お友達の家に泊まりに行っていたC君。

夫婦だけの休日をなんとか過ごし、

子供を迎えに行き、約束通り食事に…


「どこのお店にする?」
私が子供に聞くと
「ハンバーグが食べたい。
 近くのファミレスで良いよ!」

あれ?パパの誕生日を祝うんじゃ…?

「ハンバーグ?
 あの、サラダバーがあるところ?」
私が確認すると、C君が元気よく答えた。
「そうそう、そこで!」
チラッとMさんを見ると慌てて言ってきた。
「……あ、ファミレスで十分です… 」

私としてはラッキー。
安いし、それで祝った事にできるし。


ファミレスへ向かっている車の中で、
C君が話しかけてきた。

「ねー、プレゼントはどうするの〜?」

…余計なことをっ!

「今日はもう遅いし、また今度ね!」

また今度。
なんて、そんな気はさらさらない。
このまま黙って時間が過ぎれば…


するとMさんが私に話しかけてきた。
「このバックはいつ買ってもらったかな?」
いつもMさんが使うショルダーバッグの事だ。

「3年前かな…2019年だったと思う。」
私がそう答えると、Mさんが
「じゃあ、翌年の誕生日プレゼントは?」
と、お気楽に聞いてきた。

「2020年の一昨年?
 え?そこ?いいの?話して。」
と、私は少し驚きながらMさんに問いかけた。
「うん?うん…うーん。」
分かっているのか、いないのか、
Mさんは煮え切らない返事をして、
モゾモゾとガバンを触っていた。

いじめている訳でも、
追い込んでいる訳でもない。
ただ、あまりにも自分の過去を
消そうとする事が許せず……


「分からないなら教えますが…
 2019年からMさんは
 家族より大切な人を作りました。
 翌年の2020年の誕生日に
 私は貴方に離婚届という緑の紙を
 プレゼントしました。
 去年は祝いたくないので無視しましたけど、
 ・・・それが何か?」

マズイと言わんばかりに、
顔が引きつっているMさん。



沈黙を破ったのはC君だった。


「ごめん…パパ…僕が余計な事を言って…」
C君が、後部座席から父親に向かって
小さな声で話しかけていた。

「いや、パパが悪いから…」
Mさんも小さな声で返していた。


なんだ、なんだ!?
男同士仲良くなりやがってっ!

ふんっ。



しばらく無言の車中。


気を使う男2人が、
まるで、ちびまる子ちゃんの
顔面に縦線が入ったような蒼白顔で、
ただ、一点だけを見つめていた(笑)