夏になると、どこでもあるお祭り。
コロナによって中止していたお祭りが
今年は開催されると盛んになっている。

私の住む地域も小さいお祭りだが、
開催するので、C君は楽しみにしていた。

お祭りと言っても、
山車やお神輿がたくさん出るわけではなく、
小さな山車と商店街のイベントのようなもの。
もちろん、出店は通り道に出て賑わうのだが。


「ママ…明日友達とお祭りに行ってもいい?
 帰りも少し遅くなるかも…」

絶対に私に怒られるか、断られるか、
そんな不安があったのだろう。

「うーん。いいけど、何時に帰るの?」
「…9時頃はどうでしょう?」
「えぇー!ダメだよ。7時かな。」
「じゃぁ…8時で…」
「うっ…分かった。約束ね。」
「うん!ありがとう!」


初めて友達とお祭りに行く。
親としては不安だけど、これも経験だ。
楽しんでおいで。





翌日。
午後になるとお友達が迎えに来た。

「みんなが帰るタイミングで帰るね…」
玄関でモゴモゴとC君が呟いていた。

ん?
帰るタイミング?
昨日の約束は何だったんだ(笑)
ま、いいか。

「行ってらっしゃい!」
私は子供達を見送った。


夕方になって、Mさんが
「Aちゃん、お祭り行く?」
と、声をかけてきた。
少し考えてから、私は答えた。
「……そうだね。いいよ。」

私は人混みも苦手だし、
蒸し暑いから悩んだけれど、
C君の様子も知りたいので行く事にした。
もはや、ストーカーだ(笑)


会場近くまで車で行き、そこからは歩き。
メイン通りに来ると密、密、密!
行き交う人の多さに息苦しくなった。

こんなところにC君はいるんだなー。

と、そこへ『カランカラン』と鈴の音が…
「くじ引き1回1,000円ですよー。」
おじさんの声が聞こえてきた。
「まだ2等がでないんだよ〜!
 そろそろだと思うよ!」
商売上手だな(笑)

「やってみる?」
Mさんが、誘ってきた。
私は2人分のチケットを購入し、
Mさんの後ろへと並んだ。

六角形の木箱にハンドルが付いている
いわゆる、ガラガラの福引きだ。

いよいよ、Mさんの番。
ハンドルを掴んで、ゆっくりと回した。

コロン。
白い玉が出て来た。

あー、残念。

よし、じゃあ私が当ててやろう!
と、意気込んで交代しようとした時!

Mさんがまた、ハンドルを回した。

え?
何で?
私の番じゃないの?
お金出したの…私なんですけど…


何で、お前が2回まわすんだっ!