早期胃癌は、内視鏡切除でとりきれれば根治させることができる。

早期胃がんの内視鏡的切除術後には、3年間で4~10%程度に、異時性胃がんが出現するというデータが出ている。取り残した癌が再発するのではなく、新たな癌ができるということである。

ピロリ菌は、胃癌の大きな危険因子である。早期胃癌の患者さんも、ピロリ菌保菌者が多く、ピロリ菌を除菌すると、胃癌の発生率が低下する。

3年間で4~10%というのは随分高い数字である。5年、10年と蓄積していったらどうなるか。

ここで疑問が生じる。胃癌の危険因子を持ち、異時性胃がんが出現した患者さん達が、最初から検診を一切受けなかったと仮定する。すると、治療の適応となった早期胃癌は発見されないし、切除後に生じた異時性胃がんも発見されない。進行がんで初めて発見される。

内視鏡的切除術後に、3年間で4~10%程度に、異時性胃がんが出現していたのであれば、内視鏡切除も検査もしないで長期間過ごし、進行がんで発見されたら、同じ数くらいの異時性胃がんが見つかるはずである。

ということは、初めて進行がんが見つかって手術になる患者さんの少なからぬ割合が、複数の癌が見つかると思われる。

ところが、現実はそうではない。圧倒的多数の人が1個の胃癌で手術をする。

 

これはどういうことだろうか?

できた異時性胃がんが消えてしまったとか、大きな癌の近くに小さな癌ができて飲み込まれたとか、いろいろ仮説を立てる事が可能であろう。

しかし、私がもっとも疑わしく思うのが、内視鏡治療が、新たな早期胃癌を引き起こす可能性である。

内視鏡治療をするならば、術前の精密検査から、初年度は7回くらい内視鏡を受けることになるだろう。すると絶食になるから、生活習慣が乱れる。また、苦痛によるストレスや、癌を心配するストレスもあるだろう。

人間が健康でいるには、正しくご飯を食べる、眠る、適度な運動をする,精神の安定を保つ、日光に当たる、きれいな空気を吸う、などの、基本的なことが大事なのである。まさに生活習慣である。

癌の早期発見早期治療のために、そのような生活習慣(ご飯を食べる。ストレスをためない)を犠牲にするのは本末転倒であろう。