【関西の議論】
放置される「勝手踏切」、危険なのに閉鎖できず正式踏切にも昇格できない理由…あの「江ノ電」は全区間10kmに100カ所超も
 
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JR奈良線の「勝手踏切」を通過する快速電車。警報器がないため、電車がいつやってくるか分からない。住民らは左右の信号機が「赤」なのを確認し渡っていた=京都府宇治市(大竹直樹撮影)
 
 
 昨年2月、横断中の78歳の男性が京都方面から来た電車にはねられ死亡する事故が起きていたのだ。
 
 
 ただ、渡る前に見た看板には《渡らないで》とは書いていなかったはず。気になって見返すと、横断を“容認”しているようにも取れる看板は、地元の連合町内会と宇治市が設置したもの。《渡らないで》と呼びかけているのは、JR西が設置したものだった。
 
 
 JR西は「勝手踏切」の横断を認めていない。横断は線路内への立ち入りとなり、鉄道営業法の違反行為となるという。人一人がやっと通れるフェンスを設置したのもJR西だった。
 
 
 ではなぜ、人が通れる隙間を作ったのか。関係者は「事実上、横断を黙認している状態だ」と明かした。
 
 
江戸時代からある参道「あの踏切がなくなったら、お寺からお墓にお参りする檀家さんにかなり負担をかけることになる」
 
 
 江戸時代初期に創建された西方寺の住職、藤原了孝(りょうこう)さん(69)は、踏切存続のために署名活動も辞さない構えだ。「勝手踏切」のある道路は、江戸時代からある墓地へと続く参道でもあった。JR奈良線の前身、奈良鉄道の全通は明治29年だから、後から線路が敷設されたことになる。
 
 
 西方寺の門前には、京阪宇治線が参道を横切る形で通過しているが、こちらは警報器や遮断機のある正真正銘の踏切になっており、対応に差が生じている。
 
 
 宇治市によると、勝手踏切から寺側が市道、墓地側が私道で、線路と交差している部分はJR西の敷地だ。勝手踏切を通過する列車は1日約200本にも及ぶが、そこを1日約200人が横断しているという。
 
 
持ち上がる複線化計画
 
 「JRは『勝手踏切』というが、地元にとっては生活道路。なくなったらお年寄りが困ってしまう」と話すのは、地元の広芝連合町内会長を長年務めてきた菅野永三さん(68)だ。
 
 
 自宅のある住宅街から線路を挟んだ向かいにあるスーパーや病院に向かう高齢者にとって、勝手踏切は便利な“近道”。正規の踏切を迂回(うかい)すれば、数百メートルは遠回りしなければならず、高齢者にとっては負担が大きいという。
 
(ネット引用)