夏休みも終わりになる頃、
やっとC君に伝えるチャンスが出来た。

リビングで宿題に追われているC君が
『助けてくれ〜』と言わんばかりに
こちらを見ていた。


「あの〜、良かったら
 この問題集の丸付けをお願い出来ますか?」
出た!
何か頼む時の敬語(笑)


「まぁ、いいけど…
 ママも話があるけど聞いてくれる?」
「うん、何?…アイツの事?」
やはり勘が鋭い。
最近はまた父親を“アイツ”と言っている。


私は刺激しないようにゆっくりと話し出した。
「あのさー、離婚しようと思って…」
と話すと、C君は被せるように
「ダメ。」
と言ってきた。
「えーっと、じゃあ別居は…」
「ダメ。」
「……理由がちゃんとあるんだけどなぁ。」
「知ってるよ。話してたの聞いてた。
 借金してるんでしょ?また。
 もう治らないよ。」
「だから離れないとっ。」
「だけど、今は嫌だ。」
「いつならいいの?」
「ずっと先かな…」

私は息子の気持ちを聞いて、
次の提案を話した。
「高校生になって、この家から通うと遠いから
 高校の近くに住む…とかは?

 その時に離婚するとか・・・」
「うーん。その時になったら考える。
 高校もどこに行くか分からないし…」
「確かに、そうだけど…」





そして、2人とも何となく黙ってしまったが
息子が話し始めた。
「ママ…?」
「うん?」
「借金する以外はパパはパパだよ。
 ママも最近はずっと笑顔だった。
 仕事も楽しそうだし、
 お休みには楽しそうにパン焼いて、
 僕が美味しいよって言うと喜んで、
 パパとの距離も適当にやって、
 上手くパパを使ってるじゃん(笑)
 昔のパパは家族を無視して
 ママばかり大変だったけどさー、
 今はママの言いなりじゃん(笑)
 その生活で良いんじゃない?」

オイオイ、その発言、穏やかじゃないぞー。
「ちょっと、言いなりって…
 あちらが勝手に従っているだけだよ。」
「だからそれでいいじゃん。」


奴の借金を家計から払う事は、腹を括った。
今後減る事のない借金に、首を括るか?

冗談じゃない。


「いや、いつかはまたパパの借金を
 ママが払う事になるかも。嫌だよ!」
「払わなければいいじゃん。
 そうなりそうになったら離婚すれば?
 でもその頃には、もう死んでるよ。
 アイツはもう死んでいる(笑)
 大丈夫。大丈夫。」


もう死んでいるって、
北斗の拳か?
ケンシロウかよっ。

いやー、奴は長生きするよー。


もう、勝手に離婚届…出そうかな。