4月10日(月)晴れ。
C君の中学校の入学式。
でも、C君は朝から「頭が痛い、気持ち悪い」
そう言ってぐったりしていた。

参ったな…

「大丈夫?入学式やめようか?」
私は何度も声をかけたが、
「大丈夫、行ける…」
C君はゆっくり起き出して支度を始めた。

珍しいな。
こんなに具合悪くなるなんて。
熱はないし、鎮痛剤を飲ませて
学校へ向かう事にした。


学校へ着くと、張り出されたクラス表を見て
「○○と同じクラスだ!」
同じ小学校の友達の名前を見つけると、
少し元気が出てきた様子で
明るく校舎へと入って行った。


「大丈夫かな?」
Mさんが心配そうに眺めていた。
「大丈夫でしょう。」
私は、校舎を眺めるMさんを眺めた。


Mさんが家庭に戻り、もう2年になる。
最初の1年は嫌々戻された感と、
まだ残る彼女への想いが溢れて、
子供とも壁があり、ぎこちない関係だった。

振り返ると、この1年間でMさんは
子供に関わるようになった気がする。


Mさんが不倫してた時は
C君は父親を憎み、会話もしなかった。
Mさんも学校行事に参加する気はなく、
彼女優先だった。

それが、今は私の隣にいて、
一緒に学校にいる。
すごく不思議だった。


校舎を眺めるMさんは
いったい何を思っているのだろう。

張り出された生徒の名前の中に、
不倫していた彼女と
同じ苗字の生徒の名前があった。
こちらではあまりない苗字。
親戚か?


眺めているのは、張り出されたクラス表…
そんな気がした。






「先に体育館へ行ってますよ。」
私はMさんに声をかけて
ママ友達と式場へ向かった。


式が始まり、子供達が入場した。
凛々しい姿。
祭壇で校長先生が礼をすると、
子供達も綺麗に揃って礼をする。

え?練習したの?入学式だよね?

子供の成長に驚いてばかりだった。


式が終わり、外で待っている時だった。

あれ?あの○○くんのお母さん…
男性と一緒にいるけど、誰だろう?
シングルだったけど…


「Mさん、見て、○○くんのお母さん、
 再婚したのかしら?」
「ん?あ、本当だ。」
「分からないけどね。
 でも、そうだったら素敵!
 仲良さそうだし。恋をしてるんだなぁ。
 いいなぁ、恋…
 私は恋がどんなモノか忘れた(笑)」
微笑ましい思いで
独り言のように言っていると
「すれば良いじゃん。恋でも、何でも。」
Mさんが投げやりに言ってきた。
「え?私が?」
「うん。したいんだろ、恋とか。
 だからすれば良いじゃん。」
「え?浮気を?私が?不倫になるよ?」
「だから?したいならしろよ。」

なんだ、この態度!


彼女と同じ苗字に気がついたのだろう。
昔を思い出して、私が憎くなったのか。
小さい声での会話だが、重い内容だった。


私は、言い返したい気持ちを抑えて、
ゆっくり深呼吸をした。
今はやめておこう。


何で、コイツとやり直したんだろう。
何で、あの時離婚しなかったんだろう。

不倫したいとか思うわけないだろ。
バカじゃねーの、一緒にするな。

思うなら『離婚したい』だ。