誕生日だから夫婦で出かけようと
Mさんが誘ってきた。


最近、感情に波がない。

嬉しい、悲しい、楽しい、悔しい。

これらが、私生活ではあまり感じない。
これも歳のせいかな。

だから、Mさんの誘いに何とも思わなかった。

嬉しくもないし、嫌でもない。
強いて言うなら…面倒くさい…かな。


「天気が良ければ、公園でのんびりしたい。」
私がそう言うと、
「公園かぁ…
 じゃあ国営H公園に行こうか!」

あー?
何ヘクタールあるんだよっ。
のんびりって、意味分からないのか?

「紅葉も見頃だよ!」
出た、ポジティブ。
「はいはい。じゃあ来週ね。」
私は渋々、了解した。





予定通り、誕生日の前日、休暇を取って
2人で出かける事にした。


「そろそろ行こうか。」
支度しているとMさんが私を呼びに来た。
「うん。あ、そうだ。」
そう言って私は机の引き出しを引いて、
ガサガサとある物を探した。
「あった!」
「何?それ。」
Mさんが覗き込んできた。
「乗り物券。
 最後に行った時に使いきれなくて
 ずっと取っておいたの!
 期限ないし、使えるよ。」
Mさんは目が点になっていた。
「それ…いつの?」
「いつかなー。
 Mさんが不倫する前に家族で行ったから
 6年?7年前かな。」
「それを基準に計算しないで……
 ってか、すげ〜。」
「何が?」
「あ、いや。

 それを取っておいた事もだけど、

 どこに保管していたかを覚えていた事を…」
「・・・そう?

 主婦なんてそんなもんでしょ。
 Mさんがいい加減過ぎるんだよ。」

私にグサグサ言われて
Mさんは顔が引きつっていた。