そうに出迎えてくれた。

どうやらMさんがC君に帰宅が遅くなるから
電話していたようだ。

「ママ大丈夫?」
「うん、ごめんなさい。
 ママ…やってしまったよ…」
「ねーママ、もう一度お店を探しに行こうよ。」
「いっぱい探したよ。」
「僕も探したいんだ。」

そう言ってくれる息子の優しさを大切にして
もう一度、お店に行くことにした。
免許証がないからMさんが車の運転。






行きながらC君と会話した。

「ねー、お財布って、拾ったらどうする?」
私は息子に聞いてみた。
「もちろん届けるよ。」
「そうだよねー」
「……でも…」
息子が何が言いかけてやめた。
「何?」
「いや、うーん。ママ、怒らない?」
「何?怒らないよ。話して。」
「もしも、もしもの話、道端で拾ったら…
 盗みたい気持ちが沸いてくるかも。
 誰も見てないし…とか思うかも。」
「え?」
私は突然の息子の発言に驚いた。
「そういう気持ちもあるって事。
 大丈夫だよ、ちゃんと届けるよ。」

中学2年生になる息子の正直な気持ちだ。

「そっか。ありがとう、正直に教えてくれて。
 でも、どこで拾っても届けないとね。
 今、ママが困っているように、
 落とした人の為にも届けてね。」
「うん、分かってるよ。」


私は息子の思いについて知れただけで
お財布を無くした意味があったと思った。
中学生らしい気持ちを知れた事、
正しい道を親子で確認できた事、
そして、無くした人の気持ちも
息子は絶対に理解したはず。

この経験、無駄ではなかったと思った。


お店に着いて、皆んなで探したが
やはりなかった。


「明日、免許センターに行かないとな…」
私がポツリと話した。
「僕も一緒に行こうか?
 ママ一人では不安だからなぁ〜
 だって電車で行くんでしょ?
 寝過ごしたりしそうだ(笑)」
C君が笑いながら言った。

あ、そうか。この子は春休みか。

「じゃ、一緒に行こうか。」
「OK」

私と息子のおでかけが決まった。