北海道のシマフクロウが国後島に分散し繁殖したことが確認されました。

 

昨日(2019.6.3)国後島のクリリスキー自然保護区からリングの付いたシマフクロウの写真が送られてきて、出生地の確認依頼がありました。写真が不鮮明で現段階では個体識別まではできませんが、北海道で標識されたものに間違いがありません。詳細続報を待つとともに、速報を正式に出してくれと依頼したところ、すぐに保護区の公式webにアップされましたので共有します。

http://kurilskiy.ru/newspost/834 

ロシア語ページですが、翻訳サイトを使えば大意は把握できます。

 

これまでの我々と北大とのDNA共同研究で、北海道と国後島の個体群には大きな遺伝的差異がないことが明らかになっており、個体の交流が示唆されていましたが、北海道から国後へ海を越えた移動について初めてエビデンスが得られました。

 

シマフクロウは長距離を飛べないため本来は海を渡ることができません。それが生物としての分布域が狭く限られているという結果につながっています。ただ、国後島と知床半島の間の海峡には冬季間しばしば流氷が流入してきます。おそらく分散したシマフクロウは、採餌を目的に陸地を離れて流氷に乗り、採餌を繰り返しているうちに国後島に到達したと考えられます。

 

今回は北海道から国後への分散という結果でしたが、おそらく逆方向(国後島から北海道へ)の分散も起こっているでしょう。残念ながら国後島での標識調査は近年始まったばかりですが、このたびの発見により、国後島の職員もこれから標識調査に精を出すと思います。シマフクロウは長生きすれば寿命は25年以上ありますから、将来の結果が楽しみです。

 

北海道のシマフクロウの幼鳥への標識事業(環境省)は1986年から実施され、これまでに500羽以上に標識がされています。その多くは死亡していると考えられますが、今回の発見は地道な長い標識事業の成果の一つだと言えるでしょう。

 

生き残った個体が国後島まで渡り繁殖を続けていることが明らかになり、こちらから見える国後島が、これまでより身近に感じられます。

 

(by ハカセ)