小説感想:泉鏡花『眉かくしの霊』←本日は泉鏡花の誕生日 | 詩真百年

詩真百年

ホラー映画と漫画アニメが生き甲斐。
近代文学、美術館、演劇など、とにかく創作物を見るのが好き。

11月4日の今日は泉鏡花の誕生日ですね。


こちらの本に収録されている『眉かくしの霊』だけまだ読んでいなかったので、読んでみました。
(5月に『外科室』『海の使者』『星あかり』『高野聖』は読了)

「泉鏡花の作品は文体がとっつきにくい」「イメージ構成力がないと読むのが厳しい」
とおっしゃる方が多く、久々に読むと「うん、その通りだ!」と深く頷いてしまいますね。

小説って頭の中でずっとその世界をイメージしながら読みますよね。
そのイメージが途中で一瞬でも消えてしまうと、もうその後の展開に全くついていけなくなります。
それは他の作家の作品でも同じだと思うのですが、泉鏡花の作品の場合、その“ついていけなさ”が段違いです。
その為、読むのにとてつもない集中力を使い、読了までかなりの時間がかかってしまいました。

『高野聖』のときにも思いましたが、泉鏡花の描く美人さんはしっとりとした色気があって良いですね!
現代にも様々な美人さんがいますが、泉鏡花の作品に登場する類いの美人さんはなかなかお目にかかれないんじゃないでしょうか?

『眉かくしの霊』はラストが特に素敵ですね。
霊について語っていた男が突然狂い始め、霊が出現し、綺麗な一文でストンと終わる。
霊について語っていた男とその話を聞いていた男がどうなったのかは描かれていない。
読者に想像の余地とぞくりとした余韻を残すラストで、私はテンションが上がってしまいました。
「ああ、いい怪談語りだったなぁ!」って。