BLACK MEDIA | シリウスなムーヴメント

BLACK MEDIA

土曜日の夕方になるとイーストのまわりには過激なファッションに身を包んだ男の子たちでいっぱいになる。

毎週土曜6時からはイーストで一番人気のバンドの持ち枠であり、どのバンドも皆ここを目指して

イーストのオ-ディションを受けにやってくる。


『BLACK MEDIA(ブラックメディア)』は4人の男たちで構成されているヘヴィメタルバンドだ。

半年ほど前から急激に伸びを見せ、今ではイースト観客動員数NO1バンドに成長した。

圧倒的に高校生男子のファンが多く、メンバーを真似た髪形やファッションで競いあっている。

人気を二分するのが、ヴォーカルギターの恭介と、ギターのヒロで

ふたりとも長身だが クールが魅力の恭介と真逆なヒロは甘いマスクで女の子のハートをつかんで離さない。

スキンヘッドで強面なエルはベースを担当。

ブラックメディアのリーダーで何かと皆に頼りにされている。

24歳の3人の中に若干19歳のドラマー、RUIはブラックメディアに入ってまだ1年にも満たないが

3人から絶大な信頼を得ている。


今日も大盛況のまま、8時にはライブも終わり、興奮冷めやらぬ中メンバーは個々に機材を片付け

それぞれがテンション高いままここで解散となる。

といっても大抵恭介をのぞく3人は打ち上げという名目でこのまま行きつけの飲み屋へと消えていく。

恭介はそのままイーストに残り、ティルの仕事が終わるのを待つ。

スタッフルームの椅子に深く身体を沈め、煙草をくわえたままの姿は眠っているかのようにも見える。

同じ部屋でティルはたいして慌てる様子もなく、最後の業務に追われていた。

週二回ギターを教えにイーストに通っている恭介はティルとここで顔を合わすくらいで

恋人同士といえどもわざわざデートをすることはめったにない。


恭介がイーストでのライブの日だけはそのまま朝まで一緒に過ごすのがふたりのスタイルになっている。


「おまたせ。いこっか」

ティルが下から恭介の顔を覗き込むと

「やっと終わったか」

つぶっていた目をゆっくり開けて組んでいた足を解き立ち上がると、椅子にひっかけてあった

皮のジャケットに手を伸ばす。

そのままジャケットには手を通さず肩にかるくひっかけると、片手でティルlを引き寄せ

イーストを後にした。