オリンピックが終わって1週間。
「カーリング・ロス」に陥っている人もいるのではないだろうか?
でも、嘆くことはない。3月17日からはカナダのノースベイで女子の世界選手権、3月31日からは男子の世界選手権がアメリカのラスベガスで行われ、日本でも中継の予定がある模様だ。
平昌オリンピックのカーリング中継についていえば、テレビの映像としては“poor”だった。カーリング中継は、天井からのカメラで定点観測することが基本だが、今回はシート横の移動カメラの映像を多用したため、ストーンの位置が見づらくて困ってしまった。
ただし、これは日本のテレビ局が作った映像ではないので、お間違えなく。カーリングの国際映像を作ったチームの責任です。
ただしオリンピックの映像でも、シートAだけは天井からの映像が多く、やはりディレクター次第だと思った。
アナウンサーが定着させたコンシード。
日本の中継のファインプレーは、中継アナウンサー陣が「コンシード」という言葉を定着させたことだ。
コンシード。これは、カーリングにおいて終盤で点差がついてしまった時に、負けを認めて相手に握手を求めることを指す。
これまでカーリングの中継では、「ギブアップ」と「コンシード」が混在していたが、今回の中継でコンシードに統一されたことを大いに評価したい。
コンシードconcedeを英和辞典でひいてみると、こういった意味が出てくる。
1 譲歩する。
2 《主に米国で用いられる》 (選挙などで)敗北を認める。
【語源】
ラテン語「完全に譲る」の意 (CON‐+cedere 「立ち去る、譲る」); 名詞 concession、形容詞 concessive
(Weblio 英和和英辞典より)
将棋や囲碁の「投了」に近い感覚。
カーリング的な意味合いを付加するならば、潔く負けを認め、相手を祝福する意味が込められている。ただ単に、ギブアップ、諦めるというのとは意味が違う。
私が感じるに、将棋や囲碁の「投了」の感覚に近い。
また、この言葉はアメリカの選挙ではよく使われる単語で、候補者が開票速報の成り行きを見て、自分の負けが決定的だと認めた場合、相手の候補者に祝福の電話を入れることを、「コンシード」というのだ。
政敵に電話を入れるという残酷なシステムだが、やはり、ここにも「相手を祝福する」という意味が込められている。また、アメリカでは「グッド・ルーザー」であらねばならないという、社会的な要請が根底に潜む。
私が思うに「ギブアップ」では、様々な背景を言い表せない。
故・小林宏氏の精神を受け継いだ進藤アナ。
では、なぜ今回のオリンピックにおいて、日本の放送では「コンシード」が定着したのだろうか?
ここからは私の推測だが、テレビ朝日の進藤潤耶アナが徹底したのではないかと思う。
なぜなら、2010年のバンクーバー・オリンピックの際に解説を務めた故・小林宏氏が、生前、私にこんなことを言っていたからだ(小林氏といえば、バンクーバーでは興奮のあまり、“This is curling!”と叫んだことが忘れられない。もちろん、次のショットの予測が的確だったことは言うまでもない)。
「制作スタッフからは、『ギブアップ』と言って欲しいと言われましたよ。その方が分かりやすいということでね。でも、カーリングの用語としては『コンシード』が正しい。コンシードは世界共通で、ギブアップなんて使いません。
進藤さんは、コンシードの精神をすぐに理解してくれました。ゴルフのマッチプレーで、負けを認めることを『コンシード』というそうで、ゴルフとカーリングは共通点がありますから、ピンと来たんでしょう」
好奇心を持って新しい言葉を使おう。
進藤アナは平昌五輪でカーリング女子の初戦、そして日本とイギリスの銅メダルマッチを担当するなど、この競技において、担当カードから見てもリーダー的な存在であることがうかがえる。
小林氏は4年前のソチ・オリンピックでは解説から退き、残念なことに2年前に亡くなったが、小林氏の精神は受け継がれたと思う。
この結果、コンシードは文字媒体にも広がっていて、オリンピック期間中、コンシードとギブアップを使う新聞が分かれた。ギブアップを使っている記者には、もう少し好奇心を持ってもらいたいと思う。
カーリングの精神を理解するために絶対必要な言葉だからだ。
さて、世界選手権の中継を楽しみに待つとしよう。中継局のアナウンサーが、コンシードを使うかどうかも、気になるところだ。
(ネット引用)
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『コンシード』(カーリング)
『負けました』(将棋)
凄いですよね。
敗けを認めて、相手に頭を下げる。