15分程度の息抜きが上手にできるようになった。
会社で「なんか楽しくない」と思う事があっても、会社の帰りにこのお店に寄ることを考えると、粛々と仕事を進めることができる。
こんな日は、きっちり会社を定時に上がって、ケーキを食べにいく。
PCの時計が17:30になるや否やシャットダウン。そのあとは、2分で身の回りを片付け、17:35には会社の裏口のドアに手をかけている。
頬に冷たい風を感じながら大股でひとつ先の駅まで歩き、重いお店のドアを開けて優しい明かりの店内に入る。
カウンター席に腰を下ろし、店主のおじいさんにコーヒーとケーキをお願いして、お冷をひとくち飲んで、ふっと小さく息を吐く。
カウンターの向こうでは店主さんが流れるような動きでコーヒーを淹れている。
わたしはただただ無心にじっとその動きを見ている。
この場所にわたし自身が馴染んで来た頃合いに、まずはコーヒー、そのあとケーキが置かれる。
写真を一枚撮って、スマホはバッグにしまう。そして、食べる。
コーヒーとケーキの事だけを考えるようにして。
(ここのタルト生地、めっちゃ美味しいです)
お会計の時、カウンターの向こうにいる時は無表情だった店主のおじいさんが、小さく微笑んでくれる。
その優しい微笑みを見ると、わたしの心の闇がすっと引いていく気がする。