岩崎恭子を“金メダル”に導いた「意外な一言」

1992年バルセロナ五輪、競泳女子200メートル平泳ぎ決勝は、希代のヒロインを誕生させた。




「いままで生きてた中で、いちばん幸せです」

 午前中に行われた予選で岩崎は世界記録保持者アニタ・ノール(米)にわずか100分の1秒差の2位で決勝に進んだ。突然のシンデレラ登場に誰もが驚き、沸き立った。大会前はほとんど注目されていなかった。メダルを期待されていたのは4月の日本選手権で100メートル、200メートルとも優勝した粕谷恭子。岩崎は大会前の取材に「決勝に残れればいい方だと思います」と答えている。何しろ自己ベストは世界の14位でしかない。





予選終盤は激しいトップ争いになった。序盤から大きなリードを保っていたノールを、後半になって徐々に追い上げ、肉薄したのがすぐ隣を泳ぐ岩崎だった。


「ゴールした直後、隣のアニタが顔色を変えてこっちを見たんです。パッと、こんな感じで」

 32年たっても変わらないあどけない表情で岩崎が再現してくれた。

「誰? って感じで私を見たんです(笑)」

 女王にとって想定外のライバル出現。さぞ意外で、そして突然の脅威だったに違いない。ノールの狼狽を見て、14歳の岩崎はまんざらでもなかった。それで満足したとは言わないが、

「すっかり浮かれていましたね」


コーチの声かけ

 無邪気に喜ぶ14歳の心の内を見抜いて、大切な言葉をかけてくれたのが、日本代表ヘッドコーチの鈴木陽二だった。鈴木は4年前、鈴木大地のコーチとしてソウル五輪で金メダル獲得を実現している。この時も、陽二と大地、そして限られたチーム関係者だけが大地の金メダルを頭に描いていた。





 鈴木コーチはプールを離れる前、岩崎に声をかけた。


「恭子ちゃん、あと1本、泳ぐからね」


その言葉で、「浮かれた気持ちから覚めた」と岩崎が言う。さりげない言葉。だが、この後なすべきことを思い出させるには十分な一言だった。

「絶妙な言い方で、私の浮かれた気持ちを戦う姿勢に変えてくれた。あの言葉がなかったら、私は決勝でしっかり泳げていなかったでしょう」





ホントにそうですね。


選手にかける言葉

大切です。

ネガティブじゃなく

ポジティブな言葉を

選んで声かけしないとね。