キックオフの笛が鳴った。
ボールを追いかける少年たち。

天気は曇ったり、雨が降ったり、
ただでさえ広いグランドで走り回るのに、
雨で濡れた体は疲労を増すようだ。


『ママ、明日の試合でシュートを決める!
 だから見ててね〜』
昨夜、息子が張り切って私に伝えて来たのだ。
頑張っている姿を見るだけで、
本当にそれだけで親は嬉しいのに…


そんな事を思い出していると、
「キャー」と「あ〜」の歓声が聞こえた。
息子のシュートが
キーパーに取られた瞬間だった。

「C君、惜しかったね!!」
ママ友達が声をかけてくれた。


いいよ、いいよ。
頑張ってる姿だけで、カッコイイ。





前半戦が終了して休憩に入る時、
息子はMさんのいる方を見ていた。
観に来ているのを確かめるかのように…


後半戦が始まり、ボールを追う青年達。
応援の声も熱くなる。
相手チームが得点を入れる事があっても
こちらが得点を入れる事はなかった。


「ピッ、ピッ、ピー。」
試合終了のホイッスル。


一礼をして、選手達がグラウンドを去る。
一瞬だったが、C君が
Mさんに向かって手を振った。
『え?』
私は、何で?
と、急いでMさんの方を見た。

そこには笑顔で
大きく拍手しているMさんがいた。

男同士の何か、なのか?
私には分からない2人の繋がりがあるのか?

ま、いいか。


ベンチに戻って来た生徒達は
共に肩を叩き合っていた。

ん〜いいなぁ〜。青春だな。
ちょっと感激。


子供がいなかったら、
この試合を観る事はなかった。
胸にジーンと来る想いが蘇る事はなかった。

C君がいなかったら…
そう思うと、子供を持てた事に感謝する。
どんなアホな父親でも、
C君の命の半分に対しては感謝する。


雨が強くなり、私も引き上げる事にした。

控えのテントに顔を出し、
息子に「じゃ、行くね」と声をかけると、
「おん」と一言。
家とは違う態度に笑えた(笑)


私は雨に濡れながら駐車場へと歩いた。

何を流す雨だろう。
負けた悔しさの涙なのか…
父を想う、息子を想う、2人の姿を見て、
私の中にある複雑な想いを流す雨なのか…


疲れたな。
何も考えずに…眠りたい。

せっかくの有休が
お昼寝で終わったのは言うまでもない(笑)