夫の実家は代々続く家業をしている。
義父は次男である為、分家に当たるが
三兄弟仲が良く祖父から譲り受けた土地に
それぞれ住んでいる。
初めて本家に挨拶へ行ったときの事。
こんなに大きな家があるのかと圧倒され
つつ、玄関を跨ぐとそこには不釣り合いな
子供用のキッチンの玩具が一番目立つと
言っても過言ではない場所に置いてあった。
本家には私と同世代の子が三人いるが
子供がいるのは長女だけで、その子供は
すでに中学生だと聞いていた。
随分可愛らしいものがあるのですねと
何の気なしに話すと、とても良いものだから
捨てずに置いてあるのよと。当主である
義父の兄の奥さんがにこやかに答えた。
とても朗らかで感じが良く、自分に姑がいたら
こんな人だったら良いなと思っていた。
その後、息子が産まれた時もわざわざ
遠くの我が家にまで足を運びお祝いを届けて
くれたり、農作物をくれたりと親切な対応に
すっかり気を許していた時だった。
用事で本家に寄ると、つたい歩きが
始まった息子が楽しそうに玩具のキッチンに
立ち遊び始めた。
すると夫が、息子にこれ欲しいの?と冗談ぽく
聞いた。まあこんなものあっても仕方ないし
当然くれるものだと思っておばさんを見て
その表情に凍り付いた。