あれから1年、事故の日が来た。

今は何も起こっていない。
ただ、月日が過ぎて、
事故から1年後の同じ日が来ただけ。
そう、思っていた。


そう思っていたのだが…
夜になり、
Mさんはリビングでニュースを見て、
私はキッチンで洗い物をしていた。

『次のニュースです』
テレビからアナウンサーの声がした。
画面を見ると、事故の映像が流れた。


ハッとした。


フラッシュバックだ。

息ができない。怖い。
記憶がよみがえる。
消したいのに消えない。
記憶に残ってしまっている。


水道から水が勢いよく流れている。
その音に気がついたのだろう。
Mさんが声をかけてきた。

「水が出てるよ。どうしたの?」
そう言ってMさんは水道を止めた。
「うん…ちょっと苦しくなって。」
私が息苦しさを訴えながら話すと、
「大丈夫?気管支炎?」
Mさんは病気の方を心配してきた。
「…ううん。
 事故が、テレビの事故を見たから。
 1年前を思い出して…」
私がそう言うと、
Mさんは黙って私の背中をさすっていた。

私が落ち着くと、
Mさんが申し訳なさそうに話した。
「…ごめん。もうあんな事はないから。
 二度とないから…」


二度もあってたまるか。
一度で十分。
しっかり、記憶にありますから!