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 その上で、戸塚氏が必要不可欠としているのが「不快感」。「人間は快を求め、不快を避ける。不快感は善で、それがないと行動しない。だから体罰を行うが、恐怖ではダメ。怒りで行えばいい」「虐待はいかん。それはする側のためにやるからだ。体罰は、受ける側のためにやる。体罰を受けて進歩すれば、本人のためになる。体罰を暴力とは思わない」と主張した。


  戸塚ヨットスクールの教えを支持する若者、なぜ?



YouTubeチャンネルを運営しているのは、2000年生まれの24歳である、ロッキーさんと佐藤さんだ。ロッキーさんは「出身が愛知で、小さいころから怒られると『戸塚ヨットスクールに入れるぞ!』というやりとりがあった。事件のことも知っていた」と語る。“昭和的な戸塚論”に感銘を受ける理由には、2人に共通する原体験がある。


佐藤さんは「中学受験の塾はわりと戸塚ヨットスクールみたいな所があり、小学生が朝から晩まで勉強させられた。その経験があったからこそ、しんどい事や理不尽な事があっても『あの時やったから』と乗り越えられた。自力でやっていくのは、理不尽な経験がないと難しい。自分は弱い人間だから逃げてしまう」と説明。


ロッキーさんは「中学の部活動では体罰もあり、ルールなど全体的に厳しい顧問だった。それ以降の人生で理不尽なことへの耐性がつき、自分が進歩した実感がある。『強制力で人間は進歩する』という体罰に関する校長のメッセージには共感できる。かなり過激な部分もあるが、主張が面白く、筋が通っている話もあって、『校長の思想を広く世間に届けたい』とYouTubeで発信しようと思った」という。



では、体罰には賛同するのか。ロッキーさんは「目的として不快感を与えて進歩を促すという点において、それは体罰や言葉、環境だったりすると思う。その中で、体罰だけがフィーチャーされている印象だ。ただ、体罰は善悪の二元論ではなく、シチュエーションによって変わると考えている」と語る。

 佐藤さんも「体罰そのものを否定できない」としつつ、「戸塚先生も反論する人も、善悪の二元論で議論しがちだが、そこにはグラデーションがある。地元で『どうしても会話ができない人』を見てきた経験から、あながち全てが悪とは言えない」とした。


−つづく−