黄金よりもはるかに役立つものをコロンブスは見つけた―。国立民族学博物館名誉教授、山本紀夫さんの著書にある。それは香辛料。コロンブス自身も現地の人が食べるアヒーを書き残す。「彼らは非常に健康によいものだと考えている」と▲欧州に持ち帰られた中南米原産のアヒーとは、トウガラシのことだ。当初、「食べたら死ぬ」とまで言われるが、あっという間に世界中へ。香辛料として「食」の幅を広げていく。体を温めることや薬に使われもした▲色や形も多様な種類があるが、人を引き付け、とりこにするのは辛さだろう。1986年には「激辛」が流行語大賞の銀賞に。口にするうち、普通の辛さに飽き足らなくなるのか。刺激への欲求はさらにヒートアップ▲極辛などと記す食品がコンビニにも。「18禁」とした品もネットにある。そんなポテトチップスを食べた東京の高校生が不調を訴え、搬送された。興味本位で1枚口にしたか。辛さの限度は個人差があり、注意が要る▲辛いものを食べると、汗をかいて涼しくなり、刺激で食欲も増す。夏、辛いものが欲しくなるのは理にかなった反応という。ことしも猛暑らしい。だとしても、ほどほどの辛さで。