実家に帰ろうと思って準備をしていたが、
C君の部活が入ってしまい、
帰省は次週になってしまった。


金曜日の夜、1週間のお仕事お疲れ様!
と、自分へのご褒美にビールを飲んでいると
C君が話しかけて来た。

「ママ、明日の部活なんだけど、
 K中学で試合だから、送ってね!」
「オッケー。
 K中学の隣にある緑公園の
 駐車場に送ればいいかな?」
「うん!ありがとう!」


サッカー部に入ってから
土曜日は必ずと言っていい程、
どこかの中学校へ行って練習試合をする。


緑公園かぁ。
その公園は、名所というわけではないが、
冬になるとイルミネーションが開催される。
規模は小さいが、綺麗らしい。
ただ自宅から30kmも離れていて
私は一度も行った事がなかった。
行ってみたいなとは思っていた。
数年前までは…


しかし、今はもう、その公園が嫌いだ。
なぜなら、Mさんが過去の不倫の時に、
彼女と、イルミネーションを見に
その公園に行っていたからだ。


その事実を私が知っているなんて
知りもしないMさんは
「明日、試合かぁ。俺も行こうかな。」
なんて平然と言う始末。




翌朝、3人でK中学へ向かい、
緑公園の駐車場でC君を降ろした。


試合が始まるまでまだ1時間もある。
Mさんは車の中でテレビを見ていた。
私は初めて訪れた緑公園を
じーっと眺めていた。


Mさんは今、この公園にいて
彼女との思い出が蘇るのだろうか。
別れた哀しみに苦しんでいるのだろうか。
消せない記憶に苦しんでいるのは
私だけなのだろうか…


もし、Mさんの頭に、
彼女と手を繋いで歩きながら
イルミネーションを見ていたデートを
思い出しているのなら…

それ、私は知ってるよ。
そう言ったら、Mさん…どうするかな。


運転席に座ったまま
テレビに目線を持っていっているMさん。
助手席に座ったまま外の公園を見ていた私。

私は目線を公園からMさんへ
ゆっくりと向けて声をかけた。


「Mさん?
 この公園には来た事ある?」


どう答えるのだろう。