パリ五輪会場・セーヌ川が「道頓堀より6倍以上汚い」衝撃データ…100年も「泳げない川」で本当に開催できるのか?


一度雨が降ると一気に写真の通りの水質になるセーヌ川。ここでパリ五輪のトライアスロン、オープンウォータースイミングが行われるというが… photograph by Getty Images


6月6日、パリ五輪まで残り50日となった。日本では代表内定の選手が発表されていく中、パリの街で「本当に開催できるのか?」と開催が危ぶまれている競技会場がある。それは開会式とトライアスロン、マラソンスイミングが行われる「セーヌ川」だ。一体、花の都を彩る河川に何が起きているのか。




  パリ市長は「私の泳ぎを見せたい」

 パリのアンヌ・イダルゴ市長が、6月23日の「オリンピックデー」にセーヌ川で泳ぐと宣言した。「練習しましたよ。私がよく泳げるということを見せます」とやる気満々である。

 開幕まで2カ月を切ったパリ五輪、コンコルド広場やエッフェル塔周辺、市庁舎前などには仮設スタンドが続々とできあがっている。これらの名所は市内を横断するセーヌ川に面している。セーヌ川は「広く開かれた大会」という今大会のスローガンの象徴である。開会式とトライアスロン、マラソンスイミングの会場にもなる。

  1923年から遊泳禁止

 かねてより、全長6kmにわたる川面で繰り広げられる開会式の警備については懸念されていたが、ここへきて、水質の問題がにわかにクローズアップされてきた。

 4月に、国際環境NGO団体「サーフライダー財団・ヨーロッパ」が公開質問状で水質の悪さを警告した。フランスメディアもこぞって、この問題を取り上げた。


 セーヌ川は船の通行と水質汚染のため1923年から遊泳禁止になっている。もし泳ぐと罰金15ユーロ(約2535円、6月5日時点の為替レート、以下同)だ。べつに悪臭がするわけではないが、たしかにこの水の中に入りたいとは思えない。「オリンピックまで2カ月:セーヌはまだ遊泳不可能」などというニュースの見出しで拾われるパリっ子たちの声も懐疑的だ。イダルゴ市長は、そういうゴチャゴチャ(彼女の言葉では「ニャニャニャ」)を断ち切るために身をもって示す、というのだ。


  「道頓堀より6倍以上」の大腸菌を検出

 前出の「サーフライダー」が5月22日にトライアスロンの水泳スタート地点・アレクサンドル3世橋付近で採取した水の分析結果は、100mlあたり大腸菌3430、腸球菌508だった。阪神タイガースが優勝した際、ダイブの自粛をよびかけられた道頓堀川でも、昨年2月の大腸菌は100mlあたり540(23年2月、道頓堀橋付近。日本分析化学専門学校調べ)だったから、その6倍以上になる。



 大腸菌も腸球菌も腸内細菌で病原体ではないが、それらが多ければ多いほど病原体が増えている可能性が高く、「中耳炎」、「皮膚炎」、「腸炎」などを引き起こす。プールではいずれも0でなければならないが、ワールドトライアスロンの基準ではそこまで厳しくはない。だが最悪でも大腸菌1000、腸球菌400を超えてはならないとしている。

  当局の反論「雨が多かった」

「サーフライダー」は、昨年の9月から2週間ごとに定期的に検査しているが、毎回この基準の2倍3倍になっており、「競技を行うのは危険」という評価がなされている。一方、パリ市では、昨年6月からアレクサンドル3世橋のたもとの船上レストランに装置をつけてオンラインで常時水質分析しており、スポーツ・オリ・パラ担当のピエール・ラバダン副市長によれば「80%は満足いく結果が出ている」という。遊泳許可の決定権のあるイルドフランス州地方長官庁(注:地方における国の代表、知事とも訳されるが自治体の長ではない)も、「サーフライダー」からの公開質問状に「まだ処理ユニットが稼働していなかった、さらに5月・6月からは追加施設が稼働する。雨が多かった」などと反論した。

