「桐島聡」でTBS久々のスクープ。日経もお見事!日銀へのいぶし銀質問

 

「どこの誰かは知らないけれど」指名手配のポスター男出現

「え~あの交番のポスターの人、捕まったの?」と驚いた方もいるかもしれない。1月26日のTBS「Nスタ」だった。犯行自体は半世紀も前だから、指名手配犯桐島聡容疑者が何をした人か知らない人はほとんどだろう。ただポスターでは有名人だ。長髪、黒縁メガネ。過激派ではありがち。1974、75年に起きた連続企業爆破事件の犯人である。鎌倉の病院、末期がんの病床で「実は、自分は桐島聡だ」と名乗り、偽名で入院したと言い出した。当然、病院は気味が悪いから警視庁の公安部に通報した。で、TBSのスクープとなった。

 

TBS記者は「社長賞」か、追っかけ記事組はああ悲惨

新聞が「〇日、□□関係者への取材でわかった」という書き方をしているときは、他社に抜かれて、追っかけ記事を書く時の決まり文句である。できたらこういう記事は書きたくない。1週間ほどウナされ、寝汗びっしょりのパターンである。

このblogではスクープがあった場合、媒体名を上げるようにしている。記者に敬意を表したい気持ちがあるからだ。TBSは初めてのような気がする。「報道のTBS」はオウム真理教の坂本弁護士一家殺人事件辺りからおかしくなった。今回は上手く行けば「社長賞」、そこまでいかなければ「編集局長賞」だろう。記者はこれを1回取っておけば半永久的に名前が残る。

 

日銀政策決定会合はスクープの宝庫、日経記者にみた熟練の技

これとは対照的ないぶし銀の技を見たのは、1月23日、金融政策決定会合後の植田和男総裁の記者会見であった。ネットの生中継を見た方もいるだろう。記者たちはマイナス金利政策の方向転換がいつになるか知りたい。もう「3月」か「4月」、どちらかの同会合であることは動かしようがないように見える。もう打ちたくて仕方がない。

外資系の金融企業は一刻も早くを望んでいる。金利を米国が下げ、日銀が上げれば一気に為替が動く。安くなるにしても先物取引で「空(から)売り」しておいて、下がったところで買い戻せば利益が出る。相場は「上がっても下がっても、動きさえすれば、予想が当たりさえすれば、儲かる」ようにできている。

日本の金融機関は、一応「愛国者」であるから、春闘で賃金が上がることを確認したうえで「異次元の金融緩和」路線の脱却をした方がいいと思っているようだ。

 

「展望レポート」を肴に丁々発止のやりとり、スクープはならず

で日本経済新聞の記者が聞いた。「大きな経済政策を行なう場合、やはり『展望レポート』があった方がいいんでしょうか」

この質問に玄人は唸ったが、ちょっと説明が必要だ。「展望レポート」は日銀が年4回出す長期観測の論文集。金融政策の転換の理由を「展望レポート」に載せた方がいいに決まっているし、新政策の宣伝にもなる。ただ「展望レポート」は金融政策決定会合後に出されるが1回置き。つまり3月には出ない。4月は出る。

植田総裁は「その回に上がってくるデータで毎回議論するということです」と原則論で逃げた。

これを丁々発止というのだろう。すぐスクープとはならないが記者の実力が伺えた。

 

TBSの華やかなスクープ、日経のいぶし銀の技。記者の仕事は奥が深い。

 

【追記】桐島聡を名乗った男は1月29日朝、胃がんため死んだ。当人だとすると70歳。