お祭りに出かけたMさんと私。
1回1,000円の福引きをやろうと
チケットを購入。

最初にMさんが回して…
白玉。
あー、残念!

と、まぁ、ここまでは良くある風景だ。

しかし、私の番になった時、
Mさんは私と交代もせず、
2回目の福引きを回し始めた。


え?え?と、パニックになっている一方で
Mさんは涼しい顔して
ハンドルを回し切った。

コロン。
またしても白い玉。

「はい!残念賞ね!」
そう言って受付の方がタオルを渡してきた。
私達はタオルを受け取り、
また人混みへと入った。

「Mさん、何で2回やっちゃったの?」
「ごめん、1回目に玉が出てないと思って
 また回しちゃって…」
「え?気がついてたでしょう?
 1回目に玉が出てきたの。」
「いやー、わからなかったなー。」

白々しい。
絶対に確信犯だ。
ギャンブル好きのMさんだからな、
ガラガラの抽選も好きそうだ。
子供かよっ。





その後、私達はC君を探したが見つからず
たこ焼きだけを買って帰る事にした。


夜8時。
約束の時間になっても息子は帰って来ない。

LINEをしてみると
「これからご飯食べる」と。

そして、9時…10時…
ちょっと遅いよっ

心配になって様子を見に行こうと
家の前に出たところ、
車の走る音と、ライトが見えてきた。
そして1台の車が私の前にスーッと止まった。

え?何?

ピッピッピっと、後部座席のドアが開くと
そこにはC君が乗っていた。

「え?C君、何やってるの!?」
私はびっくりして声を上げてしまった。
「遅くなったので送ってきました。」
そう言ったのは、同級生のママ。
「そうだったんですね。
 こちらこそ、遅くまですみません。
 送って頂いてしまい…
 自転車、明日取りに行きます!」

どうやら、大人数でお祭りを楽しんでいたが、
気がついたら数人になり、
家が遠い女の子を送っていて遅くなったと。
そして仲良しの同級生のママが
さすがに遅いからと送ってくれた。


ただ遊んでいたなら怒るけど、
女の子を送っていたのなら仕方ない。
いや、寧ろカッコいい。


私が何も言わず、家に入ると
「ママ?」
C君が声をかけて来た。
「うん?どうした?」
「遅くなってごめんなさい。
 それからありがとう。」
「え?何が?」
「すごく楽しかった!
 初めて中学生っぽい事をして、
 みんなと一緒にいられて
 本当に良い思い出ができたんだ。
 ありがとう!
 ちゃんと女子達も送ったよ!」


段々と親から離れて、会話も嫌がり始め、
ちょっとシャイな子があんなにも喜んでいる。
『ありがとう』
子供からの感謝の言葉ほど嬉しいものはない。
無事に帰ってきたのだから良かった。


素敵な夏の思い出。