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辺りの光景はたちまち水の世界に変わりました。ファイルは火ではなく、水の中をふわふわと昇っていく泡に変わっていました。
そしてすぐ隣にはもう一つの泡が並んでただよっていました。
「あら? ここはどこなのかしら」
その声はクウラのものでした。
「夢を見ることなんて、もうないと思っていたのに」
「クウラさん、ぼくたち水の中を漂う泡になってますよ」
「ほんとう。あら、その声。あなた、もしかして、ファイルさんなのかしら?」
「そうです、ぼく、ファイルなんです。ぼくたち、水の世界で泡になったみたいですね」
「泡になっても、あなたはわたしをやさしく照らしてくれるのね」
確かに、ファイルの体は水の中でも輝いていて、クウラを美しく照らしていました。
ファイルの体は、クウラに引き寄せられていきます。
「クウラさん、逆ですよ、あなたがずっとぼくを照らしてきてくれたんです」
「わたしはほとんど光を失っていたのよ。あなたを照らせることなんてそんなこと……」
「あの家の中であなたはたくさんのものを照らしてくれてたんですよ。ほら、ぼくたち、今なら触れることだってできるんですよ」
ファイルはクウラに近づいていき、そして二人は手をつなぐことができました。
「ほんとうに、触れられたわ」
二つの輝きが一つに重なります。
突然、水が渦を巻いて、泡となった二人を上昇させていきます。