今回はプロ投手と高校投手で投球時のパラメータを比較した研究を紹介します。

 

40名のプロ投手と37名の高校生投手で投球時の肘外反トルクや上部体幹の回旋角度、骨盤の回旋・前傾角度などの運動学的データを比較しています。

 

まず、投球肘傷害の発生と関連するとされている肘外反トルクの絶対値は、プロ投手の方が有意に高かったようです。しかし、体格を考慮し、肘外反トルクをbodymass に身長を乗じた値で除することで正規化した肘外反トルク(相対的)は高校生の方が高値であったようです。

 

また、運動学的データでは

・ステップ足のフェーズで投球側への体幹回旋角度(骨盤に対する上部体幹のひねり角度)はプロ投手の方が大きい

・①足を上げたフェーズ②グローブから手が離れたフェーズで投球側への骨盤回旋角度はプロ投手の方が大きい

両者でこのような差があったようです。

 

まず、肘外反トルクについてですが、プロ投手の方が球速が速いため、絶対値が高くなったと想像できます。

100球の投球練習を全力でした場合と7割で投げた場合ではどちらが肘に負担がかかるかを考えるとイメージしやすいと思います。

つまり、投球パフォーマンスと投球傷害の発症は表裏一体といえます。

その一方で肘外反トルクを正規化した値は高校生投手の方が高かったことから、高校生投手の方が体格に対しての肘への負担が大きいといえます。

 

しかし、体格が大きいほど内側側副靱帯の強度が高まるわけではないので、肘外反トルクの正規化を体格で行うのが妥当であるのか検討する必要があると感じます。 球速が高くなれば、肘にかかる負担は大きくなるので球速と肘外反トルク相関性を検証したうえで肘外反トルクを球速で正規化するのも一つの方法なのかと感じます。

 

また、骨盤・上部体幹ともにプロ投手の方が回旋して投球していることも提示されていますが、これは投球パフォーマンスを高めるためのプロ投手の身体操作のスキルだと感じています。

 

特に、上部体幹の回旋角度を作り出すためには、

・胸鎖関節の可動性

・肩甲骨の可動性

・胸郭の柔軟性

・グローブ側の上肢による誘導

 

などが必要であるので、まずはそれらの運動機能を獲得する必要があります。

この結果だけを見てステップ足の着地時に無理に身体をひねる練習をすると腰の解剖学的な可動域を超えた回旋動作となり、腰を痛める危険性があります。

 

引用文献:Micheal J. L et al:Role of Rotational Kinematics in Minimizing Elbow Varus Torques for Professional Versus High School Pitchers .The Orthopaedic Journal of Sports Medicine6(3).2018