米国利下げ、日本利上げ秒読み やさしく読み解く中央銀行「冬の陣」
物価鎮静化と景気維持の同時達成 パウエル議長に自信
いま、「ことしのクリスマス商戦があまり盛り上がりませんよう」にと願っている人がいるとしたら、FRB(米国連邦準備制度理事会)のパウエル議長ではなかろうか。このところ彼のやることなすことすべて上手くいっている。クリスマス需要が物価を押し上げでもしたら「神話」が台無しだ。
米国はCPI低下傾向、政策金利3回0・25%ずつ下げ
一時は9%になろうかという米国CPI(消費者物価指数)は天井を打った感じで、インフレが落ち着きつつある。2022年3月から歴史的金融引き締めを行なったFRB。約1年半で上げた政策金利は5%超。それでいて景気は堅調である。角(つの)を矯(た)めて牛を殺すことはなかった。直近3回のFOMC(連邦公開市場委員会)では金利を据え置いたが、12月13日会合後の記者会見でパウエル議長は、「利下げは視野に入り始めており、実社会で話題になっているように、FOMCでも議論した」と認めた。複数のアナリストによるとインフレ目標2%に向け、来年0・25%ずつ3回の利下げがなされそうだという。
植田総裁の「チャレンジング」発言で為替市場混乱
一方、日本の中央銀行「日銀」の植田和男総裁は、12月7日参院財政金融委員会に呼ばれ「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になると思っている」と発言。これを「すわ利上げ」と受け取った人も多かっただろう。正直言うと私もそう思った。為替相場も一時1㌦=141円台をマーク、150円近辺から急激に跳ね上がった。11日に米国ブルームバーグ通信が「マイナス金利解除、日銀は急ぐ必要なしの認識で一致」と報じ、146円台まで戻した。
「チャレンジジング」には「挑戦的」以外にも「困難な」と意味で使われると解説する英語通の経済アナリストも出た。
年末は資金需要拡大、急激な金利変動は市場の混乱招く?
こんどの日銀主催の金融政策決定会合は12月18・19日だが、「利上げはあるか」が最大の焦点だろう。私の考えだが、年末は決済のために資金需要が一気に増加する。そんな時に金利を動かせば債券市場が混乱することは必至で、日銀はそんな無茶なことはしない気がする。米国が利下げの意向を示し、向こうから日米金利差を縮めに来ているのに急ぐ必要はあるだろうか。
政治資金規正法で安倍派壊滅、アベノミクスの行く末
もし利上げがあるとしたら、「政治とカネ」政治資金規正法違反で壊滅的打撃を受けた自民党安倍派の影響力低下のせいかもしれない。「金融緩和政策」は「アベノミクス」の本丸。親分が銃弾に倒れ、子分が現ナマに倒れたので、日銀はフリーハンドで政策が打てるはずだからだ。
春闘見てから利上げか 日米金利差が縮小必至
常識的に考えて来年の春闘を見てからの利上げとなるだろう。このところの、不況なのに物価が上がる「スタグフレーション」状態を脱するには、賃金の上昇が必要不可欠だからだ。19日の植田総裁の記者会見に注目しよう。
年末、利上げだったらゴメンナサイ、である。
※追記=2023/12/19 日銀は様子見で今回金利を動かさなかった。