年子の兄がいます。母は、産まれた赤ちゃんよりまず幼い兄を優先する事が大切だと思ったそうです。私は、離れた棟に寝かされていたようです。

 私が娘を出産し里帰りした時、私が寝かされていた部屋に娘を寝かして隣りの棟の台所で昼食を済まし部屋に戻ると娘が泣いていました。台所には全く聞こえませんでした。兄の世話をしながら家事をしている母に、赤ちゃんだった頃の私の泣き声は聞こえなかっただろうなと思いました。それで、私はサイレントベビーになったんだと推測したんだ。

 甘えベタで、無口で、引っ込み思案な幼児期。3歳の時、おたふく風邪で42℃を超える熱、髄膜炎を併発して右耳の聴覚を失った私。泣きもせず、ただ寝ていたのかな。泣いたけど、聞こえなかったのかな…難聴発覚は5歳の事。

 5歳の時妹が産まれた。妹の初節句の時に雛人形の前で写真撮影。兄が妹を抱っこして母の膝が空いていた。勇気を出して、母の膝に座って写真を撮った事を今でも覚えてる。サイレントベビーだった私が突き抜けた瞬間の記憶。

 私の中の母なるものを入れるバケツが完成した記念写真の中の私、幸せそう。