Mさんに誘われて、
レストランでランチをする事になった。


さぁ、出かけよう。
そう言って、Mさんの運転で
暖かい日差しの中、走り出した。


色々と聞きたい事があるけれど、
せっかくの外出がつまらなくなるのも悲しい。
他愛もない会話でドライブを楽しんだ。


「ここみたいだな…」
Mさんがお店の駐車場へ停めた。


お店に入ると
「予約した○○です。」とMさんが言った。

え?予約?
ふら〜っと寄りました感覚ではないのか?
しっかり予約までしていたとは!

「お待ちしておりました。」
店員はそう言って、
私達を眺めの良い窓側の席へ案内した。

「いつの間に予約なんてしたの?
 びっくりだよ(笑)」
席についてから私は笑いながら言った。
あのMさんが?予約?たかがランチで?
と、おかしくなってしまったのだ。

「ダメならキャンセルすれば良いし。
 この間、予約しておいた。」

へー。
意外だった。






そして、私が無言でいると、
Mさんが私をジーッと見つめてきた。

な、なんだ!

「え?何?」
私はオドオドしながら言うと、
「Aちゃん、俺に何か話すことない?」
Mさんは静かにそう言ってきた。


はい?
何の事だ?
いやいや、寧ろ…そちらがあるのでは?

ま、いいか。
良いきっかけが出来た。
ちょっと、ぶっ込んでみるか。


「話す事というか、聞きたい事があるけどいい?
 このお店、知ってたの?」
的外れな話だったかな。
「ここ?いや。
 前に話した、会社の事務の女性、覚えてる?
 その子に教えてもらった。」
「へー、そうなんだ。」

やっぱり。
もしかして、一緒に来たとか?
そう、聞こうとした時、
「彼女さー、会社辞めちゃったんだよ。」
突然、Mさんが語り出した。
「会社の課のみんなで送別品を用意したけど
 なんか渡しそびれて、
 この間、渡して来たんだ。
 その時にこのお店の情報を聞いてね。」

私は急な話で、頭が混乱して来た。
「それ、いつの話?」
「ん?彼女が辞めた日?」
「違う。会った日。」
「えーっと、Aちゃんが休日出勤の日かな…」

あ……
私はC君の話を思い出した。
「ここで一緒に食事したの?」
「え?しないよ。
 彼女の家の近くで会って、
 送別品だけ渡しただけだよ。
 行く前に電話で話してる時に、
 このお店の話になってさ。
 パスタ屋になったら人気になってるって
 教えてくれてね。
 Aちゃんと行こうと思って黙ってた(笑)」

なるほど。
C君の言ってた話は、嘘ではないが
掻い摘んでいたから誤解したのか(笑)


疑われて当然。
信じてもらえなくて当然。
それがMさんなのだ(笑)


「それより!
 Aちゃん、何か話すことあるでしょ?」

あ、それか。

「分からない…思い当たらないんだけど…」
私が困って、そう答えると
「えーっ!自分の事でしょう?
 この間の試験!
 結果、俺に教えてくれないのは何故!?」
と、興奮気味にMさんが言った。

それかよっ。

「あー、うん。受かったよ。
 定年まで嫌な中間管理職だ(笑)
 別に隠してたわけじゃないし…」

「おめでとう。
 絶対に受かると思ってた。
 だから、今日はお祝いだよ。」

あ、そういうことか。

その時、注文したノンアルコールの飲み物が来た。

「おめでとう。」
「ありがとう。」

食事が来るまでの間、
Mさんが鞄から何やら青い物体を出して来た。


ゴソゴソ…ゴソゴソ。

ぼよ〜ん。

「はい、プレゼント!」

え??
ここで??

コイツのやる事、謎だー。