週刊ゲンダイオンラインより

 

新潟大学医学部教授の岡田正彦氏(65歳) 続き

要するに、早期発見・早期治療をしても結果が変わらないということを、様々なデータが示しているのです。

検診に大金を費やすより、予防に力を入れるほうが、国民の健康保持にとってはるかに有効だと私は思います。

がんも、8割方予防できると考えられます。遺伝によって起こるがんは全体の5%ほどだけで、残りの80%は原因が分かってきましたから。

その一つには、前に述べたエックス線検査があります。それ以外にも、よく知られたところでたばこや塩分の取りすぎ、野菜や果物不足も、がんの発症の大きな要因となっています。それらを解消すれば、がんの半分以上は防ぐことができるのです。

最近では、手軽に野菜の栄養素を摂取できると謳ったジュースやサプリが売られていますが、それでは野菜を食べたのとイコールにはなりません。成分を分解してしまうと、がんを抑制する抗酸化物質が作用しないため、意味がなくなってしまうんです。

生活習慣のちょっとした工夫で、病気は改善されます。薬や手術では、効果があっても微々たるもので、生活習慣を改善した方が、その1・5倍もの効果があります。50%も違うということですから、これに匹敵するような医療行為は他にありません。

人間の身体は、余計な手を加えずとも、自然に沿った生活をすることで、健康が保たれるようにできているのです。検診大国・日本で健康に生きていくために、過剰検査・過剰医療の恐ろしさをよく理解することが大事なんです。

癌を早期発見早期治療したとて、くじ引きなので、個人として外れくじを引いたら健康被害を受け、集団として評価すれば寿命は延びないというのが私の実感である。

殆どの場合は、癌は、生活習慣によって引き起こされるのであろう。

人間の身体は、ダメージを受けたら不快を感じるようにできている。ダメージの蓄積が蓄積して、癌などの病気としてあらわれるのではないか。

例えば、眠れなくなった、風邪を引きやすくなった・・そこで、眠れればいいと考えて睡眠薬の常用で済ませたら、眠れなくなる原因はそのままだから、身体に見えないダメージを与え続ける。どうして眠れなくなったのか考え、解決できるなら克服すれば、ダメージはなくなるのである。

そのような、小さな不調を解決していけば、癌その他の病気の予防になると思う。

野菜や果物が身体によいといわれると、必ず、過剰接収して健康に害をきたす人がでる。しかし、「野菜果物をたくさんとったほうがいい」という思い込みに捉えられずに、よくよく観察すれば、身体によいとされる食べ物を過剰摂取すると、身体に不調が出ているはずである。

日本人は薬好き・医療好き。別の言葉でいえば、薬や医療に頼りたがる。しかし、そのような姿勢で健康になれるかどうかは、世の中を見渡せば分かるはずである。寿命はのびているが、不健康で長生きする人ばかりである。人(医師)任せで健康を守ることはできない。つまり、病気を予防するためには、正しい生き方に近づくことである。楽な道はないのである。