  生活排水による汚染

 実際、セーヌ川の汚染は、天候に大きく左右される。

 昨年7月9日には、ラバダン副市長などがセーヌに飛び込んでデモンストレーションしたが、その1カ月後、8月5日と6日のテスト大会を兼ねたオープンウォータースイミングのワールドカップは、水質不良のため中止されてしまった。17日から20日のトライアスロンのテスト大会のスイムも前半2日は実施できたが、後半2日は中止された。

 これは、汚染がかつてのような工業排水によるものではなく、生活排水によって起きていることを意味している。

  雨が降ると“汚染”はセーヌ川に流れ込む

 パリ・エスト・クレテイユ大学のフランソワーズ・ルーカス教授(微生物生態学)は、「雨が降るとすぐにかなり劣化する。一般的に雨が降ると、汚染は24時間以内にセーヌ川に流れ込む。晴天なら水質はかなり良くなる。紫外線もバクテリアを破壊する。天気が良くて暑ければ問題はないだろう」と説明している。(『ル・パリジャン』Web 2024年4月16日)

 19世紀末につくられたパリ市の下水道システムは汚水と雨水が同じ管に入る「合流式」である。通常、汚水は郊外の汚水処理場に流されて処理される。だが、大雨になると街の通りから雨水が流入して満杯になるため、洪水にならないように、ポンプを使ってセーヌ川に放出されるのである。


  市長は「泳ぐ」されど浄化は進まず?

 パリの市長は伝統的にセーヌ川で泳ぐことへの執着があるようで、ジャック・シラクも1990年にはみんなの前でセーヌ川を泳ぐと公約した。しかし実現せず、そのうちに大統領になった。


 だが、今回の浄化事業は本気で、大会終了後も、2025年夏から一般市民向けの3つの遊泳場をオープンしようとしている。

「セーヌで泳げるようにするのに必要なことはやったのだから。これは本当にすごいレガシーになる」とイダルゴ市長は言う。

  大規模な「遊泳計画」

 5月2日には、13区のオステルリッツ駅横に貯水施設がオープン。大雨の時に下水を溜めてセーヌ川に流さないようにしようとするもので、深さ34メートル、貯水量は4万8500m³、オリンピックプール20個分に相当する。

 これも含めて、国とパリ首都圏であるイルドフランス地方の各自治体は、約14億ユーロ(約2366億円)をほぼ折半で投資して、以下のような大規模な「遊泳計画」を実施している。

 ・上流の郊外5か所に貯水施設を建設

 ・上流にある2つの大規模な汚水処理場へのバクテリア処理システムの装備

 ・2万3000カ所に及ぶ家庭からの接続不良の改善(とくに郊外では下水道を通さず直接セーヌ川や支流に流すものが残っている)

 ・船舶からの排水の河川への排出を禁止し、係留している船を下水道網に接続

 ・自然環境の中で雨水が土壌に流れ込むような植栽の促進

 これによって、生活排水の流入を防ぐだけでなく、細菌汚染の75%も除去できるという。

天候次第で「延期の可能性も」
 とはいえ、まだ天候次第であることは否めないようで、イダルゴ市長の遊泳も「場合によっては30日に延期される可能性もある」としている。

 イルドフランス州地方長官は、水質不良でも「1、2日延ばせばいい。冬季五輪でも天候が悪いと延期されるのと同じだ」という。だが、マラソンスイミングは会期終了の3日前と2日前の8月8日(女子)、9日(男子)に開催が予定されている。

 過去の統計をみると天気は大丈夫そうだが、なにせ異常気象だ。ゲリラ豪雨も増えている。結局のところ競技の前の2日間に大雨が降らないことを祈るしかない。


ホントにどうなんだろうか?


『道頓堀川の6倍汚い』


あり得ないでしょ。


トライアスロンの選手が


可哀そうですよね。


アスリートファーストで

あってほしいです。