敵討ち
その日も朝まで飲みまくった安兵衛は、長屋でグーグー寝てたのですが……そこへ、オジサンピンチの知らせが!オジサンは高田馬場で18人もの悪者に囲まれて、超危ない状態なのです!安兵衛、それを知ってすわッと飛び出します!

何と、10キロもの距離を走り切って、高田馬場へ駆けこんだ安兵衛。
「叔父上!恨みは晴らしますぞ!」

と、悪者18人をケチョンケチョンにやっつけてしまいます。安兵衛、カッコよすぎです!

この仇討ち跡地で、最高のスポットは酒屋です!

安兵衛は仇討ちが終わった後、「喉が渇いた」とか言って酒屋に駆け込み、五合の枡でガブガブと酒を飲んだんだそうな……。代金を払おうとすると、そこの主人が

「十八人も斬った大豪傑が来てくださっただけで満足です!お代はいりませんよ!」

と、何とも粋な計らい!そして、主人は安兵衛が使った枡を大事に保存。その枡は今でもこの店の家宝として残されている……。

これは講談の名シーンなのですが、何とこれは史実!その店がここです!


リカーショップ小倉屋!早稲田駅出口のすぐそば、歩いて十秒の場所にあります!

この店を前にしたときの、わたしの気持ちをお分りでしょうか……。感動のあまり涙出そうでした。今もあるなんて!江戸時代の店ですよ?生類憐みの令の時代の店ですよ?講談の世界が、ここにはまだ生きてるんですよ!

ちなみに、この店の隣は夏目漱石の生家跡地です。けっこう立派な石碑が建ってましたよ。もちろん、夏目漱石が住んでた時も小倉屋はここにあって、漱石は「この店で安兵衛が酒を飲んだんだ」と著作の中で言ってます。



夏目漱石【硝子戸の中】

それから坂を下おり切きった所に、間口の広い小倉屋という酒屋もあった。もっともこの方は倉造りではなかったけれども、堀部安兵衛が高田の馬場で敵を打つ時に、ここへ立ち寄って、枡酒を飲んで行ったという履歴のある家柄いえがらであった。私はその話を小供の時分から覚えていたが、ついぞそこにしまってあるという噂の安兵衛が口を着けた枡を見たことがなかった。