冬のとある時間 | シリウスなムーヴメント

冬のとある時間

レンガ作りな喫茶店


夏場は暑そうな外観だが 今の冬の季節には暖炉のように暖かく見える


ライブのある日の午前中はたいがいここで一服




ドアを開けると「カランコロン」と音がする


牛の首輪につけられた鈴をデッカくしたような鈴がドアの上からぶら下がってる




(いっるかなぁ~?・・お いるじゃん)


窓際にいつも通り座っている奴 恢斗を見つけ向側に座るja


恢斗は足を組んだ格好で車の雑誌を膝に乗せてページをめくっている




ja:「お待ち~」


恢:「・・・・。」


聞こえてんのか 無視してんのか恢斗はいつも言葉好少な


でもそんなことには全くかまわないのがja




ウェイトレスが水とおしぼりを持ってくる


ウェイトレスといっても高校生のバイト


学校の制服にエプロンを身につけただけのスタイルだ



「いらっしゃいませ」


ja:「んー。。バナナシェイク」


恢がチラっとjaを見る  この冬空な中シェイクかよ って言いたそーな顔




シリウスのギターはtwinギターで構成されている


ライブともなるとそれなりに一応形だけはミーティングを と思うのだが


やはりそれは形だけのものであって ミーティングと言える話は5分で終わる




運ばれてきたバナナシェイクに少し体を震わせた


ja:「やーっぱ冷てーわ」


恢:「よかったなぁ神経あって  大事にしろよ」


ja:「何を?」


恢:「なーんも」




曇った窓ガラスを丸く手で拭いて 細かい水滴の向こうに見える景色


雪がチラついてる



jaがぼんやりと恢斗を眺めてる


その視線に気づいているのに あえて知らないふりをする恢斗


1~2分経った頃 恢斗はページをめくる手も止めず顔も下を向いたまま口を開く


恢:「なんだ?俺に見惚れてんのか?」


ja:「そーなんだよ・・」


やっと顔を上げる恢斗 でもその目は冷ややかな微笑みさえも浮かべてる




ja:「そーなんだよ  その角度なんだって」


恢:「あ?」


ja:「バイト先でさぁ 最近入った奴なんだけど初めて見たときお前かと思った。


その角度からがすっげ似てんだって  マジびびったって」


恢:「えーねぇ いつでもどこでも俺と一緒かぁ 幸せだねぇ」


ja:「だれが・・で、あんまり似てたもんだから聞いたんだ。


お前さぁ 双子の隠し子とかいねーの?って」


恢:「アホ・・」


ja:「ほんと マジだって  今度来ーへん?」


恢:「はいはい その内な  で今日のカラーはなんでっか?」


ja:「どーしよーかなぁ・・どーする?」


恢:「はぁ?なんも考えてねーわけ?」


ja:「今日お前と相談しようと思ってさぁ」


恢:「うぜぇ・・」




twinギターといっても主導権はjaがもつ


しかしこのja 気分でころころと変わる


だから、おおざっぱな構成はできててもギター同志の細かい事は本番ギリギリまで待つのが丁度いい




喫茶店にいる間、何も進歩を遂げなかった形だけのミーティング


それでも意気込みだけは気が合うようで


何時間後に繰り広げられる自分達のライブをそれぞれ頭に描きながら喫茶店を後にした




街路樹の枝には 先の割れた筆で線を引いたように少しずつ雪が積もり始めている