アンカリング効果とは、はじめに提示された情報を基準点(アンカー)とし、ほかの情報を評価・判断する心理学的な現象です。認知バイアスの一種で、はじめに提示された情報が、あとの判断に大きな影響を与えます。アンカーとは、船を停泊するときに使う「いかり」のことです。
アンカリング効果の語源
アンカー(Anchor)は日本語で「いかり」を意味し、アンカリング(Anchoring)は船の錨を下げて船をつなぎとめることを意味します。つまり、身動きが取れない状態のことを言います。
マーケティングの場合
商品のプライスタグの表示の仕方に「通常価格より70%OFF」などの表示を見たことがあると思います。通常価格(アンカー)と、値下げ後の値段を比較すると、値下げされた商品がとてもお得に感じられるでしょう。
しかし、実際のところ、該当商品が通常価格ほどの価値があるかは分かりません。消費者としては、表示に騙されずに、商品を選択したいところです。
一方で、自分がマーケティングをする場に立つと、元値を提示することで、割引された商品を安く感じさせ、売り上げ増加に繋げられる可能性があります。
営業の場合
契約の際、顧客に見積書を提出する際にも、アンカリング効果を活用することができます。具体的には、見積書の中に値引き欄を設け、合計金額からの割引額を表示することでお得感を演出できます。
株の売買の場合
株を売買するとき、多くの人は株価の動向を見てから購入するでしょう。例えば、「ここ〇カ月で△%上昇(下降)し続けている」という情報をもとに、売買する場合などがそれに当たります。また「この銘柄は上場〇カ月で△円上昇(下降)した」という判断を元に、その銘柄の将来性を見越して購入することもあります。
過去の情報は、その銘柄の今後を保証するものではありませんが、過去の情報をもとに「その銘柄が上昇(下落)し続ける」と考える傾向には、アンカリング効果が影響しているといえます。
また証券用語で、株価が下落した後も、まだ高いときの株価が忘れられず、戻りを期待して売る気にならない状態のことを「高値覚え」といい、逆に下落したときの印象が強いあまり、銘柄を買えない状態になることを「安値覚え」といいます。
人間関係の場合
アンカリング効果は、人間関係でも活用できるでしょう。例えば、寝坊して会議に遅刻したとき、「1時間30分後に到着する」と言っていたのに、30分前の1時間後に到着した場合、遅刻したにもかかわらず、少しポジティブな印象を持たれるかもしれません。
私たちは、多くの情報量を持たず、目の前で与えられた情報だけで判断してしまうときに、アンカリング効果の影響を受けやすくなります。
しかし、ある分野で知識や経験が豊富な人でも、その分野における判断で、アンカリング効果の影響は受けることがあります。商品の購入など、意思決定の際には、アンカリング効果に注意を払うことが大切です。